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日本における性暴力の現状と課題——SRHRの視点から考える

  • 2026.3.27
Getty Images

話を聞いたのは……
草野洋美(HIROMI KUSANO):
公益財団法人ジョイセフ、シニア・アドボカシー・オフィサー。SRHRに関する活動を行う市民社会グループが集まるプラットフォーム、SRHR for ALLアクション!の事務局担当。日本のSRHRとジェンダー平等の状況を改善に取り組んでいる。

日本における性暴力問題の現在地

SRHR(性と生殖に関する権利)では、性暴力も大きな課題となっている。「ジョイセフが日本でSRHRの活動を始めたのは、2011年東日本大震災のときでした。生理ナプキンや妊婦さんへの支援などとともに聞こえてきたのが、被災地での性暴力の被害でした。世界共通ですが、災害や紛争などが起きると、脆弱な立場にある女性が貧困や性被害にあうことは多い。しかも、日本では家父長制の影響から女性を力で支配するケースもあります。被害を受けた側が『隙があったのが悪い』『本当に嫌だったら断るだろう』と加害者や社会からも思われてしまう空気が社会にあると思います」(草野さん)。

有名人の性暴力報道や、教師や塾の講師といった信頼していた人たちの性暴力のニュースも後を絶たない。他国に比べたら遅く、対策もまだまだだが、2023年に「強制性交罪」「強制わいせつ罪」が「不同意性交罪」「不同意わいせつ等罪」と名称が変更された。

不同意性交等の認知件数は、2023年は2,711件で、前年に比べ1,056件(63.8%)増加、不同意わいせつ等の認知件数は、2023年は6,096件で、前年に比べ1,388件(29.5%)増加。出典:内閣府男女共同参画局2024 Hearst Owned

また、主要国では最年少とされた性交同意年齢も13歳から16歳へ引き上げられた。今年12月には学校や子どもに関わる職員の性犯罪歴を確認できる日本版DBS(こども性暴力防止法)も実施される。しかし法改正だけでは解消しない部分もあると草野さんは指摘する。「性暴力というとレイプなどの深刻な被害で、自分の受けた行為は性暴力に該当しないと考えてしまうこともありますが、嫌だと感じたらおかしいと言ってみる。その人に言えなくても周りに相談してみる、そんな積み重ねが、少しずつ性暴力を許さない空気に変えていきます。そのためにバウンダリー(自分と他者の間にある心理的・身体的な境界線のこと)を尊重する包括的性教育が重要だと感じています」

日本にいると麻痺してしまう性暴力に寛容な社会──小児精神科医の視点

話を聞いたのは……
内田 舞(MAI UCHIDA):
小児精神科医、ハーバード大学医学部准教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長。日本の医学部在学中に、米国医師国家試験に合格。日本の医学部卒業者として史上最年少の米国臨床医となった。『ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る 』(文春新書)など著書多数。

Hearst Owned

「長くアメリカに住んでいますが、帰国してSNSが日本仕様になるたびに驚きます。セクシュアルな写真や動画、漫画の広告がたくさん入ってくるのです。アメリカではSNS上の規制があり、日本ほどセクシュアルな画像や動画はあまり見かけません」というのはハーバード大学医学部准教授で小児精神科医の内田舞さんだ。内田さんは北海道の大学で研修医をしていたが、どんなに学問をがんばっても女性に求められるのは、ドラえもんのしずかちゃんであり、優秀であっても男性を支える存在でなくてはならないという部分に違和感を覚え、アメリカで医師になることを選択したという。

「しずかちゃんは優秀なのに、のび太君を手伝うだけで、お風呂を覗かれて恥じらう部分を求められる。能力を発揮したくてもしにくい社会構造がある。こういうことは無意識に広がり、性暴力の温床にもなっていると感じます。もちろん性暴力はセンシティブな問題で、それぞれ被害者の恐怖の感情なども異なります。声を挙げることができず、PTSDになる人も少なくありません。私は精神科医として、性暴力のPTSDに関する発信もしていますが、SNSなどでは不理解なコメントも。

PTSDは嘘ではないか、心の病気だったら日常生活の中でも笑うことなんてできないといった間違った認識も多い。PTSDは治療に長期間かかり、仕事をしながら治療を行う場合も多々あります。PTSDやうつ病の人が笑うことさえできないというのも精神疾患に対する偏見。性暴力の問題やPTSDなどの心の疾患に対しても、きちんとした知識や対処法を学ぶ機会がなく、偏見から誹謗中傷が広がってしまう。この悪循環が声を挙げる力を失わせてしまうのかもしれません」

From Harper's BAZAAR April 2026 Issue

 

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