1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 中塚美佑がたどり着いた、自然体の美しさ。忙しい日々に「自分を整える」思考法

中塚美佑がたどり着いた、自然体の美しさ。忙しい日々に「自分を整える」思考法

  • 2026.3.12
Courtesy of MIU NAKATSUKA

連載「わたしの美学」ではこれまで、ヘラルボニーのビジュアルディレクターを務める中塚美佑さんに、ブランドや家族、ファッションについて話を伺ってきた。第4回となる今回は、彼女の内面と外見に秘められた「自然体の美しさ」のルーツにせまる。

Risako Sueyoshi

中塚美佑
1997年、神奈川県横浜市生まれ。大学で福祉を学んだ後、アパレルブランドでの販売・SNS運用を経て、2020年ヘラルボニーに入社。現在は同ブランドでビジュアルディレクターを務める。

美の価値観の変化

──中塚さんは、“自分らしく美しくあること”をどのように育ててきましたか?

私にとって美しさは、「自分でつくりたい」もの。自分を理解したうえで、いちばん自然で美しくいられるファッションやメイクを選ぶ。その自己プロデュースができていることが、美しさだと思っています。内面もそういった選択の積み重ねで、そこがあれば成長していけるのかなと。

そしてもうひとつ、美しさに関わっていると思うのが、過去に言われた言葉を反芻して、今の自分に生かす力。「あのときの言葉はどういうことだったのだろう」と問い、向き合いながら、今の表現につなげていく。その思考の深さを、女性は特に本能的に持っている気がしています。

──過去に言われた言葉や経験が、今につながっていると感じることは?

子どものころから「落ち着いている」と言われてきて、それがそのまま服にも出ていると思います。自分のキャラクターと相反するものを身につけると、いまでも少しそわそわしてしまいます。

幼少期の中塚さん。幼いころから「自分がしっかりしなきゃ」という自立心が芽生えていたという。 Courtesy of MIU NAKATSUKA

その一方で、コンプレックスもあって。昔「手が個性的だね」と言われたとき、当時は自分のゴツゴツとした手がすごく嫌で、手の整形を調べた時期もありました。でも時間をかけて受け入れて、今は逆に自分の手が好きです。

年齢を重ねるほど、周りの声を聞くようになりました。でも、ただ鵜呑みにするのではなく、聞いたうえで自分の表現を突き詰める。人って簡単には変われないからこそ、周囲の意見とどう向き合うかが大事なんだと感じています。

──いろんな美しさがある中で、特にファッションやビューティ業界は画一的な美にとらわれてきました。「こうあるべき」という美の価値観は、どう変わってきたと感じますか?

BMSG主催のオーディション番組『No No Girls』から誕生した「HANA」が好きで、彼女たちが世間に認められていくこと自体が、「いろんな美しさを受容する」という定義そのものだと思っています。これまでも体現してきた人はいたと思うけれど、あそこまでの波及力を持って出てきた存在は少なかった。そのことにすごく感動しました。

──人を惹きつけるものがありますよね。

若いころの私は、“個性”は “恋人にウケない”という思考になりがちでした。細くて、美人で、というタイプでもなかったので。その過程に夢中になる時期があってもいいと思いますが、「やっぱりそこじゃない」と気づくのが早ければ早いほど、幸せな時間は長いのかなと思います。

たとえば、私は肌を出すことが嫌いで、二の腕は出さないものだと思い込んでいました。でも「暑いからノースリーブを着る」という、それだけの思考になれたとき、すごく解放されたんです。いい意味で“どうでもよくなる”。ここ数年で、その感覚が少しずつ広がってきました。生活スタイルとも連動しながら、いまの自分が作られている気がします。

生理は「自分と向き合える時間」

──忙しい日々の中で、「自分を整える」ためにやっていることはありますか。

まだ半年も経っていないですが、最近ジャーナリングを始めました。書くという行為が減っているなかで、書くことで精神状態が安定するのを身をもって実感しています。きれいに整理するわけではなく、殴り書きで、ありのままの感情を書く。あと、その日気になった言葉をちょっと調べて書き出すことも意識的にやるようにしています。

ジャーナリングで使用しているノート。ありのままの感情を書き出すことが、日々のメンタルヘルスの安定に役立っている。 Courtesy of MIU NAKATSUKA

ただ、昔から月経の症状がひどくて。ルーティン化したい習慣は止まってしまいがち。それから再開するのがすごく大変だったりします。なので、毎日気分でやるかやらないかみたいな形になっていますが、書くことは今の私を支えるひとつの軸になっています。

──女性ホルモンに悩まされている期間はどのように乗り越えていますか?

最近は、あえて「自分と向き合う時間」と捉えるようになりました。生理中って、どうしても殻に閉じこもってしまう。だったらその時間に、自分はいま何ができて、何ができないのかを見つめる。正直になる。

そういう時間にあえて充てて、自分と向き合える時間だとポジティブに捉えて過ごせたらいいなと思っています。

──生理を取り巻く環境も変わってきたと感じますか?

昔は我慢して隠すしかなかったけれど、今の会社はF休(生理、PMS、更年期障害、妊活など、主に女性特有の体調不良時に取得できる特別休暇)という制度もあり、休みをとることもできます。

吸水ショーツのブランドなどがSNSを通して、生理についてオープンな対話を生み出してくれたおかげで、同じ悩みを持つ人がこんなにいると知ったとき、私自身とても解放された気持ちになりました。

私自身、この課題と向き合いたいという感情があるので、自分の経験をシェアすることには、意味があると思っています。まだ社会的な理解は十分じゃないけれど、少しずつ広がっていってほしいですね。

自然由来の香りをまとって

──オンやオフに使い分けている香りなどはありますか?

私は感覚過敏なので、柔軟剤の香りも強く感じてしまいます。でも、前職で香水をたくさん扱っていたおかげで、自分の好き嫌いをきちんと判断できるようになりました。たとえば、オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー(OFFICINE UNIVERSELLE BULY)の「リケンデコス」という香水は、森林の香りがして、出会ったときに「一生使うだろうな」と思いました。バラも、人工的な香りと自然由来の香りでは全然違う。

オンとオフの切り替えなど、フレグランスに強いこだわりをもつ中塚さん。部屋にはお気に入りの香りが並ぶ。 Courtesy of MIU NAKATSUKA

また、バウム(BAUM)のプロダクトも愛用しています。森林の課題に向き合っているブランドの姿勢も含めて、香りや質感がとても素晴らしいと思っていて、ハンドクリームやオイルローションは何年も使っています。ウッドのフレームがついたパッケージも可愛くて気に入っています。

香りや質感がこだわり抜かれたバウムのプロダクトがお気に入り。 Courtesy of MIU NAKATSUKA
バウムのハンドクリームにリーカ(rihka)のネイルポリッシュ。ハンドケアの仕上げはロロ(Loro)のオリジナルパフュームオイル「03-Smoky」でフィニッシュ。 Courtesy of MIU NAKATSUKA

──香りはどんなときにまといますか?

オンにもオフにも。朝のリセットとしてつけることもありますし、服を選ぶように、なんとなくの気分で毎朝選ぶ。オフのときはお香を焚くことが多く、アポテーケ フレグランス(APFR)のインセンスを愛用しています。

──最後に、「美しく生きる」とは?

やっぱり、自分の感情と向き合うことだと思っています。まだまだできていない部分も多いけれど、そこを深めていくことが「美しく生きる」ということなんじゃないかなと。それは自信を持って言えることです。

たとえば、子どものころに親から「今日は何をした?」と聞かれた経験は多くても、「どう感じたか」を話す時間はあまりなかった気がするんです。自分の感情と向き合うことに慣れていない人は多いと思う。だからこそ、些細なことでも自分の感情を受け止める。その作業をどれだけできるかが、いまは大事だと思っています。そんな積み重ねで、心を許した友人などと本質的な話を重ねられる時間は、「こんなに自分は言葉にできるんだ」という自信にもつながります。

元記事で読む
の記事をもっとみる