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"自分の体は自分で守る"が当たり前になるために——日本のSRHR、現在地と課題

  • 2026.3.27
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話を聞いたのは……
福田和子(KAZUKO FUKUDA):#なんでないの プロジェクト代表、SRHRアクティビスト。東京大学特任研究員。#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト共同代表、政治分野のジェンダー平等を目指すFIFTYS PROJECT副代表、『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』(明石書店:共同翻訳者として参加)

緊急避妊薬の薬局での販売がようやくスタート

2026年2月2日、緊急避妊薬の薬局販売がはじまった。販売名は「緊急避妊薬 ノルレボ」。価格は1錠¥7,480となった。「世界標準に比べて高価格であること、面前服用(薬剤師の前で服用する)が必須となっているなどの課題はありますが、やっとここまで来た!という感じです」というのは、2018年から「#緊急避妊薬を薬局で」のスローガンを掲げ、産婦人科医の遠見才希子さんと性教育を行うNPO法人ピルコンの染矢明日香さんと活動を続けてきたSRHRアクティビストの福田和子さんだ。福田さんは、2016年からスウェーデンへ留学し、薬局で普通に緊急避妊薬が販売されているのを見て驚愕した。

「当時の日本ではまず入手方法が少なく、病院でもらうには処方箋が必須で価格は2万円を超えることもありました。スウェーデンでは¥1,500程度か若者であれば安価もしくは無料でもらえることも。この差は何なのだろうと……。そこが私の活動の原点です」。しかし福田さんらの訴えはなかなか聞き入れられず、絶望しそうになることも多かったという。

「政府が国民に意見を求めるパブリックコメントで4.6万件超の声が集まり、98%が緊急避妊薬の薬局購入を求めていました。にもかかわらず、実施店舗数が少ない試験運用という形になったことは驚きました。今回、解禁を迎えましたが、性教育や避妊、中絶など、他国に比べてなぜ?と思うことが日本には山積みです。女性をはじめマイノリティの声が届きにくい社会構造が当たり前になっていることを変えたい」

Hearst Owned

日本のSRHR、他にもある世界から取り残されている4つの課題

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1. なかなか進まない経口中絶薬の問題

2023年4月に、世界から30年遅れ、日本初の経口中絶薬(メフィーゴパック)が承認された。これまで日本の中絶法は、子宮内に金属の器具を挿入して掻き出す「掻爬法」とプラスティック製の筒で吸い取る「吸引法」だった。WHOは、2012年「掻爬法」について、「時代遅れの外科的中絶方法であり、真空吸引法または薬剤による中絶方法に切り替えるべき」と注意喚起を行っている。現状、取り扱う医療機関が少なく、高価格な点など課題が残る。

2. 自分だけでは決められない中絶同意の問題

「My Body, My Choice」が日本でははっきり言えない法律がある。母体保護法により人工妊娠中絶には原則として本人と配偶者双方の同意と署名が必要とされている。2021年に厚生労働省はこの同意に関して、DVや婚姻状態が破綻しているなどの理由があれば、不要とすることを認めた。しかし、現状もこの条文は残ったままだ。世界190カ国中、わずか11カ国。国連女性差別撤廃委員会も中絶の安全な合法化を日本政府に求めている。

3. 肝心なことが伝えられない性教育の問題

世界で使用されている性教育のガイドラインがある。UNESCOらが中心にまとめた「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」は、人権とジェンダーに基づく「包括的性教育」を示している。日本では、「受精にいたる過程」や「妊娠の経過」を「取り扱わないものとする」という記述があり、これを「はどめ規定」と呼ぶ。この部分がネックとなり日本の性教育が一向に進まない。来年10年ぶりに行われる、学習指導要領の改訂に注目が集まる。

4. 国が制作した「生命(いのち)の安全教育」

文部科学省が2021年に公開し、2023年から全国の未就学児から高校までを対象に導入された教材。主に性犯罪、性暴力の防止を目的として、成長に合わせて、自分の体を大切にすることの意味や、不快だと思ったことを周りの信頼できる大人たちに相談すること、出会い系SNSやデートDVなどにも言及している。しかし、包括的性教育がないまま、性犯罪、性暴力予防だけ伝えるという違和感も指摘されているのが現状だ。


From Harper's BAZAAR April 2026 Issue

 

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