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1つを見つめていると他の点の色が変化する新しい錯覚を発見

  • 2026.3.26
1つを見つめていると他の点の色が変化する新しい錯覚を発見
1つを見つめていると他の点の色が変化する新しい錯覚を発見 / credit: Hinnerk Schulz-Hildebrandt

アメリカのハーバード大学医学部(HMS)のヒンネルク・シュルツ=ヒルデブラント氏は、じっと見つめている1点以外の周りの点が青っぽく見えてくる不思議な錯視が提示されました。

研究者によれば、この錯視は目の場所ごとの性質の違いや脳の色を補正して認識する能力、紫が脳内で合成された存在しない色などの複数の要因が噛み合わさった結果だと考えられています。

あなたの目にはこの点は何色に見えるでしょうか?

研究内容の詳細は2026年2月26日に『Perception』で公開されました。

目次

  • 見つめている周りの点の色がどんどん変わっていく
  • 錯覚で色が変わるメカニズム

見つめている周りの点の色がどんどん変わっていく

1つを見つめていると他の点の色が変化する新しい錯覚を発見
1つを見つめていると他の点の色が変化する新しい錯覚を発見 / ヒルデブラント氏はプレプリントにてこれは「新しい錯覚(novel optical illusion)」と述べています。/credit: Hinnerk Schulz-Hildebrandt

新たな錯覚は、青い背景と9つの紫色の点によって構成されています。

色覚が正常ならば、一点だけを見つめていると、その一点は紫に見えるのに、周りの紫色の点が青い背景に溶けるようにして青っぽく見えてくることに気付くでしょう。

しかも視線を別の点に移すと、「紫に見える役」もそちらへ移動します。

また点の数をより多くしたものでは距離による変化も出ました。

著者の観察では、近い10センチほどでは紫に見える点はごくわずかですが、30センチではそれが増え、60センチ以上ではほとんど全部の点が紫に戻って見えるとしています。

青背景の上に書かれた紫色の文字でも、著者は読んでいる単語だけが紫に立って、周辺の単語は青っぽく沈んで見えると記しています。

では、なぜ見つめた一点だけがより紫に見えるのでしょうか。

研究者によれば、3つの状況証拠が重要になるといいます。

それぞれの証拠はたいした意味のないように見えますが、それら3つが合わさると、まるで名探偵の推理のように、理由が見えてくるはずです。

1つ目の証拠は紫がもつ特殊性にあります。

実は、紫は単一の波長の光としては存在せず、赤っぽい信号と青っぽい信号を脳が組み合わせて、はじめて立ち上がる“脳内ブレンド色”です。

そのため厳密な意味で存在しないのは「紫という単一波長の光」であって、紫に見える物体そのものではありません。

物体が紫に見えるとき、そこにあるのは単一の紫の光ではなく、反射や発光の組み合わせを脳が紫としてまとめた結果です。

そのため入力のバランスが少し崩れるだけで、見え方も揺れやすくなっています。

著者も紫を「壊れやすく不安定な知覚」と位置付けています。

2つ目の証拠は、視界の真ん中は青が苦手という事実です。

青い光に強く反応するS錐体は網膜全体でも8〜12%ほどしかなく、中心窩の絶対中心ではほとんど見られないことが知られています。

またその部分の手前には青い光をよく吸収する黄色の色素が存在しています。

つまり私たちの目は、視野のど真ん中に「青だけ見えにくくしたサングラス」がかかっているようなものです。

3つ目の証拠は、脳が色を当てる仕組みです。

脳は色を単独で読むのではなく、背景との関係で読みます。

目の前にあるリンゴが赤く見えるのも、壁が白く見えるのも、実は目に入った光を脳が一度整理し、解釈し直した結果です。

また青い背景に紫の点というように、似た系統の色が配置された場合、脳は周囲との関係の中で点の青さを少し弱めるように働きます。

すると見ている点は普通よりもより紫っぽく見える修正を受けるのです。

もし名探偵なら、この段階で「全ての証拠が1つの結果を導いた!」と叫ぶかもしれません。

しかしそんな人は少数派でしょう。

なので次ページでは、3つの証拠の組み合わせがどのように進むかを研究者の見解に基づいて見ていきたいと思います。

錯覚で色が変わるメカニズム

同じ現象は数を増やしたり文章でも起きました
同じ現象は数を増やしたり文章でも起きました / credit: Hinnerk Schulz-Hildebrandt

なぜ見つめていない紫の点が青に変わるのか?

まずそれぞれの証拠において特に重要な部分をピックアップします。

証拠①「紫は、脳の中で赤成分と青成分が合成されている色」
証拠②「見ているど真ん中だけ、青の情報がちょっと弱くなる」
証拠③「見ている点は普通よりも少し紫っぽく見える」

そしてまずは真ん中の紫の点を見つめるとします。

このとき見つめている視線の中心では、周囲に比べて証拠②により青が見えにくくなり、証拠③により紫っぽさが増すと考えられます。

すると周囲の視界では、中心に比べて青が相対的に残りやすい状態になります。

つまり、中心部では青が弱まり、周辺部では青が相対的に弱まりにくいわけです。

そしてこの状態にある周囲の視界に対して、証拠①により「紫は赤成分と青成分が組み合わさって成り立つ」という条件が加わります。

すると周辺の紫の点では、青が相対的に目立つ状態に変化します。

これにより、脳の紫の認識に変化が起こり、紫だった点が青っぽく見え始め、背景に溶けるように感じる可能性があります。

簡単に言えば「中心部で青が見にくくなる➔周辺部では青が相対的に残りやすい➔見つめていない紫の点の青っぽさが目立つ➔見つめていない紫の点が青く見えるようになり、背景に溶け込んで感じる」となります。

そして既存の証拠が絡み合うという意味では、この錯視は全く新しい目や脳のメカニズムによるものではなく、既知のプロセスを利用したものだと言えるでしょう。

元論文

When purple perceived only at fixation: A fixation- and distance-dependent color illusion
https://doi.org/10.1177/03010066261423048

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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