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家で寝てばかりの夫は「バセドウ病」だった――。性格や言動も変わってしまった夫を7年間支えた家族の記録【書評】

  • 2026.3.19

【漫画】本編を読む

『夫がバセドウ病にかかったら』(桜木きぬ)は、バセドウ病に罹患した夫と、その日常を支える妻の7年間の記録である。病気と家族の関係を率直に描いたコミックエッセイだ。

家で寝てばかりいる夫を「怠けている」と家族が誤解するところから物語は始まる。実は夫は甲状腺ホルモンの過剰分泌によって全身の代謝が異常に高まる「バセドウ病」に罹患しており、やがて階段を上れなくなるほど悪化してしまう。病院に行った時にはすでに動悸や疲労、体重減少、精神的な変化など、さまざまな症状が現れる深刻な状態に。そしてバセドウ病との長い付き合いが始まるのであった。

本作は単なる闘病の記録にとどまらず、病と向き合う日常や、家族の関係がどのように変容していくかを等身大で描いている点が見どころだ。バセドウ病は身体的な症状だけでなく、性格や行動が変化することもあり、その影響は当然、家族にも及ぶ。例えば、病気によって夫がせっかちになってしまうシーンでは家族の戸惑いや不安がリアルに描かれる。遊び盛りの子どもにとっても、遊び相手であるはずの父親が寝てばかりという状況はとてもストレスだ。子どもの不満が爆発した時にどのように乗り越えたのかは、同じ境遇の人には大いに参考になるだろう。甲状腺の病気を専門とする伊藤病院内科部長・渡邊奈津子氏の監修というのもエビデンスとして心強い。

物語が進み、治療が長期にわたるにつれて著者はバセドウ病に限らず「家族の健康」や「闘病」について思いを馳せる。健康であること、普通の日常を送れる幸せ、いざ家族や自分が病気になった時の向き合い方、心の持ちようなどを考えるのだ。夫の病気を知った時、自分の愛情の脆さを感じたという著者の独白は、まるで自分の心を見透かされたようで、感情を揺さぶられるだろう。病める時も、健やかなる時も、家族でいることは難しい。だがそれでも家族が素晴らしいことを教えてくれる作品だ。

文=馬風亭ゑりん

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