1. トップ
  2. ファッション
  3. 戦争にNOを、パレスチナに解放を──アカデミー賞授賞式で、反戦メッセージを掲げた人々

戦争にNOを、パレスチナに解放を──アカデミー賞授賞式で、反戦メッセージを掲げた人々

  • 2026.3.16
国際長編映画賞のプレゼンターを務めたプリヤンカー・チョープラー(左)とハビエル・バルデム(右)。
98th Annual Oscars - Show国際長編映画賞のプレゼンターを務めたプリヤンカー・チョープラー(左)とハビエル・バルデム(右)。

第98回アカデミー賞の授賞式が幕を閉じた。国際長編映画賞のプレゼンターであるスペイン出身の俳優ハビエル・バルデムは、スペイン語で「戦争反対」と書かれたパッチと、パレスチナへの連帯を示すピンバッジをスーツに着けて登場。スピーチのなかで「戦争にNOを。そしてパレスチナに解放を」と明言し、会場からは大きな拍手も起こった。

「戦争反対」と書かれたパッチは、2003年のアメリカによるイラク侵攻の際に、スペイン版アカデミー賞であるゴヤ賞の授賞式で身につけていたものだという。そして今夜、バルデムは再びそのワッペンを着け、今度はアカデミー賞の場で、イランへの軍事攻撃に抗議した。レッドカーペットでは、「23年後の今、トランプとネタニヤフがまたも嘘によって作り出した違法な戦争とともに、私たちはここに立っています」と語った。

これはアカデミー賞で発せられた、数多くの鋭い政治的メッセージのうちのひとつだ。司会のコナン・オブライエンは、オープニングモノローグのなかで首都ワシントンに立ちこめる不穏な空気に少しだけ触れ、ジェフリー・エプスタインをめぐるジョークも飛ばした。「2012年以来、今年は主演男優賞と主演女優賞の候補にイギリス人俳優が一人もいません。イギリス側の広報はこう言っています。『まあいいさ。少なくとも、うちは小児性愛者を逮捕するからね』」

司会者のコナン・オブライエン
98th Annual Oscars - Show司会者のコナン・オブライエン

モノローグの締めくくりには、私たちが生きている「非常に混乱し、恐ろしい時代」について、オブライエンはより真剣なコメントを述べた。こうした時代だからこそ、世界中の数十の国と言語から生まれた芸術が集まるアカデミー賞は「とりわけ強い意味を持つ」という。

「今夜私たちは、単に映画だけでなく、世界的な芸術性、忍耐、レジリエンス、そして今日では最も希少な力である楽観主義に敬意を表します」とオブライエンは述べた。それは率直ではあったが、どこか慎重さをも感じさせる言い方だった。

その後、ドキュメンタリー長編賞と短編賞の両方のプレゼンターを務めたジミー・キンメルも、メラニア・トランプのドキュメンタリーをネタに冗談を言った。「幸いなことに、私たちには真実を語ろうと尽くしている国際的な映画制作者のコミュニティがあります。彼らは大きな危険を冒してまで、私たちに教え、不正を告発し、行動を起こすよう働きかけてくれています。一方で、ホワイトハウスを歩き回りながら靴を試着するようなドキュメンタリーが存在するのも事実です」

ドキュメンタリー長編賞と短編賞のプレゼンターを務めたジミー・キンメル。
98th Annual Oscars - Showドキュメンタリー長編賞と短編賞のプレゼンターを務めたジミー・キンメル。

ドキュメンタリー長編賞を受賞した『名もなき反逆者 ロシア 愛国教育の現場で』のデイビット・ボレンスタイン監督は、大きな拍手で迎えられながら次のように語った。

「『名もなき反逆者 ロシア 愛国教育の現場で』は、国がどのようにして失われていくのかを描いた作品です。国は、無数の小さな“加担”の積み重ねによって失われていきます。政府が大都市の路上で人々を殺しているのに私たちが黙っているとき、オリガルヒ(新興財閥)がメディアを支配していくのに何も言わないとき。そのとき、私たちは自らの道徳的選択を問われているのです。しかし、たとえ“取るに足らない人間(ノーバディ)”であっても、思っている以上に大きな力を持っています。私たちの未来のために、そしてすべての子どもたちのために、今すぐすべての戦争を止めてください」

さらに、国際長編映画賞を受賞した『センチメンタル・バリュー』の監督ヨアキム・トリアーはこう語る。「すべての大人は、すべての子どもたちに対して責任を負っています。このことを真剣に考えない政治家には、投票しないようにしましょう」

国際長編映画賞を受賞した『センチメンタル・バリュー』の監督ヨアキム・トリアー。
98th Annual Oscars - Press Room国際長編映画賞を受賞した『センチメンタル・バリュー』の監督ヨアキム・トリアー。

授賞式を満たすこのような政治的な雰囲気は、ノミネート作品の内容を反映していた。ポール・トーマス・アンダーソンの『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、アンティファ(反ファシスト行動。ネオナチ、白人至上主義、差別主義に反対する左派活動家たちの緩やかな連合体)の影響を受けた熱狂的な夢のような作品で、左派の活動家たちが移民や反体制派を弾圧する権威主義的政府と戦う壮大な物語だ。さらに、ライアン・クーグラー監督の『罪人たち』は、ジム・クロウ時代の南部を舞台にしたホラー作品である。

受賞は逃したものの、国際長編映画賞にノミネートされていた『ヒンド・ラジャブの声』のキャストは、恒久的な停戦を求めるピンバッジを着けて登場した。同映画は、ガザで若い少女やその家族が殺害される様子を描いた痛切な作品だ。

映画に出演したパレスチナ人俳優のサジャ・キラニによると、ピンバッジは「Artists4Ceasefire」によるもので、暴力や追放に反対し、ガザをはじめレバノン、イラン、ベネズエラなど世界中で恒久的な停戦を訴えるシンボルとして用いられているという。キャストは、作品の中心人物のひとりであるパレスチナ人俳優モタズ・マルヒースが、トランプによる渡航禁止措置により式典に出席できなかったことも指摘した。

『ヒンド・ラジャブの声』に出演したパレスチナ人俳優のサジャ・キラニ。「Artists4Ceasefire」のピンバッジを着けている。
98th Oscars - Arrivals『ヒンド・ラジャブの声』に出演したパレスチナ人俳優のサジャ・キラニ。「Artists4Ceasefire」のピンバッジを着けている。

『ブリジャートン家』やNetflixシリーズ『ONE PIECE』シーズン2で話題のチャリスラ・チャンドランも、「Artists4Ceasefire」によるピンバッジを着けてレッドカーペットに登場した。

「Artists4Ceasefire」のピンバッジを着けてレッドカーペットに登場したチャリスラ・チャンドラン。
98th Academy Awards - Roaming Arrivals「Artists4Ceasefire」のピンバッジを着けてレッドカーペットに登場したチャリスラ・チャンドラン。

これまでもアカデミー賞の長い歴史のなかで、俳優たちは政治に関わってきた。1973年のマーロン・ブランドの主演男優賞辞退から、前回アメリカが中東に侵攻を開始した直後の授賞式でのマイケル・ムーアまで、さまざまな例がある。ドキュメンタリー監督のムーアは、舞台上からブッシュ政権を非難したが、会場の反応は賛否両論だった。

多くのスターたちは、仕事の損失や人々からの失笑を覚悟で声を上げている。特に、トランプ政権の血に染まった移民政策に抗議して着用される反ICEピンバッジは、このアワードシーズンのレッドカーペットで繰り返し見られる象徴的アイテムとなっている。

Text: Aidan McLaughlin Adaptation: Hanae Iwasaki

From Vanity Fair

第98回アカデミー賞(2026年)の完全ガイド

元記事で読む
の記事をもっとみる