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アルカリ加水分解で遺体を溶かす「アクアメーション」がスコットランドで合法化

  • 2026.3.5
アルカリ加水分解で遺体を溶かす葬送がスコットランドで合法化 / Credit:Canva

葬送には火葬や土葬などいくつかの方法がありますが、この度スコットランドで日本ではなじみのない葬送が合法化されました。

それは「アクアメーション(aquamation)」と呼ばれる方法で、水とアルカリ溶液を用いて遺体を化学的に分解する技術です。

従来の火葬よりも環境負荷が低い可能性があるとして近年注目されており、今回スコットランドで、英国では初めて正式な葬送方法として認められました。

目次

  • スコットランドで合法化された「水火葬」
  • なぜ「火葬の代替」として注目されているのか

スコットランドで合法化された「水火葬」

今回ニュースとなったのは、英国の構成国であるスコットランドが、アクアメーションを合法な葬送方法として認めたことです。

スコットランドではこれまで、葬送の制度は主に土葬と火葬を中心に組み立てられてきました。

そこに今回、火を使わない新しい方法として、アクアメーションが制度上の選択肢として加わったのが大きな変化です。

では、アクアメーションとはどのような技術なのでしょうか。

アクアメーションは「水火葬」や「火を使わない火葬」とも呼ばれ、科学的にはアルカリ加水分解という化学反応を利用します。

処理はまず遺体を密閉された加圧容器の中に入れるところから始まります。 その容器には水と水酸化カリウムという強いアルカリを混ぜた溶液が入れられます。

その後、容器をおよそ90〜150℃に加熱。

容器は加圧されているため水は沸騰せず、液体の状態のまま遺体の有機組織をゆっくりと分解していきます。

この過程で分解されるのは主に筋肉や脂肪、内臓、細胞などの有機物です。

数時間の処理が終わると、遺体の大部分は液体になり、最終的に残るのは骨だけになります。

残った骨は乾燥させて粉砕され、通常の火葬と同じように遺族へ遺灰として返されます。

興味深い点として、アクアメーションで得られる遺灰は火葬の灰よりも白い色になることが知られています。

また、高温で燃焼する火葬と違い骨が蒸発して失われる部分が少ないため、火葬より多くの骨片が残ることもあります。

一方で分解された有機物は液体として残ります。

この液体はアミノ酸や塩などを含む無菌の溶液で、処理施設で中和されたのち下水処理システムに送られるか、場合によっては肥料として利用することも可能です。

このようにアクアメーションは、火を使わず水と化学反応によって遺体を分解する、従来とはまったく異なる葬送技術なのです。

では、なぜこの方法が注目を浴びているのでしょうか。

なぜ「火葬の代替」として注目されているのか

アクアメーションが近年注目されている最大の理由は、環境への影響です。

従来の火葬は800〜1000℃以上の高温で遺体を燃焼させる必要があります。

そのため大量のエネルギーを消費し、燃焼の過程で二酸化炭素などの排出も発生します。

さらに歯の詰め物に使われる歯科アマルガムなどから水銀が蒸発し、大気中へ放出される可能性も指摘されています。

これに対してアクアメーションは火を使わず比較的低い温度で処理を行うため、必要なエネルギーが大幅に少ないと紹介されています。

報道では、火葬に比べてエネルギー使用量はおよそ7分の1程度に抑えられる可能性があり、二酸化炭素排出量も大きく削減できるとされています。

また燃焼が行われないため水銀が蒸発することもなく、液体中にとどまって回収しやすいという利点も挙げられています。

こうした理由から、アクアメーションはしばしば「グリーン火葬(green cremation)」とも呼ばれ、環境に配慮した新しい葬送方法として議論されるようになりました。

実際、この方法は世界のいくつかの国や地域ですでに導入されています。

たとえばアメリカでは複数の州で合法化が進んでおり、カナダの一部州でも認められています。

また南アフリカでも導入例があり、南アフリカの大主教でノーベル平和賞受賞者のデズモンド・ツツがこの方法を選んだことは、広く知られるきっかけの1つになりました。

さらにヨーロッパではアイルランドで利用可能になっており、地域ごとに制度化の進み方は異なるようです。

とはいえ、この方法にはまだ議論も残っています。

遺体を液体として処理することに対する宗教的・文化的な抵抗や、処理後の液体をどのように扱うべきかといった制度上の課題などです。

それでも環境問題への関心が高まる中で、葬送の方法も持続可能性を考えるべきではないかという議論は確実に広がっています。

スコットランドの今回の決定は、その変化を象徴する出来事と言えるのかもしれません。

参考文献

Dissolving The Dead: Scotland Becomes First UK Country To Allow Aquamation, A Green Alternative To Cremation
https://www.iflscience.com/dissolving-the-dead-scotland-becomes-first-uk-country-to-allow-aquamation-a-green-alternative-to-cremation-82727

Aquamation as a form of “Green Cremation”: A short Note
https://ceerapub.nls.ac.in/aquamation-as-a-form-of-green-cremation-a-short-note/

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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