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【3月に見たい展覧会3選】エスパス ルイ・ヴィトン大阪のジェフ・クーンズ、アンドリウス・アルチュニアン、高木由利子

  • 2026.2.27

ジェフ・クーンズ「PAINTINGS AND BANALITY - SELECTED WORKS FROM THE COLLECTION」

ジェフ・クーンズの作品《Monkey Train(Birds)》(2007) Jeff Koons. Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris

その活動をひとくくりに説明するのは難しい。ジェフ・クーンズは、金属や磁器、ガラスといった工業的な素材による彫刻で広く知られる一方、絵画を含む表現手法を横断しながら制作を続けてきた。1980年代後半に発表された「バナリティ」シリーズでは、“叔母の家”で見かけるようなキッチュな民芸品や宗教像などをモチーフに、安価で俗っぽいとされがちなイメージをあえて前景化した。

また、90年代に始まった「セレブレーション」シリーズでは“祝い”や“喜び”がテーマとなる。風船やリボン、ケーキ、宝石といった誕生日や祝祭を思わせるきらきらとしたモチーフは、子どもの世界の無垢さを帯びながら、巨大なスケールと鏡面仕上げのステンレス・スチールによって美術史的な彫刻へと転換された。なかでも《バルーン・ドッグ》は、風船細工という一過性のイメージを永続的な素材で結晶化させた作品として、シリーズのみならずクーンズの象徴的な存在となった。

《Landscape(TreeⅡ》(2007) Jeff Koons. Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris

高尚/低俗という価値の境界を揺さぶり続けてきたクーンズにとって、過剰とも映る世俗的な造形は皮肉や批評の対象ではなく、人が欲望を抱き、美を求める自然な衝動の表れであり、自己肯定へといたるための入り口なのだ。巨大な分業制の制作スタジオやオークションでの高額落札といった話題性の裏側で、美術史や宗教的なイメージと真摯に向き合ってきたその姿勢は、消費社会を生きる私たち自身を映す鏡のようでもある。2月20日に開幕する展覧会では、フォンダシオン ルイ・ヴィトンの所蔵コレクションから彫刻と絵画あわせて7点を精選し、その創作を紹介。

本展はメゾンが国際的に展開するプログラム「Hors-les-murs(壁を越えて)」の一環として実現する。“世界的アーティスト”としてのイメージを一度脇に置き、ジェフ・クーンズという人物像を捉え直す機会となるはずだ。

《Wild Boy and Puppy》(1988)。 Jeff Koons. Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris

~7/5、エスパス ルイ・ヴィトン大阪

アンドリウス・アルチュニアン「Obol」

アンドリウス・アルチュニアン《Below(For the Ones That Murmur)》(2024) Photo: Dat Bolwerck, Zutphen. Courtesy of the artist


インスタレーションや映像、音、パフォーマンスなど、多様なメディアを横断しながら「聴く」ことの新しい形を探求するアンドリウス・アルチュニアンは、アルメニアとリトアニアにルーツを持つアーティスト・作曲家。

その彼の日本初の個展となる。ゲスト・キュレーターに、オルタナティブな活動を見せる岩田智哉を迎える。舞台は、想像上の“未来の冥界”。石油由来の漆黒な物質「瀝青(れきせい)」をイメージの起点に、神話や、現代の「地下レイヴ」の美学が交錯する空間を音像が包み込む。作家の思索が詰まった“冥界者のためのクラブ”へ誘われて。

~5/31、銀座メゾン エルメス ル・フォーラム 8・9階

高木由利子 写真展「Threadsof Beauty 1995-2025」

高木由利子《Peru, 2003》 © YURIKO TAKAGI

写真家・高木由利子が、30年にわたって世界各地をめぐり、伝統的な衣服をまとい生きる人々の日常を撮影してきた「Threads of Beauty」シリーズ。その集大成として100点以上を展覧する個展が開催される。

ファッションデザイナーとしてのキャリアを持つ高木は、衣服や身体を通して人を自然の一部として捉える独自の視点を築いてきた。民俗的記録にとどまらず、被写体の圧倒的な格好よさとアイデンティティのありかを写し出す高木のまなざしが、あらためてファッションとは何かを問う。会場構成は建築家・田根剛が手がける。

3/10~3/29、Bunkamura ザ・ミュージアム

From Harper's BAZAAR 2026 April Issue

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