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「我が子のため」という思いが暴走…中学受験という沼にハマった親とその子どもを生々しく描いた壮絶な家族ドラマ【書評】

  • 2026.2.24

【漫画】本編を読む

『翼の翼』(みこまる:漫画、朝比奈あすか:原作/KADOKAWA)は、中学受験をテーマに「子どもの才能を伸ばしたい」「どこまでも羽ばたいてほしい」と、親なら誰もが持つ願いから始まる凄絶な道のりを描いた、胸を抉る家族ドラマだ。

ごく普通の主婦・有泉円佳は、ある日、小学2年生の息子・翼に全国模試を受けさせる。それは些細なきっかけだったが、思いがけない好成績を見た円佳は「翼のためになるなら。だめならやめればいいし」という軽い気持ちで進学塾への入塾を決める。しかしそれは、中学受験という「沼」の入り口だった。受験への歩みを進めるにつれて家族の関係は変化し、「子どもの未来を願う純粋な思い」が知らぬ間に翼の負担となり、心を揺さぶるようになる。

本作は「子どものため」という親の思いがどのように子どもへのプレッシャーへと変わっていくのかの過程が描かれる。成績が伸び悩みはじめた翼に対し、円佳は次第に勉強を強いるようになる。先の見えない苦行と思いながらも、「これは翼のためだ」と自分に言い聞かせて歩みを止めることができない。やがて夫も受験に深く関わるようになり、家庭は「勉強中心」の空間へと変わっていく。期待と不安、焦りが絡み合い、親の関与は徐々に激しさを増していくのだ。

物語の中盤、翼はその重圧に耐えきれず不正に手を染めてしまう。「うちの子は特別」と才能を信じてエスカレートしてしまう親心が、子どもを追い込んだ結果だ。その事実に円佳が気づいたとき、どのように受験と、そして翼と向き合っていくのか。家族の行く末を最後まで見届けてほしい。

そして本作は、受験というテーマを通して、家族の絆とは何か、成功とは何かを問いかける。親子の関係や家族のあり方を見つめ直すきっかけになる一冊だ。

文=坪谷佳保

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