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思い通りにいかない育児で、子どもに暴言を吐くのは「虐待」か? 完璧な母親になれない苦しさと向き合った果てに見つけたものは【書評】

  • 2026.3.16

【漫画】本編を読む

『これって虐待ですか 自己肯定感が低くて怒りを止められなかった私が息子と一緒に笑えるようになるまで』(あさのゆきこ/KADOKAWA)は、子育ての理想と現実の間で、人知れず苦しむ母親の姿を描いた作品だ。

主人公のみずきは待望の子どもが生まれたものの、初めての育児に苦戦していた。専業主婦で夫の協力や実家のサポートもあり、一見すると「恵まれた」環境にいる。しかし、彼女の心は常に追い詰められていた。思い通りにいかない育児、発達がゆっくりな息子への不安。そんな日常の中で、彼女は息子に暴言を吐き、怒りをぶつけてしまう。「自分はダメな母親だ」「生きてて恥ずかしい」と自らを責める一方で、止められない怒りに震える姿は、多くの親が胸の奥に押し込めている感情を映し出している。

この物語の核心は、単なる子育ての苦労話ではなく、「自己肯定感の低さ」がどう親を蝕むかという点にある。みずきは自分のできることを懸命にこなしているが、本人は「完璧な母親にならなければ」という思いに囚われている。他人の目や世間の「普通」を気にしすぎるあまり、ありのままの息子や自分を受け入れることができない。この「ちゃんとしなきゃ」という気持ちが強すぎるあまり、そこから少しでも外れた瞬間に激しい怒りやパニックを生んでしまう。そしてついに、みずきは恐ろしい考えにたどり着くことになる。

「虐待」という言葉は重い。だが、本作が示すのは特別な誰かの話ではなく、余裕を失ったときに誰の身にも起こりうるであろう危うさだ。誰だって最初から完璧な親ではない。仕事や家事、育児で心が削られている人にとって、本書は「あなたはひとりではない」という心強いメッセージをくれるだろう。みずきが葛藤の末に息子との笑顔を取り戻していく過程は、理想と現実のギャップに戸惑い、自分を責めてしまうすべての人の心を静かに照らしてくれる。

文=つぼ子

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