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【豊臣兄弟!】「信じよう」とする豊臣兄弟(仲野太賀、池松壮亮)と「信じまい」とする織田信長(小栗旬)の対比がおもしろい!

  • 2026.2.20

【豊臣兄弟!】「信じよう」とする豊臣兄弟(仲野太賀、池松壮亮)と「信じまい」とする織田信長(小栗旬)の対比がおもしろい!

2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」。今まであまりスポットライトの当たることのなかった豊臣秀長を主人公に、戦国時代がどう描かれるのか? ここでは、ストーリー展開が楽しみな本ドラマのレビューを隔週でお届けします。今回は、第5回「嘘から出た実(まこと)」と第6回「兄弟の絆」です。

前回、主君である織田信長(小栗旬)に従って桶狭間の戦いに参加した藤吉郎(池松壮亮)と小一郎(仲野太賀)の豊臣兄弟。その手柄を認められて本格的に武士としての道を歩み始めたが、第5回、第6回では、いよいよ戦国の世の渦中にその身を投じていく様が描かれていく。

小一郎に至っては、いまだに「現場」に度肝を抜かれたり、怖気づいたりの連続だが、それでももう人生の舵は切られてしまった以上、引き返すわけにいかない。口から先に生まれたような調子のよい兄の陰となり日向となり、少しずつ覚悟を決めていく様が描かれていて、思わず一緒にハラハラドキドキ……と物語も盛り上がってきた。

第5回「嘘から出た実」

永禄5(1562)年、桶狭間の戦いで、今川義元(大鶴義丹)に劇的な勝利を収めた織田信長は、目指す尾張一統に向けて、その背後を盤石にすべく、のちの徳川家康こと松平元康(もとやす/松下洸平)と同盟を結んだ。先の桶狭間の戦いで今川側についていた元康だが、独立して三河・岡崎城へ戻っていたのだ。

幼少期を人質として過ごした末に、今のような地位についた元康からその秘訣を引き出したいと思った藤吉郎は、信長から元康を国境まで見送るように命じられた道すがら、ほかの供の者を出し抜いた隙に、直接それを尋ねる。すると元康は、いとも簡単に快くこう答えるのだった。
「たやすいことよ。信長殿を信じることじゃ。そして誰にもできぬことをやってのけるのじゃ。恐れずに己を信じて突き進むのじゃ。大事なのはここじゃ(胸を叩く)。熱意が人を動かし勝敗を決する」

すっかり感激した藤吉郎は、興奮の面持ちで答え、元康の後ろ姿を見送る。
「わしの思うていたとおりじゃ。ありがとうございまする。以後、肝に銘じまする!」
そして、隣の小一郎にも「喜べ小一郎、これで大名も夢じゃないぞ」と語りかけるのだが、小一郎は何か腑に落ちないという様子で、眉をしかめるのだった。

案の定、兄弟と別れた元康は、馬に揺られながら、家臣の石川数正(かずまさ/迫田孝也)と冷酷に笑い合って、吐き捨てるようにこう言うのだった。
「すべて逆のことを言うてやったわ。織田の下侍に、なんでわしの考えを教えねばならぬ」

野心と勢いで突っ走る藤吉郎は、時に冷静な判断力を失うことがある。その時に助けになっていくのが、小一郎の「勘」なのだろう。オープニングの映像では、たびたび小一郎の目や耳がアップになるが、それは、その耳が藤吉郎が聞こえない音を拾い、その目が藤吉郎が見過ごしたものを見逃さない、ということなのかと個人的には思うのだが、どうだろうか。

翌年、信長は居城を清須城から小牧山城に移した。藤吉郎と小一郎は、信長の側近部隊である馬廻衆(うままわりしゅう)に出世し、かつてのボロボロの小屋から、それなりの屋敷に住むようになった……らしいことが、いきなりの家族集まっての食事風景でそれとわかる。

そこには、中村から呼び寄せた(であろう)母のなか(坂井真紀)、姉のとも(宮澤エマ)、妹のあさひ(倉沢杏菜)、ともの夫・弥助(やすけ/上川周作)、あさひの夫・甚助(じんすけ/前原瑞樹)もいて、家の様子や着物などからも、皆の暮らしが楽になったことが見てとれる。

あまりにここは説明がないので、あれれと思いつつ、その間のことは想像するしかないのだが、兄弟の出世がそれなりに順調であることが窺える大事な場面でもある。それにしても大家族! 合間、合間に挟まれる家族とのほのぼのシーンだが、秀吉はこうした家族に支えられて出世していったのだなと、そして、それが、元からの武士とは大きく異なるところなのだなと改めて感じるところでもある。

藤吉郎は、以前から思いを寄せている浅野長勝(ながかつ/宮川一朗太)の娘・寧々(ねね/浜辺美波)に気持ちを伝えたいと思い、ますます出世への願望が募っていた。そのために信長に対してあれやこれやと先回りした気遣いをしようとするも、ことごとく前田利家(としいえ/大東駿介)に先を越されてしまう。

そんな中、信長の前で武芸を競う御前大試合が行われることになる。小一郎は、兄を何とか勝たせたく、対戦相手の組み合わせに細工をするが、最終戦で利家と当たった藤吉郎は、あっけなく負けてしまう。その試合を見た信長が、兄弟の小細工に気づいていたと知って二人は慌てるが、予想に反して、信長はその知略を買い、兄弟にその「策」を用いて鵜沼(うぬま)城を調略することを命じる。

しかし、城主の大沢次郎左衛門(松尾諭)は、あの美濃の大名・斎藤道三(麿赤兒)の後ろ盾で今の地位に上り詰めた、猛将の呼び声の高い人物である。これまでにもとりつくしまもなく、何人もが追い返されてきたという。だが、これをやり遂げたら侍大将にすると信長に約束された藤吉郎と小一郎は、後には退けない。小一郎は秘策を練り、弥助と甚助を使い、斎藤家の本拠地である美濃・稲葉山城下で「次郎左衛門と織田が通じている」という噂を流すことにした。

その噂を聞きつけた現在の美濃城主で道三の孫である斎藤龍興(たつおき/濱田龍臣)は、次郎左衛門を呼びつけ、潔白を証明したければ、人質として妻の篠(しの/映美くらら)を稲葉山城に連れてこいと命じる。その日、鵜沼城に戻った次郎左衛門のもとを、信長の書状を携えた藤吉郎と小一郎が訪ねてくる。何度も追い返されてきた二人だが、初めて二人に目通りを許す。

最初は信長に寝返る気などないと突っぱねていた次郎左衛門だが、「一度かかった疑いを晴らすのは並大抵のことではない。それならいっそ本当のことにしてしまうのはどうでござるか」と小一郎が言えば、「嘘から出た実ということもありまする。もしやこれは、天が示した道なのではございませぬか」と阿吽の呼吸で藤吉郎が続けるのを受けて、心が揺れる。

そこへ、次郎左衛門の家臣が「噂を流した張本人が見つかりました」といって、弥助を捕らえて現れる。すべてが小一郎たちの策だと知った次郎左衛門は激怒。刀を抜きかけると、そこへ小一郎をかばうように藤吉郎が進み出る。
「お待ちくだされ! 責めはこの私が負いまする!」

藤吉郎、たまには潔い、堂々とかっこいいところも見せてくれるじゃないかと思ったのもつかの間、「やっぱり嫌じゃ。わしも死にとうない! わしはこの大仕事をやり遂げて、侍大将になるのじゃ。侍大将になって、寧々殿と祝言を挙げるのじゃ。夫婦になってずっと守っていくと決めたのじゃ!」

藤吉郎の熱意に押された次郎左衛門は刀を納める。「さっさと失せよ」という言葉に、「わしは行かぬ。お主らは先に帰れ。わしは信長様と約束したのじゃ。必ずや大沢殿を説得し、お味方につけると。このまま帰るわけには参りません」と藤吉郎は訴える。
「わしのような者を信じてこのお役目を与えてくださった信長様のご期待を裏切るわけにはいかぬのじゃ」

藤吉郎の必死の訴えに次郎左衛門の表情も変わる。そして、藤吉郎は人質として鵜沼城に残ることを選び、小一郎は次郎左衛門を小牧山城に連れていく。

ところが、城に着いてみると、次郎左衛門の従者の荷に「苦無(くない)」という小さな刃物の武器が見つかり、しかも切っ先には毒が塗ってあったと告げられてしまう。「身に覚えはない」と断言する次郎左衛門の言葉に信長は聞く耳を持たず、「始末せよ」と家臣に命じるのだった。

第6回「兄弟の絆」

戦国の下克上の世。信長も元康も心底相手を信じることがない人物として描かれるのに対し、百姓上がりの兄弟には、憎めない「小狡さ」はあっても、信頼を寄せてきた者を冷徹に裏切るだとか、微塵も温情なくだまし討ちをするだとか、そういう「戦国乱世擦れ」といったものは見受けられない。

武士としての位が上がっていけば、また違ってくるのかもしれないが、今はこの「信じよう」とする兄弟と「信じまい」とする信長の対比が、どんどん際立ってくる。この先、兄弟によって信長はどう変わるのか、変わらないのか。また兄弟自身はどうなっていくのか──。それが少し描かれ始めたのが、第6回の「兄弟の絆」だろう。

小一郎は、信長にもう一度慎重に吟味すべきだと訴える。でなければ、次郎左衛門の命と引き換えに鵜沼城に残してきた藤吉郎の命もなくなってしまうのだ。信長は一日だけ猶予を与える代わりに、犯人が見つからなかったときは、お前がその手で次郎左衛門を斬れと命じる。苦悩する小一郎は、家に戻り家族の前で策を練ろうとするが、そのとき、甚助から小牧山城で「苦無」を荷の中に忍ばせる者がいたのを見たと告げられ驚愕する。

その夜、小一郎は、佐々成政(なりまさ/白洲迅)のもとを訪れ、そのことを問い詰める。すると信長が現れて、自分が佐々に命じたのだと衝撃の告白をした。信長は、次々と親類縁者を殺めて家督をつかみ取ってきた次郎左衛門を、自分とどこか重なる冷酷さを持つ者として信用できないのだと言う。そして、藤吉郎のことはあきらめろ、次郎左衛門を斬ればお前を藤吉郎の代わりに侍大将にすると約束するのだった。

小一郎は、最後の砦、信長の妹・市(いち/宮﨑あおい)に直談判に行くが、「私には兄上をいさめることなどできぬ。力になれず、すまぬ」と断られてしまう。市の話では、信長がこれほど人を信用しなくなったのは、4年前に弟・信勝(のぶかつ/中沢元紀)の謀反があってからなのだと言う。かつては仲のよかった弟が、兄・信長に刀を向けてきたところを柴田勝家(かついえ/山口馬木也)に斬られて果てる。今際の際に、一瞬、弟の目に幼い日のやさしさを見た信長が、信勝の亡骸を抱いて慟哭する。

小牧山城主殿に、次郎左衛門とともに引き出された小一郎は、「真犯人は見つかったか」と問われて、それは言えない、言ったところで信じてもらえないでしょうと口をつぐむ。信長は、であれば約束通り、お前の手で次郎左衛門を斬れと命じる。「さすればお主を侍大将とする」。しかし、それを小一郎は断る。ここからの小一郎の見せ場はこの物語の柱ともなる大事な場面だ。

「そんなものになりたくありません。大沢殿の命は兄の命じゃ。この手で兄を殺すことなどできませぬ。わしはどんなことがあろうとも兄者を裏切りませぬ。なぜかおわかりか。兄者がわしのことを信じているからじゃ。殿のことを信じておるのです! 兄者が殿を裏切ることは金輪際ありませぬ。そういう家臣をあなたは失うことになりますぞ」

そしてこうも続ける。
「わしを侍大将に。ありがたいことじゃ。じゃが、気をつけられませい。わしは兄者とは違う。こたびのことであなた様が大嫌いになりもうした。わしを生かしておいたら、いつか寝首をかくかもしれませぬぞ」

そして次郎左衛門に刀を手渡し、自分のことを斬って信長に忠義を示せと迫った。だが次郎左衛門はその場で自分の髪を落とし、自分は仏門に入るからこの者の無礼をそれでゆるしてくだされと信長に訴える。信長は二人をゆるすのだった。

次郎左衛門は無事に鵜沼城に戻り、藤吉郎と小一郎も家に帰ってくる。心配して家から飛び出してきた寧々に、ついに藤吉郎は告げる。「お寧々殿、わしと夫婦になってくだされ」。小一郎も直(なお/白石聖)と微笑みを交わし合うのだった。

豊臣兄弟の対照的に、たびたび現れる、信長の弟・信勝の殺害場面だが、これが信長という人物のいかに深い傷となって、その後の人格形成の礎ともなっているかということを、この物語ではどうやら描いていくようだ。そういう自分たち兄弟と豊臣兄弟。信長は、この兄弟も、所詮は「己大事」なのだと踏んでいるのか、あるいは自分たちになかった何かを持つものとしてとらえているのか。その揺れ動く信長の人間臭い感情が、回を追うごとに物語に深みを与えてくるのがいい。

笑えるところと、心にじっくり訴えかけてくるところとを絶妙な演技で見せてくれる仲野太賀と池松壮亮。そして、冷酷なだけではない、うつけなだけでもない信長をみごとに演じている小栗旬。ますます見応えあるドラマになってきた。

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