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「私なら大丈夫!」ポジティブな自己暗示は本当に効くのか?

  • 2026.2.20
Credit: canva

「私は価値ある存在だ」「きっと上手くいく」「私なら大丈夫」

こうしたポジティブな自己暗示(ポジティブ・アファメーション)を繰り返せば、気分が上がり、自信がつき、人生さえ好転する。そんなメッセージはとても魅力的です。

私たちは本能的に苦しみを避け、安全で幸福な状態を求めるようにできています。

だからこそ、「言葉を変えれば心が変わる」という考えは心地よく響きます。

しかし、この方法は本当に科学的に裏付けられているのでしょうか。それとも、気休めにすぎないのでしょうか。

目次

  • ポジティブ・アファメーションの科学的根拠
  • ポジティブ思考の落とし穴と、より有効な方法とは?

ポジティブ・アファメーションの科学的根拠

ポジティブ・アファメーションの背景には、「自己肯定理論(Self-affirmation theory)」があります。

これは1980年代後半に提唱された理論で、人は「自分は十分で価値がある存在だ」という物語を心の中に築こうとする、と考えます。

しかし、悪い成績を取る、仕事で失敗する、恋人と別れるといった出来事は、その物語を揺さぶります。

その結果、自己批判が強まり、不安や抑うつが生じやすくなることがあります。

理論上は、そこで前向きな言葉を繰り返すことで、傷ついた自己イメージを守り、心のバランスを回復できるとされます。

実際の研究はどうでしょうか。

2025年のレビュー研究では、67本の研究を統合分析しました。

参加者がポジティブな言葉を書いたり声に出して繰り返したりした場合の幸福感への影響を調べたものです。

その結果、自己評価や他者とのつながりに意味のある改善が見られました。ただし、効果はそこまで大きなものではありませんでした。

一部の研究では、ソーシャルメディア利用者の自尊心を守る効果や、メンタルヘルスを高める可能性が示されています。

例えば2025年の研究では、乳がんの化学療法を受けている女性が、音楽とともにポジティブな自己暗示の録音を聴いた場合、音楽のみを聴いた群に比べて抑うつや眠気が少ないと報告されました。

また別の2025年の研究では、うつ症状はあるものの診断は受けていない成人が、1日2回ポジティブな自己記述を書くことで、15日後に自尊心が改善したと報告しています。

ただし、2009年の有名な研究では重要な条件が示されました。

「私は愛される存在だ」といった言葉で気分が改善したのは、もともと自尊心が高い人だけだったのです。

自尊心が低い人では、かえって気分が悪化するケースもありました。

さらに近年では、こうした効果を再現できない研究も報告されています。つまり、誰にでも万能に効く方法とは言い切れないのが現状です。

ポジティブ思考の落とし穴と、より有効な方法とは?

ポジティブな言葉に害はないように思えますが、注意すべき点もあります。

一つは「トキシック・ポジティビティ(有害なポジティブさ)」です。

人は不完全で、世界はしばしば理不尽です。それを無理に否定し、「前向きに考えなければ」と自分に強いることは、つらい感情を抑圧することにつながります。

苦しいときに「考え方を変えればいい」と思い込み、それができない自分を責めると、かえって孤立し、助けを求めにくくなる可能性があります。

もう一つは、短期的な快感の追求です。

ポジティブな言葉を繰り返すと、快楽や報酬に関わる神経伝達物質ドーパミンが分泌され、一時的に気分が高揚することがあります。

しかし常に「いい気分」を追い求めることは現実的ではありません。刺激を求め続ける循環に陥る危険もあります。

さらに、危険な状況での過度な前向き思考も問題です。

例えば、虐待的な関係にある場合、「私なら乗り越えられる」と言い続けることで、危険のサインを見逃してしまうことがあります。直感を打ち消してしまう可能性もあるのです。

では、何が有効なのでしょうか。

近年の研究は、「どれほどポジティブか」よりも「どのように自分に語りかけるか」が重要である可能性を示しています。

一つは自己への思いやり(悲しみや苦しみへの共感)です。

「これはつらい」「誰でもこう感じる」と自分に語りかけることは、単なる前向きスローガンよりも心を支えます。

苦しみを認め、親しい友人に話すように自分を扱う姿勢が、回復力を高めるとされています。

もう一つは心理的距離をつくる方法です。

自分を三人称で呼び、「〇〇は今怒っている。でもこれまでも困難を乗り越えてきた」と語ることで、自分と感情の間に距離が生まれます。

この「非執着」の姿勢は、感情を観察し、衝動的に反応せずに済む助けになります。

魔法ではないが、使い方次第

「私なら大丈夫」という言葉は、魔法の呪文ではありません。すべての人、すべての状況に効く万能薬でもありません。

しかし、適切な状況で、柔軟に使うならば、確かに小さな支えにはなります。

大切なのは、「この考えは今の自分に役立っているか」と問い続けることです。

前向きな言葉を選ぶときも、現実を否定するのではなく、自分への理解と共感を込めることが重要です。

無理に強くなるのではなく、弱さを認める勇気を持つこと。それこそが、ほんとうの意味で「私なら大丈夫」と言える土台なのかもしれません。

参考文献

Do Positive Affirmations Really Work? A Psychologist Explains The Science
https://www.sciencealert.com/do-positive-affirmations-really-work-a-psychologist-explains-the-science

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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