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動物は人間を「怖い存在」だと認識しているのか?

  • 2026.2.19
動物にとって人間は怖い存在なのか? / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

「動物は人を恐れる」と考えられてきました。

しかしクマが人を襲う事例などを見聞きすると、本当に人間を怖いと思っているのかと疑問に感じます。

では、動物は本当に人間を一律に「危険な存在」として恐れているのでしょうか。

この問いを検証したのが、インド理科大学院(IISc)の研究チームです。

彼らは過去30年間の研究を統合したメタ分析を行い、野生動物がどのような人間活動に対して強く反応するのかを分析しました。

詳細は2025年12月26日付の学術誌『Ecology Letters』に掲載されています。

目次

  • 動物は人間を常に「怖い存在」だと認識しているのか
  • 動物は「人間かどうか」ではなく「危険かどうか」で判断している

動物は人間を常に「怖い存在」だと認識しているのか

これまでの研究では、人間は「他の捕食者よりもはるかに多くの動物を捕獲し、生態系に強い影響を与えてきた存在」だと位置づけられてきました。

こうした背景から、「人間は他の捕食者より強く恐れられている」という見方が有力になっていました。

しかし、ここで重要なのは「人間」といってもその関わり方が一様ではないという点です。

狩猟者もいれば、観光客や研究者もいます。

また、道路や集落のように、人間の存在が環境の一部として固定化している場合もあります。動物にとって、これらは同じ脅威なのでしょうか。

研究チームはこの疑問に答えるため、過去30年間に発表された野生動物の行動研究を体系的に収集し、分析しました。

対象としたのは、人間との相互作用が動物の行動にどのような変化をもたらすかを調べた研究です。

特に注目したのは、次の3つの行動でした。

  • 採食:餌を探して食べる時間
  • 警戒:周囲を見回し危険を確認する行動
  • 移動:活動範囲や移動量の変化

これらは動物が「危険と利益」をどう配分しているかを示す指標です。

警戒に時間を割けば、その分だけ採食の時間は減ります。移動が増えればエネルギー消費も増えます。

つまり、生存や繁殖に直結する行動なのです。

さらに研究では、人間との関わり方を三つに分類しました。

  1. 致死的活動(狩猟など、実際に命を奪う可能性があるもの)
  2. 能動的な非致死的活動(観光や研究者の接近など)
  3. 受動的な非致死的要因(道路や集落などの人工構造物)

その結果、はっきりした傾向が見えてきました。

狩猟などの致死的活動が行われている地域では、動物は警戒を強め、採食時間を減らしていました。

一方で観光などの非致死的活動では、同じ方向の変化が見られるものの効果は弱く、種によってはほとんど変化がありませんでした。

道路などの受動的要因では、反応は非常にばらつきが大きいことも分かりました。

ではなぜ、これほど違いが生まれるのでしょうか。

動物は「人間かどうか」ではなく「危険かどうか」で判断している

今回の結果は、「動物が脅威の強さや、その危険がどれくらい起こりそうかに応じて行動を変える」という仮説と一致します。

危険が高く、しかも継続的であれば、常に警戒を強める方が生存に有利です。

狩猟圧が高い地域では、油断は命取りになります。

そのため警戒が増え、採食時間が減るのは合理的な行動といえます。

一方、観光客や研究者など非致死的な人間活動は、多くの場面で脅威の強さが低く、パターンもある程度決まっていると考えられます。

そのような状況では、動物はそこまで強い恐怖反応を示さないケースも多く、種や地域によっては人間の存在にある程度慣れてしまう可能性も示唆されています。

この知見は、野生動物の保全や管理の現場にも重要な示唆を与えます。

研究チームは、致死的な人間活動が強い行動変化を引き起こすことから、少量の間引きが、人間が暮らす地域への野生動物の侵入を抑える一つの手段になりうると指摘しています。

現在用いられているさまざまな対策と比べても、有効な場合があるかもしれません。

ただし、これは生態系や種の特性に強く依存するため、慎重な検討が不可欠です。

さらに興味深いのは、道路や集落のような受動的要因の影響が一様ではなかった点です。

捕食者が人間を避ける場合、獲物にとっては人間の近くが相対的に安全になることもあります。

また道路沿いは植生が刈られていることが多く、採食しやすい環境になる場合もあります。

ただしその場合でも交通事故という別のリスクが存在します。

つまり動物は単純に「人間かどうか」で判断しているのではなく、「どれほど致命的な脅威か」「その危険がどれほど予測できるか」を評価している可能性が高いのです。

この研究は、野生動物は人間を無条件に恐れているわけではないことを明らかにしました。

私たち人間が動物と適切な距離を維持したいなら、「人間が動物たちの目にどう映っているか」を意識することが大切なのかもしれません。

参考文献

Not all humans are ‘super-scary’ to wildlife, animal behavior study suggests
https://phys.org/news/2026-02-humans-super-scary-wildlife-animal.html

元論文

Not all humans are ‘super-scary’ to wildlife, animal behavior study suggests
https://doi.org/10.1111/ele.70287

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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