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言い合いになりそうな話題を冷静に進める2つのコツ

  • 2026.2.19
「言い合いになりそうな話題」を上手に進めるには? / Credit:Canva

「あの一言、まだ引っかかっているんだけど」

「業務の改善をお願いしたいのですが」

このように、パートナーや友人、職場の人と、避けては通れない話題があります。

大切な関係であればあるほど、本音を伝えなければ前に進めない場面は必ず訪れます。

しかし、その一言がきっかけで空気が張りつめ、気づけば言い合いになってしまうことも少なくありません。

米国の心理学者Mark Travers氏は、こうした“感情が揺れやすい会話”を冷静に進めるための2つの戦略を紹介しています。

目次

  • 会話を冷静に進めるコツ①:感情を整えてから会話する
  • 会話を冷静に進めるコツ②:責めずに自分の体験から話す

会話を冷静に進めるコツ①:感情を整えてから会話する

まず前提として、言い合いになりそうな話題は、どの関係にも必ず現れます。

たとえば、「あのときの一言がずっと引っかかっている」と過去の出来事を持ち出すとき。

「家事の負担が偏っている気がする」と役割の不公平を伝えるとき。

「将来どうするつもりなの?」と人生設計の方向性を確かめるとき。

あるいは職場で、「このやり方は改善できると思います」と業務の問題点を指摘するとき。

これらは関係を壊すための話題ではありません。

むしろ、関係を続けるために必要なテーマです。

しかし同時に、「軽く扱われていないか」「否定されないか」「評価を下げられないか」という不安を抱きやすい内容でもあります。

ここで私たちの脳は敏感に反応します。

感情的な緊張が高まると、扁桃体が活性化し、身体は防御モードに入ります。

心拍は上がり、呼吸は浅くなり、筋肉は緊張するのです。

この状態では、視野が狭まり、相手の言葉を“攻撃”として受け取りやすくなります。

一方で、冷静な判断や共感、衝動のコントロールを担う前頭前野の働きは弱まってしまいます。

つまり、身体が「危険だ」と感じている状態では、うまく話せないのです。

感情的に安定した人は、ここでいきなり問題解決に飛び込みません。

まず自分の身体反応に気づき、自問します。

「胸が締めつけられていないか」、「呼吸が浅くなっていないか」、「声が強くなっていないか」

そして一度、減速します。深く息を吸い、姿勢を緩め、返答を急がず間を取ります。

こうした小さな行動で、心拍や呼吸などを自動的に整えている「自律神経」のバランスを落ち着かせていきます。

実際、2020年の研究では、他人が感情を表している短い動画を見ながら、自分の感情を「強める」「弱める」「そのままにする」と指示されたときの変化が調べられました。

その結果、感情を意図的に調整すると、副交感神経活動の指標である心拍変動が変化し、相手への「その場での共感の度合い」も変わることが示されています。

つまり、身体の状態を整えることが、相手への共感や反応の柔軟性と結びついていると考えられます。

言い換えれば、まず神経系を落ち着かせることが、建設的な対話の土台になります。

問題を解こうとする前に、自分を整える。それが第一のコツです。

会話を冷静に進めるコツ②:責めずに自分の体験から話す

もう一つのポイントは、言葉の選び方です。

「あなたはいつもそうだ」

「あばたはどうして……」

「あなたのせいでこうなった」

こうした表現は、事実を伝えているようでいて、相手の人格や価値に踏み込みやすい“あなた言語”です。

こうした言葉を投げかけられると、相手は内容よりも先に、自分を守ろうとします。

その瞬間、会話の焦点は問題解決ではなく、防御や反論に移ってしまうのです。

これに対して、感情的に安定した人は「自分の体験」を語ります。

「昨日の会話で、私が話している途中に話題が変わったとき、私は少し寂しく感じたんだ」

「先月の支出を見たとき、将来の貯金が減るのではないかと私は不安になったの」

「会議で私の提案に返答がなかったことを、私は『あまり重要ではないと受け取られたのかもしれない』と感じました」

ポイントは、まず『何が起きたのか』という観察できる事実を述べ、そのうえで『自分はどう解釈し、どう感じたのか』を分けて伝えることです。

常に自分を主語にすることで、相手の人格ではなく出来事と自分の体験に焦点を当てることができます。

実際、2018年の研究では、言い合いが始まりそうな場面での“最初の一言”を比較した結果、「『私』を主語にした表現」は相手に敵意を感じさせにくく、防御的な反応を引き起こしにくいことが示されました。

さらに、「自分の視点」と「相手の視点」の両方を認める表現が、最も建設的と評価されています。

たとえば、「あなたがそう感じる理由は理解できるけれど、私はこう感じている」という形です。

このような言い方は、相手の立場を否定せず、自分の立場も明確にします。

勝ち負けではなく、経験の共有へと会話の軸を移すのです。

自分の体験を丁寧に伝えることは、弱さではありません。

誇張や非難に頼らなくても、自分の感じたことは十分に意味があります。

だからこそ、言葉を鋭くする必要はないのです。

ここまでで、言い合いになりそうな話題を冷静に進めるための2つのコツを紹介しました。

どちらも特別な交渉術ではありません。

まず自分の神経系を整えること、そして、責めずに自分の体験から語ること。

それだけで、対立から対話へと変わる可能性を持っているのです。

参考文献

2 Important Strategies for Having Difficult Conversations
https://www.psychologytoday.com/us/blog/social-instincts/202602/2-important-strategies-for-having-difficult-conversations

元論文

Emotion regulation of others’ positive and negative emotions is related to distinct patterns of heart rate variability and situational empathy
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0244427

I understand you feel that way, but I feel this way: the benefits of I-language and communicating perspective during conflict
https://doi.org/10.7717/peerj.4831

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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