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「アフリカ最小の猫」の生存戦略を解明――”ある動物”の巣穴を借りている

  • 2026.2.11
アフリカ最小の猫は他の動物の巣穴を利用している / Credit:Canva

アフリカには、世界で最も小さなネコ類の1種である「クロアシネコ」が存在します。

小さい個体では体重が1キログラムほどの可愛らしいネコですが、弱肉強食の世界で生き抜く必要があります。

では、この小さな野生ネコは、どのようにして過酷な環境を生き延びているのでしょうか。

南アフリカ共和国のケープタウン大学(UCT)の研究チームは、クロアシネコの雌が日中に身を潜める「巣穴」の使い方を詳しく調べました。

その結果、この小さなネコが他の動物の存在に強く依存して生きている実態が明らかになりました。

この研究成果は、2024年10月18日付の『African Zoology』にオンライン公開されています。

目次

  • アフリカ最小の猫「クロアシネコ」は巣穴を利用する
  • クロアシネコは戦略的に「トビウサギ」の巣穴を狙っている

アフリカ最小の猫「クロアシネコ」は巣穴を利用する

クロアシネコ(Felis nigripes)は、南アフリカ、ナミビア、ボツワナなどの乾燥地帯や半乾燥地帯に分布する小型の野生ネコです。

夜行性で、夜になると広い縄張りを移動しながら小型哺乳類や鳥、昆虫などを捕食します。

一方で、昼間は地表で過ごすことはほとんどなく、必ずといってよいほど地下に潜って休息します。

重要なのは、クロアシネコが自分で一から大きな巣穴を掘るのではなく、主に他の動物が掘った巣穴を利用している点です。

研究チームはクロアシネコがこうした巣穴をどのように利用しているのか調べることにしました。

特に雌のクロアシネコは子猫を産み育てるため、巣穴の安全性が生存に直結します。

調査はナミビア南部の農地を含む地域で行われました。

研究者たちは無線発信機を装着した雌のクロアシネコ5頭を対象に、27日間、ほぼ毎日昼間の居場所を追跡。

これにより、各個体がどの巣穴を利用しているのかが詳細に記録されました。

さらに、クロアシネコが実際に利用した巣穴の入口を、レーザーを用いたLiDAR技術で三次元的に測定し、巣穴の幅や高さ、地中での傾き、猫が休んでいる深さなどを明らかにしました。

同時に、周囲に存在する利用可能な巣穴も多数調査され、巣穴のサイズ分布が把握されています。

その結果、クロアシネコの雌は巣穴を無作為に選んでいるわけではないことが分かりました。

小さすぎる巣穴や大きすぎる巣穴はほとんど利用されず、使われた巣穴の大半がトビウサギ(Pedetes capensis)の巣穴とサイズ的に一致していたのです。

また、同じ巣穴に長く留まらず、頻繁に巣を替える行動も確認されました。

この行動の詳しい意味については、次項でさらに掘り下げていきます。

クロアシネコは戦略的に「トビウサギ」の巣穴を狙っている

詳細な分析から、クロアシネコが利用する巣穴には明確な特徴があることが示されました。

巣穴の入口の直径はおよそ10センチメートルから27センチメートルに集中していました。

このサイズは、クロアシネコが体を無理なく収められる一方で、大型の捕食者が侵入しにくい絶妙な大きさです。

そしてトビウサギの巣穴は、まさにこの条件に合致します。

トビウサギはネズミの仲間で、南部アフリカの乾燥地帯に広く分布し、自ら地中に巣穴を掘って生活します。

特徴的なのは、巣穴を頻繁に掘り替え、使われなくなった巣穴が環境中に多く残される点です。

こうしてトビウサギが次々と巣穴を残していくことで、クロアシネコにとっては「新しい隠れ家の候補」が絶えず現れることになります。

研究では、測定された50か所の巣穴のうち49か所が、トビウサギの巣穴サイズの範囲に収まっていました。

この結果は、雌のクロアシネコが事実上、トビウサギの巣穴に強く依存して生活していることを示しています。

さらに重要なのが、子育て期に見られる巣穴利用の変化です。

子猫がまだ小さく動けない時期、母親は同じ巣穴に数日から1週間以上とどまる傾向がありました。

これは子猫を巣穴に残して狩りに出るため、安定した安全性が求められるためだと考えられます。

一方で、子猫が成長して動き始める生後6週から7週頃になると、行動は大きく変化します。

母親はほぼ毎日のように巣を替えるようになりました。

以前使った巣穴に戻ることも、ほとんど見られなくなります。

研究者たちは、この行動を捕食者に匂いや痕跡を追われるリスクを下げるための戦略だと解釈しています。

子猫が動き回ることで巣穴周辺に残る痕跡が増えるため、同じ場所に留まり続けることは危険になるのです。

この研究が示したのは、クロアシネコというアフリカ最小の猫が、非常に繊細な生存戦略を持っているということでした。

参考文献

The World’s Deadliest Cat Is a 2-pound Furball That Lives in Abandoned Holes Dug by Strange, Kangaroo-like Rodents in Africa
https://www.zmescience.com/ecology/animals-ecology/black-footed-cat-rodent-holes/

元論文

The underground cat: burrow use by female black-footed cats (Felis nigripes)
https://doi.org/10.1080/15627020.2024.2402249

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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