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トリケラトプスの巨大な鼻は「脳のラジエーター」として機能していた

  • 2026.2.19
トリケラトプスの巨大な鼻は脳の冷却に役立っていた可能性 / Credit:多田 誠之郎ら(東京大学), The Anatomical Record(2026), CC BY 4.0

トリケラトプスの化石を見ると、その頭の大きさに驚かされます。

3本の角と大きなフリルが目を引きますが、鼻の部分もまた、極端に大きく発達していることに気づきます。

東京大学の研究グループは、トリケラトプスを含む植物食恐竜のグループ「角竜類」において、化石には直接残らない鼻の軟組織の配置や発達の程度を初めて包括的に推定しました。

その結果、巨大な鼻が「脳のラジエーター」として機能していた可能性を示しました。

本研究は、2026年2月7日付の『The Anatomical Record』に掲載されています。

目次

  • トリケラトプスの巨大な鼻の「中身」を探る
  • 巨大な鼻は「頭部の温度を調整」するのに役立っていた可能性

トリケラトプスの巨大な鼻の「中身」を探る

トリケラトプスに代表される角竜類は、白亜紀後期に繁栄した恐竜のグループで、非常に大きく特殊化した頭骨を持っています。

これまでの研究では、後頭部から広がるフリルや角の役割については多くの議論がなされてきました。

しかし顕著な特徴の1つである鼻の領域については、解剖学的な理解が十分に進んでいません。

その理由の1つは、角竜類の鼻が極端に特殊化しており、他の恐竜類との単純な比較が難しかったためです。

また、鼻の内部にある神経や血管、腺などの軟組織は化石として残らないため、その存在や配置を直接確認することもできません。

そこで研究チームは、角竜類の化石を網羅的に観察するとともに、トリケラトプスの前上顎骨についてCTスキャン撮影を行い、骨内部の細かな管や溝を3次元的に解析しました。

これらの構造は、かつて神経や血管が通っていた痕跡であると考えられます。

さらに、現生の鳥類やワニ類といった爬虫類との詳細な比較を行い、骨に残る痕跡から軟組織の存在や配置を推定しました。

その結果、角竜類、とくにトリケラトプスなどの派生的な系統において、他の爬虫類とは異なる固有の神経血管パターンが存在していた可能性が明らかになりました。

また、これまで有無がはっきりしていなかった鼻腺や鼻涙管など、鼻に備わる一通りの器官についても、その存在や配置が推定されました。

さらに、鼻腔内に呼吸鼻甲介と呼ばれる構造を持っていた可能性も示されました。

では、こうした構造はどのような役割を果たしていたのでしょうか。 その機能的な意味について、次項で詳しく見ていきます。

巨大な鼻は「頭部の温度を調整」するのに役立っていた可能性

角竜類は、陸上の脊椎動物の中でも特に大きな頭部を持つグループでした。

分厚い骨で囲まれた巨大な頭は、これまでの研究で防御や種内での誇示に使われた可能性が指摘されてきましたが、一方で熱がこもりやすい構造でもあったと考えられます。

とくに脳のような神経組織は温度変化に敏感であるため、大きな頭部の温度を適切に調整する仕組みが必要になります。

本研究では、鼻の内部に発達した神経血管系が存在していたことが示されました。

血管が豊富であれば、血液が鼻腔内を通る際に外気との間で熱のやり取りを行うことができます。

さらに、呼吸鼻甲介(鼻の中にあるひだ状の構造)が存在していたとすれば、鼻腔内の表面積は大きく増え、空気と血液との間の熱交換がより効率的に行われた可能性があります。

研究チームは、こうした構造が角竜類の大きな頭部の温度を調整するのに役立っていた可能性を指摘しています。

つまり、トリケラトプスの巨大な鼻は、熱を逃がして頭や脳を守るラジエーターのような役割を果たしていたのかもしれません。

ちなみに、神経血管系のパターンについては、派生的な角竜類において頭骨の変形に伴って変化し、眼神経血管束が鼻孔周辺や吻端に優位に分布するという固有の特徴が見られました。

ただし、これらはあくまで骨に残る痕跡と現生動物との比較から導かれた仮説であり、「必ずそうだった」と断定しているわけではありません。

それでも今回の研究は、これまで他の恐竜類と比べて大きく不足していた角竜類の吻部についての基礎的な解剖学的情報を提供するものとなりました。

化石に残らない部分まで復元することで、私たちは恐竜の姿をより鮮明に理解できるようになったのです。

参考文献

Why Triceratops has such a big nose
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/en/press/z0508_00442.html

トリケラトプスの鼻の解剖学――化石に残らない鼻の器官を角竜類で初めて包括的に推定――
https://www.um.u-tokyo.ac.jp/research/umutnews/20260216.html

Triceratops Had a Giant Nose Because It Worked Like a Radiator for Its Brain
https://www.zmescience.com/science/paleontology/triceratops-huge-nose-radiator/

元論文

Nasal soft-tissue anatomy of Triceratops and other horned dinosaurs
https://doi.org/10.1002/ar.70150

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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