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名古屋通が推す注目の新店12選・前編|日本料理、フレンチ、イタリアン【2026】

  • 2026.2.18
撮影=前川明範

注目の新店によって盛り上がる名古屋の食シーン。

正統な日本料理や異国の文化を生かした料理、さらには近年名古屋で人気が高まるベーカリーカフェまで。名古屋通の皆さんに聞きました。

7人の食のスペシャリストに聞いた注目の12軒。今回は前編、6軒をご紹介します。

推薦してくださったのは・・・
杉戸友里
さん
すぎとゆり○江戸時代の面影を残す名古屋・有松に本社を構え、ヨーロッパをはじめ世界のマーケットでも高い評価を得ているファッションブランド「suzusan」で広報を務める。
林美保子さん
はやしみほこ○名古屋市出身。オレンジ・コミュニケーションズ代表。中部圏の企業や商業施設のPRを手掛ける。地元の食や文化に精通し、名古屋の真価を世に伝えている。
平塚小夕里さん
ひらつかさおり○愛知県出身。新旧の名古屋文化に造詣が深いディレクター。幅広いメディアで地域の魅力を発信。文化遺産に関するプロジェクトのディレクションを手掛ける。
星子莉奈さん
ほしこりな○フリーランスPR、ライター。名古屋での仕事をきっかけに東京と行き来する生活に。メディアでの執筆のほか、多様な食のプロデュースやブランディングに関わる。

杉戸友里さん、平塚小夕里さん推薦

橦木町(しゅもくちょう) しみず

“一品一品、すべてが美しい。洗練された名古屋ならではの日本料理です”───杉戸友里さん

蕪の葛豆腐にばちこの塩気が効いた「橦木町 しみず」の椀。白魚は桑名産。出汁は真昆布と利尻昆布を合わせたまろやかな大阪仕込み。 撮影=阿部 浩

東海の恵みを実直な技でひと皿に

「大阪での経験が長いのですが、自分の店は名古屋で。その思いはずっと変わりませんでした」。岐阜出身の店主、清水陽介さんが2022年に開いた「橦木町 しみず」は、正統派の日本料理を堪能する一軒。

浪速の名店「本湖月」で培った経験を余すことなく発揮した料理は、瞬く間に全国の食通が唸るものとなりました。名古屋人もしかり。杉戸友里さんは「素材の扱い、温度の調整、盛り付けの端正さまで一貫して美しく、“控えめな様のなかの洗練”を感じます」と絶賛します。

焼き物は片時も目を離さず、炭を巧みに操って火を入れる。コースは10~12品ほど。肉の出番は少ないという正統派の会席料理。 撮影=阿部 浩
造りの本みる貝、鯛はいずれも三河産。おかひじき、海苔、わさびを添えて、明の芙蓉手に盛った。 撮影=阿部 浩

しかし、ただ上方の料理を名古屋で作るのではありません。「素材のほとんどは東海3県のものですね。魚介でも野菜でもいいものがなんでも手に入りますから」と清水さん。開業前には岐阜の名店でも料理長を務め、地域に根付く味を学びました。

醬油、酒、みりんのタレで香ばしい味わいに。ふきのとうが春を感じさせる。貴重な樂焼は牡丹の意匠。寒牡丹に見立てた。 撮影=阿部 浩
子持ちのもろこは澄んだ水で育った、岐阜・中津川産。多くの生産者との信頼関係により最高の食材が届く。 撮影=阿部 浩

「岐阜にある日本料理店でも研鑽を積まれていますが、東海地方の食材の見極めや生かし方が見事」と言うのは平塚小夕里さん。料理に使う水はすべて岐阜、和良川の地下水というから、東海の恵みへのこだわりは尽きません。

店主の清水陽介さんと、女将のもえさん。夫婦で店をもり立て、全国から訪れる客を迎えている。 撮影=阿部 浩

女将のもえさんによる細やかな接客や、骨董好きも一目置く器選びなど、隅々まで息づく名古屋の粋。新たなる名店の物語から今後も目が離せません。

撮影=阿部 浩

DATA
おまかせ33,000円~(サ別、時期により異なる)※初回予約はOMAKASEより、毎月1日に若干名受付。
営業時間/18時~(一斉スタート)
定休日/日曜、祝日
tel.なし
Google mapで確認
愛知県名古屋市東区橦木町3-24

橦木町 しみず

平塚小夕里さん推薦

フィオン

“オーガニックな思考や、ジャンルにとらわれない料理が、名古屋では新鮮な印象です”───平塚小夕里さん

伊勢海老は海老チリ風のソースで新鮮な味わいに。アルコールはもちろん創意工夫を凝らしたノンアルコールペアリングもおすすめ。 撮影=前川明範

人気シェフの新たな挑戦に注目

2024年の年末に始まったその歴史はまだ1年と少し。しかし平塚小夕里さんは、「食通たちがすでに通い詰め、イノベーティブでオーガニックな思考がいま最注目の一軒」と話します。

それもそのはず。オーナーシェフの山内賢一郎さんは錦エリアで人気を博したフレンチ、「レスト ケイ ヤマウチ」で知られた人。食材へのさらなる探究からかつての店を閉め、名古屋駅にほど近い静かなエリアに新たな店を誕生させました。

「名古屋に根差したのは妻の実家があったから」という山内さんは宮崎県出身。外から見た名古屋のよさを知る視点が料理に生きている。 撮影=前川明範

「長年料理を続けるなかで素材との向き合い方に変化がありました。味はもちろん、育った環境やその工程も無視できないと思うように。納得のいく“本質のもの”だけを使いたいという考えが根幹です」

ベースにあるのはフレンチですが、その表現にジャンルの垣根はありません。和食や中華のエッセンスによって、厳選した食材がさらに洗練されていきます。

柔らかい鮑は春菊と、かぼちゃを使った味噌で仕立てた2種のソースで。 撮影=前川明範
北海道産の放牧牛は熟成して旨みが増している。 撮影=前川明範

「多くは東海地方の素材ですが、それに限らず全国から最良のものを仕入れています。列島のほぼ真ん中に位置するため、どこからでもいい状態で手に入れることができるのも、名古屋の恵まれた点ですから」

一面の窓から見える美しい庭を堪能しながらいただく料理は、忘れ難い旅の思い出になるはずです。

自然の美しさを表したような優美な空間も話題。窓の向こうには滝が流れる日本庭園が造られ、食事の時間をさらに特別なものに演出している。 撮影=前川明範

DATA
コース昼18,000円、夜25,000円(ともにサ別、ともにアルコールかノンアルコールのペアリングを別途オーダー必須)※初回予約はインスタグラムから
営業時間/12時~18時~(昼は不定期営業、詳細はインスタグラムより告知)
定休日/不定休
tel.なし
愛知県名古屋市西区那古野(詳細非公開、予約時に案内)

フィオン

星子莉奈さん推薦

Pes.(ぺス)

“どこか馴染みのある味わいながら、新たな発見のあるひと皿です”───星子莉奈さん

タコス。地元のブランド地鶏「岡崎おうはん」の親鶏と、「飛驒一本ねぎ」を薪で焼き、ペルーの薬味を添える。仕上げはパイナップルソースでまろやかに。 撮影=安田慎一

ペルーとイタリア、コースで味わうふたつの食文化

「権威あるレストランの格付け、『The World’s 50 Best Restaurants』では、毎年トップ10にペルー料理店が複数店ランクインします。ところが名古屋で味わえる店がない」と、2022年に「Pes.」をオープンした岡山雄磨さん。イタリア・ジェノバでの修業経験がありますが、イタリアとペルーを融合させた料理ではなく、コースの中でふたつの国の“本物”を味わってもらう構成は、岡山さんがこだわったことのひとつです。

セビーチェは鰆とサボテンを使用。鰆は三河湾産、サボテンは春日井市の特産品。 撮影=安田慎一
ジェノバの滞在先で習った家庭の味のジェノベーゼ。イタリアのラザニアを使う。 撮影=安田慎一

「常に新たな発見のあるひと皿が並び、まだ見ぬペルーが目に浮かびます」と星子莉奈さん。柑橘類の果汁と唐辛子のソースで和えるペルー料理のセビーチェや、とうもろこし粉の生地で作るタコスなど、エスニック料理の独特な風味が印象的ですが、「ペルー料理の最大の特徴は、その土地の食材を生かす究極の地産地消です。その点、私の地元、愛知県は食材の宝庫ですから、この思想を実践するのに最適です」と岡山さん。

オーナーシェフの岡山さん。その国の料理が生まれた文化や歴史的背景を理解したうえで、食材と向き合うことを大切にしている。 撮影=安田慎一

三河湾の魚介類や愛知県の野菜などのほとんどの食材は東海エリアから仕入れ、ペルーの薬味と合わせます。日本人向きに辛みや酸味を抑えるために、季節の果物を取り入れるのも岡山さん流。出身地・豊橋市のバジルをたっぷり使った、スペシャリテのジェノベーゼは、これを目的に常連客が訪れるというのも納得のひと皿です。

天井に傾斜を設け、キッチンに視線が集まるように設計された店内。岡山さんが語る料理の話もおもてなしのひとつ。 撮影=安田慎一

DATA
コース13,500円 ※予約はTable Checkより
営業時間/18時30分~(一斉スタート)
定休日/日・月曜
tel.052-433-1996
Google mapで確認
愛知県名古屋市西区名駅2-14-13 West Mビル1F

Pes.

平塚小夕里さん推薦

ガプリス

“自由な発想と多彩な食材で作る、美しい料理とデザートがおいしい”───平塚小夕里さん

パスタは「揖保乃糸」を手掛ける会社が作る麺を使用。細い麺は具材とよく絡む。カラスミ、墨いか、レモン汁でさっぱりといただく。 撮影=前川明範

新鮮な魚介が生きたイタリアン

閑静な住宅街の中にある木製のドアを開けると、中はグレイのスタイリッシュな空間。「料理が際立つ店内にしたくて」とシェフの上之薗遼さんは言います。

「市内のイタリアンの名店『ガッルーラ』や、都内での経験を積んだ上之薗さんの料理は、王道と独創性が共存しています」と平塚小夕里さん。

遼さんは愛知県大府市、宏奈さんは愛知県刈谷市の出身。名古屋のみならず、東海地方の素材を熟知している。 撮影=前川明範

9品程度のコースでは魚介を使った料理が目立ちますが、「名古屋は豊かな漁場が近いので、魚はいろいろなものが手に入ってどれも新鮮です。例えば今日の鰆は三重県答志島産。脂のりと鮮度のよさが自慢ですね」

遼さんは旬の素材を多用して主役のおいしさを引き出す。鰆にはケールや文旦、ソースは根セロリ。 撮影=前川明範
柑橘の一種「不知火(しらぬい)」はカモミールのシャーベット、パンナコッタとともに。宏奈さんは食後でも無理なく楽しめる、ほどよい甘さとボリュームを意識しているという。 撮影=前川明範

そして「ガプリス」がほかのイタリアンと一線を画す要因のひとつに、デザートにも重きを置いている点があります。妻でパティシエの宏奈さんが作るのは、季節のフルーツややハーブを生かした絶品のアシェットデセール。コースのうちの3品が、焼きたてのフィナンシェを含むデザートという構成は、スイーツ好きならずとも好評で、リピーターが多いのも納得です。

撮影=前川明範

DATA
コース15,000円(サ別) ※予約はOMAKASEより。ランチは4名からの貸し切りのみ、火・土曜営業。詳細は問い合わせを。
営業時間/18時~(一斉スタート)
定休日/日・水曜、不定休
tel.070-8990-9585
Google mapで確認
名古屋市千種区池下1-2-6 ジャルダン池下

ガプリス

林 美保子さん推薦

那古野 しば福や 名駅店

“外はカリッと中はふわっと焼かれた鰻が最高”───林 美保子さん

しば福丼4,100円。ひつまぶしと、蒲焼き、砂肝焼きが一緒になった多様な味わい方が叶う看板メニュー。最後はたっぷりの出汁とともに、お茶漬けで鰻をいただく。 撮影=高嶋克郎

店主考案の個性豊かな鰻料理

名古屋駅から徒歩7分とアクセスもよく、豊富な品が揃う鰻料理専門店。「鰻の養殖業を営む実家で生まれ育ち、老舗 『炭焼 うな富士』で10年修業を積んだ店主が、2024年4月に本店と趣向を変えた待望の2号店、『那古野 しば福や 名駅店』を開業しました。外はカリッと中はふわっと焼き上げられた鰻は絶品です」と林美保子さんもいち押しです。

鰻の串揚げ1,000円。カラッと揚がり食感もよい。 撮影=高嶋克郎
鰻のたたきポン酢4,500円。白焼きに大根おろしとねぎを合わせ、ポン酢でいただくさっぱりした一品料理。大ぶりの「葵うなぎ」は複数人で取り分けるのに最適。 撮影=高嶋克郎

なかでも、ひつまぶしと、蒲焼き、砂肝焼きが一体となったしば福丼は自慢の一品。使用する鰻は長年にわたる研究の末に養殖に成功した雌鰻、愛知県水産試験場の「葵うなぎ」と浜名湖漁業組合の「でしこ鰻」です。雄に比べると皮が薄いため歯切れがよく、サイズもひと回り大きいので食べ応え抜群。またふんわりとした厚い身にはしっかり脂がのりジューシー。約1300℃の炭火で焼き上げ、仕上げに秘伝のタレで味をつけます。

店主の柴田哲滝さんはうちわで火加減を巧みに調整して焼き上げていく。 撮影=高嶋克郎

さらに干物や天ぷら、燻製、予約必須の煮つけなど、店主考案の鰻の創作料理はメインを待つ間に楽しむのがおすすめ。

2階にはゆったりとした個室もある。 撮影=高嶋克郎

DATA
※2月中に価格変更あり
営業時間/11時〜14時 17時30分〜20時30分(ともにL.O.)
定休日/水・第1・3・5火曜
tel.052-414-4829
Google mapで確認
愛知県名古屋市中村区名駅3-23-1 名駅中京ビル2~3F

那古野 しば福や 名駅店

平塚小夕里さん推薦

restaurant.m(レストランエム)

“美食好きが通い詰めている注目の一軒です”───平塚小夕里さん

上品な甘みが特徴の車海老を、存在感のあるキャビアとグリーンピースのシンプルなソースで味わう軽やかな前菜。 撮影=高嶋克郎

魚介が主役の爽やかなフレンチ

扉を開ければ、優しい光と木の温もりに包まれた穏やかな空間が広がります。平塚小夕里さんは、「ここ数年の口コミ大賞と言ってもいいほど、美食好きが通い詰めている一軒。名古屋で生まれ育ち、老舗フランス料理店『レストラン・シェ・コーべ』で長年料理長を務めた小林誠シェフが作る、名古屋ならではのフレンチです」と太鼓判を押します。

2023年に独立開業し、自身の店を構えた小林シェフ。 撮影=高嶋克郎

三河湾や東海3県から新鮮な食材が手に入るこの場所に魅せられたシェフが考案する地域性溢れるコースには、魚介をメインとした品々が並びます。三河湾で獲れた車海老にキャビアやハーブ、グリーンピースのソースを添えた前菜や、師崎産のアズキハタに新玉ねぎやハーブのオイルを合わせたメイン料理など、爽やかな味わいに驚かされます。

師崎港に揚がる新鮮なアズキハタに、柚子や黄身酢などを添えた。 撮影=高嶋克郎

また一皿一皿を印象づけるのが季節のソース。ベニエ生地で揚げた蛤には、春に旬を迎えるふきのとうのタルタルソースを。心地よい店内とモダンな料理を求め、何度でも足を運びたくなります。

蛤が主役のひと品。下に敷いたのは、ピクルスとケッパーを加えた酸味の効いたトマトソース。上がほろ苦いふきのとうのタルタルソース。 撮影=高嶋克郎

DATA
コース昼7,800円~、夜17,500円~
営業時間/11時30分~14時30分 18時~22時
定休日/水・第2・4火曜
tel.052-228-3231
Google mapで確認
愛知県名古屋市中区栄2-15-16 コンフォート栄2F

restaurant.m

撮影=阿部 浩、前川明範、安田慎一、安良城伸、高嶋克郎 取材・文=真下智子 編集・文=八木あきほ、沼田凜々子(婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年3月号より

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