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北村匠海「愛は世界共通だと思う」 ベルリンで語った“愛の映画”『しびれ』への誇りと覚悟

  • 2026.2.18
北村匠海「愛は世界共通だと思う」 ベルリンで語った“愛の映画”『しびれ』への誇りと覚悟
(C)2025「しびれ」製作委員会

孤独な少年の20年を描く物語に世界が喝采、北村の静かな熱が観客の心を揺らす

北村匠海が主演を務め、宮沢りえと永瀬正敏が共演する内山拓也監督の最新作『しびれ』が、第76回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に出品。現地からの最速レポートとスチールが到着した。

新藤兼人賞をはじめ数々の新人賞を席巻した『佐々木、イン、マイマイン』(20年)、続く『若き見知らぬ者たち』(24年)と、“現実に抗いながらも何かを掴もうとする若者の青春”を見つめ続けてきた内山拓也監督。故郷・新潟を舞台に、居場所とアイデンティティを模索する少年の物語を自伝的に描く本作は、孤独の中で自分の居場所を探し続けた少年が、やがて息をのむほど大きな愛を知るまでの20年を綴る。

先月11月に開催された第26回東京フィルメックスでは、日本作品で唯一、コンペティション部門に選出。マティアス・ピニェイロ監督ら審査員から「静寂と変化、柔らかと硬さなどが内包され、バランス感覚に満ちた映画である」と評され、審査員特別賞を受賞した。

今回、現在開催中の第76回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に本作が正式出品され、主演の北村匠海と内山拓也監督が参加した。

ベルリン国際映画祭は、ドイツの首都ベルリンで開催される国際映画製作者連盟公認の国際映画祭。カンヌ国際映画祭、ヴェネチア国際映画祭と並び、世界三大映画祭のひとつに数えられ、歴史と権威を併せ持つ。世界的大都市で開催されることから注目度も高く、圧倒的な存在感を示し続けている。

特徴として社会派作品が集まる傾向があり、受賞作品の多くは世界的な興行で成功を収めている。これまでに400本以上の日本映画が上映されており、黒澤明監督、宮崎駿監督、濱口竜介監督など、数多くの監督や俳優が受賞してきた。

上映前の取材に応じた北村は、今回が初参加となるベルリン国際映画祭について「初参加となったきっかけの作品が、この『しびれ』という映画で良かった。僕ら演者は映画祭を目指して演技をするわけではないですが、みんなでものすごい愛情を注いで作った映画が、国内だけではなく、国外で評価していただいたこと、そして撮影の時も貴重な時間を過ごしましたが、その時間がさらに広がっているのが嬉しいです」と感慨を語り、「ベルリンの街全体が文化を愛している印象。そんな中で行われている映画祭なので、僕らが愛した映画を僕ら以上に愛してくれているんじゃないかと感じています」とコメントした。

本作が世界にどう届いて欲しいかという質問については、「愛というものは世界共通。世の中には、(主人公の)大地のように傷ついたりしないと誰かを愛せない、真正面から人と向き合えない人生を歩んできた人もいるかもしれない。この映画を通して、大地を目撃していただいて、自分の中に芽生えている愛とは何か、人生とは何かを少しでも感じてもらえる、ドキュメンタリー性を孕んだ映画になっていると思う」と、ベルリンでのお披露目を前に期待を寄せた。

そして本作の公式上映が現地時間2月15日に行われ、上映前のフォトコールでは北村が現地ファンのサインにも応じる一幕も見られた。迎えた公式上映では、エンドロールが流れると満席の会場から大きな拍手が沸き起こり、ベルリン国際映画祭を沸かせた。

万感の表情で上映後のQ&Aに登壇した監督と北村。内山監督は、演出で最も意識したのは“リアリズムとは何か?”という点だと明かし、「生きている現実と映画のリアルというものは必ずしもイコールではありません。(大地が)さまざまな経験をしていくというリアリティをどう積み上げていくかという部分で、僕は“感情”ではなくて“感覚”を大事にしました。それが今回のタイトル『しびれ』(NUMB)にも繋がっています」と製作経緯を述懐した。

それらの感覚を大事にするために、「走る」「ものを取る」といった動きを俳優とともに入念にリハーサルしたことを振り返り、「そこからこぼれ落ちるところに感情が追いついてくるのではないかと思っていました」と語った。

本作では、幼少期に暴君のような父親の影響で言葉を発することができない主人公・大地というキャラクターを、北村匠海、榎本司、加藤庵次、穐本陽月という異なる世代の俳優が演じている。青年期を演じ、壇上で挨拶を求められた北村は第一声で「みなさん、僕の声を聞くのは初めてかと思いますが」とジョークを飛ばし、会場は笑い声と拍手に包まれた。

「僕はこの映画にある膨大な余白が、日本映画の良さだと思っています。大地は声を出さない、見ることしかできないという役柄で、僕にとってはその余白をどう泳ぐかが課題でした。何を感じ、何を手に取って、どこを歩くのか、日々撮影するなかで監督と一緒に掴んでいった感覚があります」と、監督に絶大な信頼を寄せる北村。

続けて「大地は僕1人で成り立つキャラクターではありませんでした。他の3人とはスケジュールの都合で会えなかったのですが、僕が撮影現場に入ったその日に、撮影クルー全員がそれまで見てきた大地のことを愛おしそうに話していて…。これだけ全員が大地を見守ってきて、支えてきて、歩いてきた現場だったからこそ、彼らがどんな演技をしていたかを話さずとも、僕には3人の歩んできた時間がわかったんです」と振り返った。

上映後、現地の観客からは「北村さんの、言葉を発さないことによって、逆に激しさを増していく演技に魅了された」「監督の挨拶には、演出に対しての深い思慮を感じた」など、さまざまな反応が寄せられた。

ベルリン国際映画祭ディレクターでパノラマ部門責任者のマイケル・シュトゥッツは、「内山拓也監督による繊細な演出のもと、北村匠海は困難に耐えながら生きる人物を驚くほど豊かなニュアンスで演じ、その存在が作品の感情的な核を形成している」「極めて感受性の高い映像表現と抑制の効いた演出が、演技と風景のあいだに静かな対話を生み出す」と、その選出理由についてコメントを寄せた。

『しびれ』は2026年9月25日より全国公開。

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