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もっと知りたい織りの着物の魅力| 第74回「上品會」に寄せて

  • 2026.2.14
写真提供=高島屋

高島屋では毎年1月を皮切りに春にかけて、呉服の新作発表会「上品會(じょうぼんかい)」を開催しております。 昨年のコラムでは上品會の新作を例に挙げ、染めものを中心に「いまの着物の流行」をお話ししましたが、今回は現在開催中の第74回「上品會」の作品を例に、多様な種類のある「織りの着物」の魅力についてご紹介いたします。

「織りの着物」と「紬」の違い

よくお客様から「織りの着物と紬は同じですか?」というご質問をいただきます。 正確に区分すると、「織りの着物」という大きなくくりのなかに「紬」があります。

織りの着物とは、糸を先に染めておいて、経緯(たてよこ)の織り合わせで柄を表現する「先染めの着物」のことを指し、このうち紬糸を使っているものが紬の着物になります。

紬糸とは、真綿や繭から紡いだ糸のことです。機械を用いて製糸された均一な「生糸」とは異なり、節(ふし)や太い細いがある不均質な風合いをもち、その紬糸で織られた紬は産地や作り手ならではの味わいが生まれます。

日本を代表する紬「本場結城紬」

紬は現在も全国各地で生産されていますが、その代表的なもののひとつが「本場結城紬」です。 真綿から紡いだ繊細な糸を先染めにし、丹念に織り上げられていきます。そのデザインはおもに絣(かすり)や縞(しま)で構成されます。

絣とは、 経糸や緯糸の一部をあらかじめ白く残した(または染めた)小さな柄を、織る際に経緯で合わせていくことで模様を作る高度な技法です。

<strong>●本場結城紬「四拍子」</strong>ベージュとグレーを半身に取り、絣・縞・ぼかし・横縞を合わせてデザインし、淡い地色で織り上げています。着尺/<a href="https://www.takashimaya.co.jp/" target="_blank">高島屋</a> 写真提供=高島屋

上の画像では左側の細かい柄が、絣で制作された部分になります。

また、結城紬には、「本場結城紬縮織」という品もあります。強い撚(よ)りをかけた緯糸を織り込むことで、生地に「シボ」と呼ばれる凹凸感が生まれます。比較的しっかりとしたハリがあるため、裏地を付けて仕立てる袷(あわせ)だけでなく、裏地を付けない軽やかな単衣(ひとえ)にも適しています。

●<strong>本場結城紬縮織 「ホリゾンブルー」</strong>朝日が水平線から昇るとき、刻一刻と変わっていく神秘的なエネルギーや眺めの美しさを、経(たて)の絣糸で横段ぼかしを表した、新しい試みの作品です。着尺/<a href="https://www.takashimaya.co.jp/" target="_blank" rel="nofollow">高島屋</a> 写真提供=高島屋

草木染めがもたらす唯一無二の個性

素朴な風合いをもつ紬のなかには、染料に草木成分を用いた染料を使用するものもあります。 明治以降は化学染料が主流となりましたが、昔ながらの技法により手間暇をかけて植物染めにされた織物はやわらかで優しい雰囲気を醸し、素朴な糸の風合いと調和して着物の魅力を一層引き立てます。

紬を愉しむシーン

一般的に紬の着物はカジュアルな装いとされ、気軽なお出掛けなど、おしゃれを楽しむシーンに最適です。ただし、作家が手がける作品のなかには、着姿全体で一つの模様をデザインし、柄合わせがされた「絵羽(えば)」形式のものもあります。

こうした絵羽の着物は、素材が紬糸であっても全体に統一感が生まれますので、カジュアル一辺倒ではなく格式張らない会やちょっとしたお集まりなどでの着用もご提案しています。その場合には、金銀糸を使わない控えめな袋帯とのコーディネートがおすすめです。

●紬の着物「蓮始開」 少暑次候の季節に、暗闇の雨の中で静かに咲く桃色の蓮の花をイメージして織り上げられた櫻井弥生氏の作品です。着物/<a href="https://www.takashimaya.co.jp/" target="_blank" rel="nofollow">高島屋</a> 写真提供=高島屋

沖縄の風土から生まれた織物・自然布

「織り」のバリエーションは絹に留まりません。沖縄の風土が育んだ二つの名品──芭蕉布と宮古上布をご紹介します。

芭蕉布は、文字通り糸芭蕉という植物を糸の原料にしています。沖縄県北部の喜如嘉(きじょか)が主産地で、大きく育った芭蕉の皮をはぎ、茎の繊維を裂いて糸づくりを行い、これを染色して織物に仕上げたものです。

宮古上布の素材は麻です。上布とは古来、上等な布をあらわした言葉とされ、他にも越後上布、能登上布、八重山上布などの麻織物の呼称にもなっています。

●<strong>宮古上布「ナンミンダマ」</strong> 宮古島の自然の素材(苧麻、染料)を使用して織り上げた作品です。琉球藍と槐(えんじゅ)の黄色を染め重ねた糸によって、緑がかった深みのある藍色を表しています。着尺/<a href="https://www.takashimaya.co.jp/" target="_blank" rel="nofollow">高島屋</a><a href="https://www.takashimaya.co.jp/" target="_blank"></a> 写真提供=高島屋
●<strong>喜如嘉の芭蕉布「藍コーザーソテツの葉」 </strong>糸芭蕉という植物の繊維から糸をつくる芭蕉布。たてとよこの絣糸でソテツの葉を表した作品です。着尺/<a href="https://www.takashimaya.co.jp/" target="_blank" rel="nofollow">高島屋</a><a href="https://www.takashimaya.co.jp/" target="_blank"></a> 写真提供=高島屋

宮古上布は、苧麻と呼ばれる麻から、「手績み(てうみ)」の技法で糸作りを行っています。ここに紹介する芭蕉や麻をはじめ、植物から繊維を取り出し、柔らかくしてから長い糸にしていく作業は、非常に手間と根気が必要なもので、1反の生産期間のうち糸づくりに多くの時間が費やされています。

いずれも7月から8月までの盛夏の着物とされていますが、昨今の猛暑の影響により今後は着用期間も前後に長くなっていくのかもしれません。

織りの着物は、ご自身の感性で自由に着こなせる楽しみがあります。 お選びになる際は、ぜひ「糸の成り立ち」や「染料の背景」をスタッフに尋ねてみてください。その布が持つ物語を実感することで、着物への愛着がいっそう深まるはずです。

コラムで紹介した作品は、巡回販売中の「第74回 上品會」にてご覧いただけます。 詳細は、高島屋各店(日本橋・横浜・新宿・大阪・京都・名古屋)の呉服売場までお問い合わせください。

※画像の品は現品限りのため、売約済の場合にはご容赦ください。

※上品會のホームページでは、高精細撮影による作品画像をご覧いただけます。

髙島屋呉服部が答えます

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