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【変わる!新潟の酒】異業種からスペシャリスト集結!米の個性を生かした端正な味わいを目指す「葵酒造」

  • 2026.2.13

2026年日本酒dancyu「出会えてよかった!心ふるえる酒」特集では、“淡麗辛口”の看板のもと、全国一の蔵数を誇り、時代を築いてきた新潟に注目。 この銘醸地で今、若き作り手たちが自由闊達に才能を咲かせている。今回は、老舗蔵を事業承継した女性蔵元と若き杜氏の新チームで、エレガントでモダンな酒を醸す「葵酒造」をご紹介します。

【変わる!新潟の酒】異業種からスペシャリスト集結!米の個性を生かした端正な味わいを目指す「葵酒造」

■桃太郎のような少数精鋭が強み

「どうしても日本酒の仕事がしたい!」。その一心で酒蔵を買った女性がいる。新潟県長岡市で160年の歴史を刻んできた旧高橋酒造を2024年秋に承継し、2025年に「葵酒造」として再始動させた、三重県出身の青木里沙さんだ。シンガポールの金融街で働きながら、ふと立ち止まる。

ワインも日本酒も好き。いつもお酒のことばかり考えている。それならいっそ仕事にしてしまおう。かの地で、日本人としてのアイデンティティーも再認識した。ならば迷わず日本酒だ。理想の「メゾン」を築くため交渉に交渉を重ね、たどり着いたのが長岡の赤煉瓦蔵だった。

集合写真
集合写真

「まるで桃太郎みたいですよね」と笑う青木さんのもとに馳せ参じたのは、30代のプロフェッショナルたち。山形の酒蔵の杜氏だった阿部龍弥さん、大手広告代理店出身の土居将之さん、そして米農家で実弟の青木魁人さん。経営、醸造、表現、米作りがフラットに混ざり合い、価値観を素早く共有して形にできる。それがこの蔵の強みだ。

目線をしっかり合わせながら4人が目指すのは、低精白米で造るエレガントな酒。「背筋がピンと伸びる、凛としたお酒。そこに軽やかさと奥行きを共存させたい」と口を揃える。米をあまり磨かないのは、自ら作った米への愛しさからだ。

幸い、地元の人、近隣の蔵、自治体とみんなが歓迎してくれた。「銘醸地だからこその懐の深さがある」。新生の蔵は、長岡という豊かな土壌に、しっかりと根を張り始めている。

阿部さん
阿部さん

■酒を醸すことは、人を醸すこと

新潟に興った三者三様の蔵の歩み。そこから見えてきたのは、日本最多の90蔵を擁する銘醸地が培ってきた揺るぎない地盤だ。「万石蔵がある新潟には強固な土台がある。だからこそ、僕のような小さい蔵が自由に動ける」(越後伝衛門・加藤さん)。さらに、「飲食店も酒屋も世代交代が進み、ともに新潟の酒シーンを盛り上げるうねりが加速している」(阿部酒造・阿部さん)という言葉通り、確実に瑞々しい感性の連鎖が生まれている。異業種出身者の蔵が持ち込む独自の価値観が風となり、新しい土を運び、新潟の土壌をさらに豊かにしていく。酒を醸すことは、人を醸すこと。挑戦者を拒まず、次代を担う表現者たちを温かく包み込む新潟は、日本酒の未来を育む、世界一大きな揺りかごなのだ。

日本酒3本
日本酒3本

文:浅井直子 撮影:伊藤菜々子

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