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NHK夜ドラで、異例の“シリーズ3”まで放送「製作陣、天才すぎ」「体感3分」さらに“カオス”な異色ドラマ

  • 2026.3.25

NHK夜ドラ『事件は、その周りで起きている』シリーズ3が放送された。小芝風花主演の異色刑事コメディーは、“事件を解決しない刑事ドラマ”という大胆なコンセプトで人気を集めてきた作品。今シーズンも、張り込み部屋探しや足跡騒動など、事件の“周辺”で起きる瑣末な騒動が次々と巻き起こり、SNS上では「毎晩、体感3分だった」「製作陣、天才すぎ」「シリーズ3、パワーアップしてる」といった声が続出。さらに向井理のゲスト出演も話題を呼んだ。今作の魅力を振り返りながら、真野(小芝風花)と宇田川(笠松将)の絶妙なバディ関係にも注目してみたい。

※以下本文には放送内容が含まれます。

事件は起きるが、解決しない

刑事ドラマのお決まりを根底から裏切っていく夜ドラ『事件は、その周りで起きている』。そのタイトル通り、本作で描かれるのは事件そのものではない。事件の周囲で起きる、ささいなトラブルだ。
たとえば、張り込みのための部屋探し。真野と宇田川が物件を見に行くものの、互いのこだわりが強すぎてなかなか決まらない。最終的には同じ部屋にいながら“家庭内別居”状態に陥るという、捜査とはまったく関係のない展開に発展する。

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夜ドラ『事件は、その周りで起きている』シリーズ3(C)NHK

別の回では、科捜研も見落としていた“決定的な足跡”が見つかるが、それは上司の谷崎(北村有起哉)がうっかり残してしまったものだった……というオチが待っている。
刑事ドラマとして見れば、本来なら本筋にならないような蛇足なエピソードばかり。しかし、その“どうでもいい騒動”こそが、この作品の最大の魅力なのだ。

制作陣は、内村光良率いるコント番組『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』のスタッフ。脚本の倉持裕と演出の西川毅が作り出す会話劇は、テンポが非常に速く、まるで舞台コントを見ているかのような密度の高さがある。
そのためSNS上では「毎晩、体感3分だった」という声が上がるほど。15分という短い放送時間に、笑いと人間ドラマがぎゅっと詰め込まれている。

向井理のゲスト回が神回

シリーズ3では、これまでの持ち味を保ちながら、さらにカオスな展開が増えていた。

なかでも話題になったのが第3話。劇中ドラマ『刑事二階堂』の主演俳優・椎名耀司(向井理)が、役作りのために署を訪問する。普段からドラマ好きの署員たちは大興奮。椎名の決めゼリフ「グッジョブ」を生で聞こうと、あの手この手で誘導しようとする。しかし計画はことごとく空回りし、署内は妙な空気に包まれていく。

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夜ドラ『事件は、その周りで起きている』シリーズ3(C)NHK

シリアスな役柄も多いイメージの向井が、このシュールな世界観に自然に溶け込み、むしろ振り回されていく様子は見どころ十分。シリーズ3のなかでも屈指の“神回”と言われる理由も納得だ。
さらに最終話では、被疑者の潜伏先・ヒラコ山を巡って、山梨か長野かという論争が勃発。真野が手柄を焦って宇田川を連れて山梨へ向かうが、嵐に巻き込まれるというパニック展開に。

事件の核心は相変わらず描かれない。それでも、刑事たちの人間臭いやり取りだけで物語が成立してしまうところが、この作品の不思議な魅力だ。

小芝風花と笠松将、噛み合わない名バディ

このシリーズを支えているのが、小芝風花と笠松将のコンビである。

小芝が演じる真野一花は、正義感が強く負けず嫌い。何でも自分で解決しようとするが、その熱量が空回りすることも多い。一方、笠松将演じる宇田川和人は、超合理主義者。無駄を極端に嫌い、常に効率を優先する人物だ。
このふたりは、まさに“水と油”。真野が勢いで突き進めば、宇田川は冷ややかな視線でそれを論破する。しかし、その噛み合わない会話こそが、このドラマの笑いの核となっている。

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夜ドラ『事件は、その周りで起きている』シリーズ3(C)NHK

笠松将は『TOKYO VICE』や『ガンニバル』など、重厚な作品での演技でも知られる俳優だ。クライムサスペンスでは冷徹な存在感を放つ一方、本作では絶妙な間や表情でコメディセンスを発揮している。強面なビジュアルと、シュールな芝居のギャップも魅力の一つだろう。

合理性を追求するあまり、逆に状況をややこしくしてしまう宇田川。本人は自分が一番まともだと思っているが、実は署内で一番の変わり者かもしれない……そんな多層的なキャラクターを、笠松は見事に演じている。

事件の裏側で、刑事たちは昼ごはんのことを考えたり、言い訳をしたり、ささいなことで揉めたりする。そんな姿を見ていると、どこか親近感すら覚える。シリーズ3では、その世界観がさらに洗練されていた。短い時間に、笑いと会話劇のおもしろさを凝縮した完成度の高さは、まさに「製作陣、天才すぎ」と言われるのも納得だ。

刑事ドラマなのに事件を解決しない。そんな一見奇妙なコンセプトが、ここまで成立してしまうのは、この作品ならではの魅力と言えるだろう。


NHK 夜ドラ『事件は、その周りで起きている』シリーズ3
NHK ONE(新NHKプラス)配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_