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NHK夜ドラ“再放送なのに”大注目「良すぎないか?」「なんでも出来る」大河女優の“圧倒的な才能”に絶賛の声

  • 2026.3.3

刑事ドラマといえば、鮮やかな推理と謎解き劇が定番。しかし、NHK夜ドラ『事件は、その周りで起きている』は、そんな常識を爽快に裏切ってみせる。事件なんて一切解決しない。その周辺で起きる些細なトラブルに、全力投球する刑事たちの様子を描く。主演・小芝風花が演じる真野一花は、真面目ゆえに空回りする“コメディの新境地”を切り拓いた。3月のシリーズ3放送を前に、再放送で振り返るべき本作の魅力にあらためて触れたい。

※以下本文には放送内容が含まれます。

事件よりも熱い、その“周辺”

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夜ドラ『事件は、その周りで起きている』シリーズ1(C)NHK

刑事ドラマにおいて、事件が解決しないまま幕を閉じるなんてありえない。そんななかで『事件は、その周りで起きている』は、よくある“お約束展開”を根底から鮮やかに覆すシチュエーションコメディである。
舞台は地方の小さな警察署・新月署。物語は毎話、「刑事にとって頭が痛いのは、事件の周りで起きる事件である」という一文から幕を開ける。

制作を手掛けるのは、内村光良率いるコント番組『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』のスタッフ陣。脚本の倉持裕、演出の西川毅という、笑いの間を知り尽くした布陣が15分という凝縮された時間を使って描き出すのは、マクロな大事件ではない。重箱の隅をつつくような“ミクロな騒動”である。

本作の魅力を支えるもうひとつの柱は、何と言っても主演・小芝風花の圧倒的なコメディエンヌとしての才能だろう。SNS上ではシリーズ1の放送時から「コメディも合ってる」「小芝風花良すぎないか?」「なんでも出来る」と絶賛の声が相次いだ。
近年の彼女の代表作を振り返ると、その演技の振り幅、引き出しの多彩さに驚かされる。たとえば『波よ聞いてくれ』で演じた鼓田ミナレは、金髪でやさぐれ、マシンガントークで周囲を圧倒する“動”のキャラクターだった。

一方、本作の真野一花は、正義感が強く負けず嫌い、何事も自力で解決しようと奮闘する“静”の生真面目さを持っている。
しかし、その生真面目さこそが笑いを生む装置として機能している。小芝は、真野の頑固さや不器用さを、オーバーな身振りではなく、絶妙な間で表現する。どんなに奇抜なシチュエーションでも、彼女が演じることで絶妙なリアリティが宿る。
これはやはり、『妖怪シェアハウス』などで見せた巻き込まれ型ヒロインとしての素養と、近年『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』などの時代劇で見せる繊細な表現力が、高い次元で融合した結果と言えるだろう。

シュールな美学は、いなり寿司と捜査メモに宿る?

シリーズ1において、視聴者の心を掴んだ象徴的なシーンは多数ある。たとえば、真野のバディである宇多川(笠松将)とのやり取りだ。
効率重視の合理主義者・宇多川が、大好物のいなり寿司がいかに効率的な食べ物であるかを延々と力説する横で、真野が浮かべる何とも言えない表情。このふたりの反発しあう性質……というよりは、噛み合わないまま不思議と並走してしまう温度差が、密室劇に独特の緊張感と笑いをもたらしている。

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夜ドラ『事件は、その周りで起きている』シリーズ1(C)NHK

また、真野のキャラクターを決定づけた“自筆の捜査メモ”にまつわるエピソードもある。事件のために必死に取ったメモが、自分でもまったく読めない。普通ならそこで諦めるか書き直すところだが、真野はそれを科捜研に持ち込み、筆跡分析を依頼するという荒療治に出る。

事件解決のためと大義を掲げながら、やっていることは究極の無駄。その本末転倒な熱量こそが、本作の真骨頂なのだ。
警察署という閉鎖空間で繰り広げられる、セリフ量の洪水。これらは一見すると刑事ごっこのようだが、小芝風花という実力派が中心に座ることで、単なるコントを超えた……いわば、人間の愛おしき滑稽さを描くようなドラマへと昇華されている。

さらなるカオスへの期待

そして待望の新作、シリーズ3が3月9日(月)からスタートする。2022年のシリーズ1から3年。さらに演技の深みを増した小芝が、ふたたびあの“頑固で面倒くさい真野一花”をどう演じるのか。

今作ではスペシャルゲストとして、向井理の参戦も決定。新月署の面々が熱狂する劇中ドラマ「刑事・二階堂」の主演俳優・椎名耀司として登場するという。フィクションのなかの“かっこいい刑事”が、現実の“事件を解決しない刑事”たちの世界に迷い込むメタ的な展開は、さらなるコントライクな混乱と笑いを呼ぶに違いない。

現在、新作に向けて過去シリーズの一挙再放送中(2月23日〜シリーズ1、3月2日〜シリーズ2)でもある。1話15分という軽やかさでありながら、見終わったあとには、自分の周りの些細な困りごとさえも愛おしく感じてしまう不思議な魅力。小芝のコメディセンスが凝縮された本シリーズを、ぜひ楽しみたい。


NHK 夜ドラ『事件は、その周りで起きている』シリーズ1
NHK ONE(新NHKプラス)配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_