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展開の予想はしていても上回ってきた“巧みな脚本” 続きが見たくなる“引きの強さ”を持った【日曜劇場】

  • 2026.3.2

面白い連続ドラマには、続きが見たくなる“引き”の強さがあるものだが、『リブート』はまさにそういう作品だ。

※以下本文には放送内容が含まれます。

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日曜劇場『リブート』第4話より(C)TBS

日曜劇場(TBS系日曜夜9時枠)で放送されている本作は、妻の敵を討つため、整形して別人になりすます男の物語。
パティシエとして『ハヤセ洋菓子店』を営む早瀬陸(松山ケンイチ)は2年半前に失踪した妻の夏海(山口紗弥加)が、遺体で発見されたと警視庁捜査一課の刑事・儀堂歩(鈴木亮平)から知らされる。
その後、警察に押収された夏海のパソコンから見つかった日記に、早瀬との間に金銭トラブルを抱えて、DVを受けていたという記述が見つかったことと、早瀬の車から夏海の血痕が見つかったことで、早瀬に逮捕状が出る。

だが、儀堂は「あなたは罠にかけられている」と言い「私と手を組んで夏海さんの敵を討ちませんか?」と提案。
警察の追跡を逃れて早瀬は儀堂と合流しようとする。だが、待ち合わせの場所に向かうと、儀堂は何者かに刺されて倒れていた。
亡くなる直前に儀堂は、自分のマンションに行けと伝える。
自分を罠にかけようとしている真犯人の証拠となるファイルが儀堂の部屋にあると思った早瀬は、儀堂のマンションに向かうが、そこにいたのは夏海の元同僚の公認会計士・幸後一香(戸田恵梨香)だった。

夏海と同じ会社『ゴーシックスコーポレーション』で働いている一香は、会社の代表・合六亘(北村有起哉)が、表向きはクリーンな実業家で通っているが、裏では違法な手段で儲けたお金をマネーロンダリング(資金洗浄)する裏社会の金融機関(ダークバンカー)を取り仕切っており、その資金管理を一香と夏海もおこなっていたと語る。

そして儀堂も合六と関わっていたと伝え、早瀬をハメようとしている敵は巨大な存在だと言う。
警察内にも敵がいるため、出頭すれば、夏海と儀堂の命を奪った罪で早瀬は逮捕される。だから、警察から逃れ、真犯人を見つけ出すために、儀堂の顔に変えてリブート(再起動)して生きるしかないと、一香は早瀬を説得する。

一人二役を演じる鈴木亮平の演技が持つ説得力

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日曜劇場『リブート』第4話より(C)TBS

第1話で、早瀬は儀堂の顔に整形して生きていくことを決意するのだが、早瀬を演じる松山ケンイチと儀堂を演じる鈴木亮平は、顔も声も体格も違うため、なりすますのは難しいのではないかと思った。

だが本作は、早瀬が儀堂に変わっていく過程を細かく描くことで、別人になりすまして生きる物語に説得力を与えている。
まず一香は儀堂の遺体から指紋の型を取る。次にフェイク画像と加工した音声で儀堂になりすました一香がリモート通話で儀堂の上司に連絡し、鬱病を理由に半年間の長期休暇を取る。
その後、早瀬が医師から説明を受け、整形手術を少しずつ進めていく様子が描かれる。
同時進行で早瀬は警察の知識や儀堂の人間関係を頭に叩き込み、儀堂の喋り方や筆跡を似せる練習を繰り返す。
そして警察官としての格闘術や銃の扱いを学びながら、体を鍛える様子も挟み込まれていく。

何より一番の説得力を与えているのが、儀堂と(儀堂にリブートした)早瀬の一人二役を演じる鈴木亮平の演技である。
鈴木亮平は作品ごとに肉体改造をして、役になりきる演技へのアプローチが高く評価されている。その意味で、早瀬が儀堂にリブートしていく姿は、鈴木亮平の演技のために肉体改造をする姿と重なるものを感じた。
もちろん心情を露わにする憂いのある芝居も見事で、リブート後の早瀬を演じる鈴木亮平は、先程まで松山ケンイチが演じていた優しい早瀬の芝居を引き継いだ芝居をしている。
その結果、本物の儀堂と、元早瀬の儀堂の違いを見事に演じ分けており、松山ケンイチの外見が鈴木亮平に変わるという荒唐無稽な状況にリアリティを生み出すことに成功していた。

緊迫感のある展開が続く黒岩勉の巧みな脚本

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日曜劇場『リブート』第4話より(C)TBS

そして物語は、常に緊迫感のある展開が続き、目が離せない。

脚本を担当する黒岩勉は、窮地に追い込まれた主人公が、制限時間の中で考え抜いた末に活路を見出していく様子をエンタメとして見せる作劇を得意としている。
今回の『リブート』でも、儀堂になりすました早瀬が、『ゴーシックスコーポレーション』代表の合六亘と対面した際に、10億円を横領した犯人だと疑われ、24時間以内に真犯人を見つけ出すか犯人候補を示さないと「あなたは終わりです」と脅迫され、真犯人を探すことになる。
窮地に追い込まれた早瀬が一香と協力して活路を見出していく様子は、サスペンスドラマとしてとても見応えがあった。

一方、儀堂に顔を変えた早瀬が、正体を隠して息子と母親に会いに行き、お店で出す洋菓子のレシピについて少しずつアドバイスする姿は親子のドラマとして泣かせる展開となっている。
裏社会の犯罪の描き方などハードで残酷なシーンが本作には多いが、家族の愛情を描くというヒューマンドラマの要素もしっかりと存在する。
犯罪劇と人情劇を両立させる絶妙なバランス感覚があるからこそ、黒岩はエンタメ作家として高い評価を受けているのだ。

そして何より驚いたのが、本物の儀堂が実は生きていたことが判明する展開だ。
第4話では、本物の儀堂がいつ登場するのかとハラハラしながら観ていたのだが、一香と行動していた早瀬が、実は早瀬になりすましていた“本物の儀堂”だったことが判明する場面があり、とても驚かされた。
鈴木亮平が一人二役を演じているため、“本物の儀堂”が出てくる展開も想像はしていた。
だが、登場するとしても終盤だろうと思っていたため、序盤で出てきたのは予想外だった。
“本物の儀堂”の登場を筆頭に、『リブート』は各キャラクターを取り巻く状況が二転三転し、何が本当で何が嘘かわからない混乱した状況が序盤から続いている。
そのためSNS上での考察も盛り上がっており、早瀬の他にもリブートをしている人物がいるのではないかとも噂されている。 予想外の出来事が続き、先の展開が全く読めない。

だからこそ続きが気になってしまうというのが本作最大の魅力だろう。
複雑怪奇な『リブート』の物語に、黒岩勉がどのように決着をつけるのか楽しみである。


TBS系 日曜劇場『リブート』 毎週日曜よる9時

ライター:成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS)がある。