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2026年の立春は2月4日。春なのに調子が出ない…それ、じつは普通のことでした

  • 2026.2.6
GardenStory (ガーデンストーリー)

日差しが少しやわらぎ、花の便りが届き始める頃。なのに、なぜか気持ちが落ち着かない、理由もなくそわそわする、疲れが抜けない——そんな感覚を抱く人は少なくありません。それは、気のせいでも、性格の問題でもありません。春は、心と体にとっていちばん揺れやすい季節。季節の変わり目に、人の内側で何が起きているのかを、植物の様子と重ねながら、静かに見ていきましょう。

「春なのに不調」を感じる人は、じつはとても多い

この時期、こんな感覚はありませんか。

  • 夜、眠りが浅くなる
  • 体は重いのに、頭だけがせわしなくソワソワ
  • なんとなく落ち着かない
  • 気分が沈んだり、逆に高ぶったりする

もし、こうした自身の変化に気づいているなら、客観的に自分の心と身体を観察できている証拠。ただし多くの人は、こうした感覚に気づかないまま、「勉強や仕事に集中できない」「気づけばSNSに何時間も費やしている」「お菓子を食べまくり」という状況になり、それに対し「自分はだらしない」「意志が弱い」というように自分を責めてしまいがちです。

でもその行動は、理由の分からない落ち着かなさを、無意識にSNSや甘いものといった刺激で、埋め合わせしようとしているのかもしれません。じつは、その「理由の分からない落ち着かなさ」には、ちゃんと理由があるのです。

春の「変化」に気づきつつも、体はまだ「冬」にいるから

ロウバイ
2月上旬、雪の中に咲くロウバイ(蝋梅)。甘い香りから英名ではウィンタースイートと呼ばれる。IRCDPT/Shutterstock.com

立春(2月4日頃)は暦の上での春の始まりですが、現実の環境はまだ冬。日照は12月の冬至を境に、少しずつ長くなってきていますが、春分(3月20日頃)まではまだ夜のほうが長い状況にあります。

冬至〜春分のあいだの「日が伸びてきてはいるけれど、依然として夜が優勢」。このちぐはぐな状態に加え、日中と朝晩の寒暖差や、年の替わりによる環境の変化などが影響し、無意識のうちに、負荷が重なりやすいのです。

人の体は、カレンダー通りに切り替わるわけではありません。寒い冬のあいだ、体は「守るモード」で過ごしてきました。寒さで血流は下がり、活動量も減りがち。その結果、巡り=体内の処理スピードもスローペースになっています。

これは、寒さを越すために必要なモードですが、今はちょうど「モード切り替え」のタイミング。その切り替えには時間差があり、そのズレが、「不安定」「落ち着かない」という感覚として現れます。

ですから、春の不調は「気持ちの問題」でも「あなたの問題」でもなく、「季節性の現象」と捉えるほうが自然かもしれません。

植物はどうしている? 春を迎える準備のしかた

新芽
芽吹きの前の早春の新芽。Natafil/Shutterstock.com

植物もまた、立春になったからといって、突然スイッチが入ったように咲くわけではありません。しかし、土の中では根がゆっくりと動き始め、芽の内側では次の季節に向けた準備が進んでいます。

では、植物は「何」を合図に動き始めるのか。多くの植物は、日の長さで季節を判断しています。また、地温や雪解け水などを根で感じとり、春が近いことを感知し、ゆっくりと動き始めます。そして、意外かもしれませんが、「人の手」でも植物に春の準備を知らせることができます。

剪定
Ann Stryzhekin/Shutterstock.com

たとえば、2月はバラの剪定・誘引時期。芽はまだ固く閉じていますが、内部では「どの芽を動かすか」の準備が進行中です。この段階で剪定・誘引をすると、養分の行き先が整理され、春に揃った芽吹きを迎えることができます。地中では細根も活動を少しずつ再開してくるため、冬の肥料をあげてない場合は2月中に施します。

冬から春へと身体を切り替える「山菜」の苦味

フキノトウ
雪を溶かして芽を伸ばすフキノトウ。EvergreenPlanet/Shutterstock.com

春先になると、昔の人は山に入り、フキノトウやタラの芽、ワラビなどの山菜を食卓に取り入れてきました。これらの多くに共通するのが、独特の苦味です。

料理人のあいだには、「春は苦味を盛れ」という言葉が知られています。この“苦味”は、味覚のアクセントというだけでなく、冬のあいだに体の中に溜まったものを外へ出すためのもの、と考えられてきました。

春の山菜
春の山菜。bonchan/Shutterstock.com

山菜の苦味は、ひとつの成分ではなく、植物が自分を守るためにつくるさまざまな化学物質の集合体です。その代表例のひとつがポリフェノールで、紫外線や外敵から身を守るために合成され、フキノトウなどに多く含まれます。また、苦味と同時に感じられる「春らしい香り」には、テルペン類が関係しています。テルペン類は精油成分の一種で、ラベンダーにも多く含まれ、嗅覚を通じて自律神経に作用するといわれています。

春の入り口を食卓に並べる世界の文化

こうした、食文化は日本だけに限りません。ギリシャではチコリやタンポポなどの野生葉菜をくたくたに茹で、オリーブオイルとレモン、塩で和えた温サラダ(ホルタ)が日常的に食されています。一方、北欧では春先のイラクサ(ネトル)や野生のスイバを、スープやお粥に少量加えて風味づけとしていただく習慣があります。

ギリシャの温サラダ「ホルタ・ヴラスタ」
ギリシャの温サラダ「ホルタ・ヴラスタ」。Fanfo/Shutterstock.com

冬の終わり、春の入り口に野の植物を口にし、季節が動き始めたことを体感させるこうした食文化は、体によいから生まれたというより、季節の変化を読み取るために育まれてきたと考えるのが自然です。芽吹きや苦味といったサインを手がかりに、人は「今がどんな季節か」を体で確かめていたのです。

今、世界中で再評価される自然の学問「フェノロジー」

自然の動きと私たちの暮らしを重ね合わせる考え方の一つに「フェノロジー」という学問があります。フェノロジーとは、一言でいうと「自然をカレンダーではなく、生きものの反応で読む技術」。植物の芽の膨らみや鳥の初鳴き、昆虫の出現などを観察・記録するもので、二十四節気七十二候をデータ化したものとも言えます。

スノードロップ
早春の森へフェノロジー観察に。AF-Photography/Shutterstock.com

フェノロジーという言葉は、19世紀前半にベルギーの植物学者・園芸学者シャルル・モランによって提唱されました。しかしその考え方自体は、はるか以前から人々の暮らしの中に存在していたものです。

現代ではこのフェノロジーが、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)において、生態系の変化を捉える重要な指標の一つとして位置づけられ、国際的にも高く評価されています。

イギリスには、18世紀から約350年にわたって、同じ場所で自然の変化を記録し続けてきた家族がいます。こうした長期の観察記録は、現在のフェノロジー研究の基礎となっているだけでなく、英国の自然保護団体Woodland Trustが運営する市民参加型プロジェクトNature’s Calendarにも受け継がれています。

それらのデータからは、
・春の訪れが早まっていること
・夏の終わりが遅れていること
といった傾向が明確に示されており、現在では気候モデルの検証にも活用されています。

おうちフェノロジーを始めよう

フェノロジー観察は、特別な知識や記録を必要としません。窓辺でも、玄関先でも一鉢の植物があれば始められます。芽のふくらみや、株元の色、土や昆虫の小さな動きに気づくこと。それだけで、「今、自分がどんな季節にいるのか」がわかります。フェノロジー観察には毎年、同じ時期に咲いてくれる宿根草や低木がおすすめ。3つご紹介します。

① クリスマスローズ

クリスマスローズ
GardenStory (ガーデンストーリー)

おすすめ理由

  • 冬から春への変化がとても分かりやすい
  • 花よりも「株の中心」の動きが観察ポイント
  • 地上部より先に、根が動くのが感じられる

② アジサイ

アジサイ
Natalia Greeske/Shutterstock.com

おすすめ理由

  • 芽のふくらみが段階的
  • 動きが急すぎない
  • 剪定・水やりの判断が“観察ベース”でできる

③ ゲラニウム(宿根草タイプ)

ゲラニウム
PeopleImages/Shutterstock.com

おすすめ理由

  • 地上部がいったん消えても、春に必ず戻る
  • 新芽の出方がゆっくり
  • 鉢植えでも育てやすい

フェノロジー観察の5つのポイント

① 芽を「開く前」で見る

冬のバラの芽
2月頃のバラの芽。Kazu Inoue/Shutterstock.com

観察ポイントは芽が伸びたか開いたかではなく、今は「ふくらんだかどうか」。

  • 硬い → 冬
  • 丸みを帯びる → 春の準備
  • 先端が割れる → GOサイン直前

② 株元の「色」を見る

春は、色が先に変わります。見る場所は

  • 土の表面
  • 株元
  • 地際

変化…

  • 乾いた茶色 → 冬
  • 少し湿った濃い色 → 動き始め
  • 緑がのぞく → 芽の準備完了


葉が出る前に、季節はもう進んでいるということが分かります。

③ 同じ場所を「同じ時間帯」に見る

これはフェノロジーの基本です。毎日でなく、週2〜3回で十分。朝だけ、夕方だけというように同じ時間帯に見ることで、変化が「連続して」見えてきます。

④ 水やり後の反応を見る

水をやった翌日が、じつは重要。

  • 葉が少し立つ
  • 芽がつやっとする
  • 株全体が締まる

「まだいける」「まだ待つ」の判断材料になります。

⑤ノートに記録

住んでいる地域や環境でデータは異なるもの。データは、あなたの未来に最も役立つデータです。フェノロジー観察を始めると、カレンダーを気にしすぎることがなくなり、他人の庭と比べる必要もなくなります。

季節と足並みを揃えるガーデニング

クロッカス
早春、雪の中で咲き出すクロッカス。irina02/Shutterstock.com

芽のふくらみや、土の色、昆虫の小さな動きと同時に、私たち人も自然の中の一つ。自分の内側に起きている変化を、外の自然に重ねて確認してみれば、心や体の揺らぎを自分のせいにせず、季節の一部として受け入れ、ゆっくり整えていくための、確かな手がかりになります。不安定さは、ちゃんと季節に反応している証拠。

自然のペースで春を迎える。それは、この季節を無理なく越えるための、ガーデニングならではの答えです。

Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 3and garden
GardenStory (ガーデンストーリー)

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中!

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