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目黒蓮の所作に見惚れる、映画『ほどなく、お別れです』。

  • 2026.2.4

「みなさま。旅立ちの準備が整いました。ほどなく、お別れです」

この一文にあなたは何を思うだろう。葬儀社のスタッフ、もしくは司会者が出棺の際に放つ、故人との別れの台詞。何度経験しても「ああ、終わる......」とだんだん胸が詰まっていく旅立ちの、あの刹那。なぜ自分がここに立っているのか、セレモニーの意味がぼやけるような気さえする。そんな時間=葬式の義(ぎ)を優しく、こちらに伝えてくる映画『ほどなく、お別れです』がスクリーンに登場する。

まずは映画のあらすじを。

清水美空(浜辺美波)は就職活動がうまくいかず、気落ちしている際に偶然、出席した葬式で、葬祭プランナーの漆原礼二(目黒蓮/Snow Man)に出会う。故人と話せる不思議な力を持つ美空に、漆原は自分も身を置く『坂東会館』にスカウト。美空は予想していなかった、葬儀社のインターンとして働く。

家族、我が子など予想だにしていなかった死に遭遇して、立ち直れず、泣き暮れる登場人物の遺族たち。自分の記憶を反すうすると、痛ましい光景を何度か病院や葬儀場で目にしたけれど、胸が詰まった。泣き叫ぶ人に何もできない自分の無力さを痛感させられた。

そんな遺族を支えるのが、劇中の葬祭プランナーたちだ。半人前の美空はまだ葬儀マナーにも覚えられず、毎日、四苦八苦。彼女には故人とコミュニケーションを取る不思議な力がある。故人は遺族に自分の思いを伝えてくれと、美空に懇願。悲しみに伏せる最中、死んだ家族からのメッセージ......などと発言したら、葬儀に混乱を招きかねない。

納棺師の所作の美しさに目を見張る。

そのシチュエーションをすかさずフォローするのが、先輩の漆原。彼は余分な感情を一切面には出さず、葬儀を進行する『坂東会館』きってのエリート葬祭プランナーだ。

身籠った妻を亡くした夫に対して、漆原はこう言って、寄り添う。

「天国でもオムツは必要でございます」

「奥様の子育てはこれからなのだと、私は思います」

また幼い我が子を亡くし、泣き狂う母親にはこう言った。

「悔しさも怒りも、悲しみの感情のひとつではないでしょうか。ですから、どうぞいまは、そのお気持ちに蓋をしないでください」

普段は冷静沈着な漆原ではあるが、遺族に対してはどこまでも真摯に対応する。別れの時間を遺族の希望通りにしようと、限られた時間の中で、葬祭プランナー、納棺師として常に考えている。慈悲の精神がなければ務まらない職業だ。

「彼のあげる葬儀はきれいでね」

『坂東会館』の社長・坂東稔(光石研)が言う。この台詞をあらわすように、漆原を演じた目黒蓮の演技がとても美しかった。納棺師とは遺体を清め、旅立ちの服を着せて(ここが難しい)、死化粧を施すのが仕事。この一連の動作がとても滑らかで、キュッと結んだ唇も漆原のキャラクターによく似合っていた。きっと相当な練習をしたのだろう。ふと2008年に公開された映画『おくりびと』の、本木雅弘を思い出した。あの時も所作に覚えた感動が、約20年間も経ってまた巡ってくるとは、長くエンタメを愛してみるものだ。

上映時間の125分間、葬式に参列していたような気持ちになった。そして漆原のような葬儀プランナーが実在したらいいのに、とも思った。何度か身内の葬式には参加したけれど、どこか解せない気持ちを残して終わっている。葬儀、とは言ってもこちらから僧侶や葬儀スタッフを選べるわけでもなく、慌ただしさの波に呑まれているうちに、別れの時間が訪れる。「もっとこちらの気持ちになってくれないだろうか」。そんな思いに応えてくれるのが『ほどなく、お別れです』なのかもしれない。

『ほどなく、お別れです』⚫︎監督/三木孝浩⚫︎原作/ 長月天音「ほどなく、お別れです」シリーズ(小学館文庫刊)⚫︎出演/浜辺美波、目黒蓮、森田望智、古川琴音、北村匠海、志田未来、渡邊圭祐、野波麻帆、西垣匠、久保史緒里、原田泰造、光石研、鈴木浩介、永作博美、夏木マリ ほか⚫︎125分⚫︎配給/東宝2月6日から全国で公開。ⓒ2026「ほどなく、お別れです」製作委員会ⓒ長月天音/小学館

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