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親の経済力=将来の“超格差社会”・韓国で、映画『国宝』が評価されている本当の理由〈「世襲に才能は勝てないのが日本だ」という声も…〉

  • 2026.1.31

2025年6月に公開され、大ヒットを記録した映画『国宝』。1月22日には、第98回米アカデミー賞のメイクアップ&スタイリング部門へのノミネートが発表された。一方、韓国での評判はというと……?

ジャーナリストの金敬哲氏が寄稿した。


韓国では1000万人動員の映画が「0本」に

『国宝』公式Xより。

2025年の韓国映画界は、観客動員数が1000万人を記録した映画が12年ぶりに「0本」となるなど、ヒット作が不在となる「冬の時代」を迎えた。

一方、韓国映画館街における日本映画の観客占有率は史上最高の15%に達するなど、日本映画に対する関心が大きく高まった一年だった。

なかでも、長らくアニメの存在感が強かった日本映画界で、実写映画として22年ぶりに興行収入1位の記録を塗り替えた『国宝』は、日本映画の「復興」の象徴として韓国でも大きな注目を集めた。

『国宝』は昨年11月に韓国で公開されて以来、現在まで20万人の観客を動員している。日本での大成功を考えると大した成績ではないが、映画専門家や一般観客の間では珍しく、異常な熱をもった口コミが広がっている。

有名評論家から高評価が連発

韓国では20万人を動員。映画配給会社「mediacastle」の公式Xより。

韓国映画界で最も影響力のある人物と見なされるイ・ドンジン評論家は「2025年の海外映画トップ10」に『国宝』を挙げ、「人生より大きな芸術と世界より重い舞台の美しさがくらむほど虚しく」というコメントと共に、星4つをつけた。

他にも、「狂うほど切実で美しい」(パク・ピョンシク)、「最近20年間で見た日本映画の中で断然最高」(ファン・ヨンミ)、「至極の美しさと究極の視覚経験」(チェ・ソン)など、有名評論家たちからも高評価が連発された。

一般観客の評価のポイントは?

韓国版ビジュアルでは「최고를 향한 열망 서로를 탐한 갈망(頂点への熱望 互いを貪る渇望)」というコピーが。映画配給会社「mediacastle」の公式Xより。

一般観客の評価も極めて好意的だ。上映中の映画館の実観覧客の評点は、CGVが96%、メガボックスが9.0で非常に高い。

GCVのデータ分析によれば、観客を年齢別に見ると20代と30代の比重が最も多く、彼らは映画の魅力として「俳優たちの演技力」に最も多く言及し、約3時間という上映時間を忘れさせるほどの「没入感」に対しても高い点数を与えた。

具体的には「美しさと演技力に魅了されて時間が経つのも忘れてしまった」「こんな映画ならチケット代がもっと高くなっても見に行く」「同時代を生きる俳優の人生をかけた芝居を見れることは祝福だ」など、俳優の演技力と作品の完成度に対する評価が多かった。

「国宝が日本映画ということが腹立たしい」

他にも、「国宝が日本映画ということが腹立たしい。“こんなに安い金を払って映画を見てもいいの?”と思わせた映画はこれが初めてで戸惑っている」、「もう“観客が映画館に行かないせいで韓国映画が滅びる”と言わないでほしい。このような良い映画を見ようと映画館を訪れる人は多い」、「このような芸術性の高い映画が(観客動員数)1千万を成し遂げたことに驚き、うらやましかった」など、韓国映画への批判を兼ねた評価も目についた。

「監督が在日韓国人」という民族的なプライド

細部までこだわった圧巻の映像美。『国宝』公式Xより。

また、韓国メディアや評論家たちは『国宝』を紹介する時、揃って李相日監督にフォーカスを合わせる。

そこには「在日韓国人監督が日本映画の歴史を塗り替えた」という民族的なプライドだけでなく、在日韓国人3世という李監督のアイデンティティが、任侠の世界で生まれて歌舞伎の名門に養子縁組された主人公の喜久雄に強く投影されたという見解がある。

吉沢亮、横浜流星が演じる女形の美しさが話題に。『国宝』公式Xより。

自らを「境界人」と称する李相日監督が、独特の視線で日本の歌舞伎界の閉鎖的な純血主義を解釈し、描き切った。それこそが、本作が歴史的なメガヒットとなった大きな要因であるという観点だろう。

「超格差社会」に生きる韓国の観客が共感したこと

任侠の一門に生まれ歌舞伎界に飛び込んだ喜久雄が、名門の御曹司・俊介とライバルとして切磋琢磨する。『国宝』公式Xより。

映画のテーマである歌舞伎は韓国の観客にとっては馴染みのない文化だが、主人公の俊介と喜久雄が見せてくれた「血筋」と「才能」の対決構図は、韓国人にも見慣れた「金のスプーン」と「土のスプーン」の対決として映っているようだ。

歌舞伎の名門家の「血筋」を受け継いだ俊介は、韓国で言えば親から財力や社会的地位を受け継いだ「金のスプーン」の象徴的な人物、才能だけで歌舞伎界で道を切り拓いていった喜久雄は親の恩恵を一切受けない「土のスプーン」の象徴的な人物であるわけだ。

『国宝』公式Xより。

「芸術の世界さえも才能だけで勝負するところではなかったんだな!」「血筋がそんなに重要なのか……」「運命はあらかじめ決まっているのか? 悲しい話だ!」「才能が優れていても血筋はどうしようもない状況が少し苦々しかった」「金のスプーンが糖尿で夭折しなかったら、土のスプーンは絶対に国宝にはならなかった……世襲に勝つ才能は存在できないのが日本だ……」

ネット上では、「血筋」と「才能」についての感想が数多く語られている。

『国宝』公式Xより。

人生と芸術、美しさと虚しさ、挑戦と挫折、嫉妬と友情……日本の伝統文化・歌舞伎を題材として普遍的な情緒を見事に描き出した映画『国宝』は、歌舞伎に馴染みの薄い多くの韓国の観客にとっても「人生の映画」として記憶されることになったのだ。

文=金敬哲

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