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タンザニア―美しく生きることの意味【今、真に贅沢な旅とは? vol.4】

  • 2026.1.27

子どもの教育のためロンドンで生活を送り、旅をライフワークの一つとして世界各国を巡っている久住あゆみさん。インスタグラムやブログでは、その洗練されたライフスタイルが注目されています。久住さんが今回の旅で訪れたタンザニアのセレンゲティ国立公園は、「自然体の美しさ」の本当の意味に気づかせてくれる場所でした。

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<Profile>
久住あゆみ(くすみあゆみ) /エッセイスト
大阪府出身。モデルとして活躍後に結婚、2児の母に。子どもの教育のため2023年にロンドンへ移住。旅をライフワークの一つとし、世界各国を巡っている。旅先や日常での出来事を映し出したエッセイと写真をインスタグラムやブログで発表、注目を集めている。
Instagram/@ayumikusumi

美しく生きるとはどういうことか

サバンナの真ん中でいただくブレックファースト。 Ayumi Kusumi

今年の夏、サファリに行こうと決めたのは、「小学生の息子たちがきっと喜ぶだろう」そんな軽い思いつきから。けれど、この旅は私の予想に反して、「美しく生きるとはどういうことか」を深く問うような旅になりました。

タンザニアのセレンゲティ国立公園。地平線の果てまで続く草原は東京都のおよそ7倍。よくドキュメンタリーで目にする100万頭を超えるヌーやシマウマの大移動、その舞台はまさにここ。

ヌーとシマウマの群れ。ピンクの空とアースカラーに、モノクロのコントラスト。 Ayumi Kusumi

宿泊したのは、バンガロータイプのヴィラ。ある朝、部屋を出ると目の前の砂地に大きなゾウの足跡を見つけて驚いたり、野外でプライベートディナーを楽しんだ夜には動物たちが近づかないよう見張り役が私たちを囲む。そんなスリルに満ちたひととき。サファリではライオンやゾウ、キリンはもちろん、サイ、カバ、クロコダイルまで、さまざまな野生動物に出会うことができました。

ラグジュアリーサファリブランドの「&Beyond 」による今回の旅。サバンナを一望するホテルのバー。 Ayumi Kusumi

そして、実際に彼らを目にして私が最初に抱いた感想は「圧倒的に美しい」ということ。まず、その姿形が本当に美しいのです。引き締まっていて、無駄がなく、甘えのないオーラ。これ以上なく完成された美しさを前に息をのみました。

彼らは無駄なことをいっさいしません。自分に必要なものが何かを完璧に知っていて、生き方に迷いがない。たとえばライオン。彼らにとって生きるとは、狩りをし、プライドを築き、命をつないでいくこと。それ以外のことには、いっさい目を向けません。周りには、さまざまな動物たちがそれぞれの生き方をしていますが、誰かを真似ることも、ありません。動きにはしなやかさがあり、どこか品格がある。「どう見せよう」「どう見られよう」などという作為のない、自然そのものの美しさがありました。

群れの中で無邪気に眠る子ライオン。狩りの最中に好奇心を抑えきれず、大人に叱られる姿も。 Ayumi Kusumi

その姿を見ながら、自分自身を省みました。なんて、迷いの多い生き方をしているのだろうと。本当はそれほど必要ではないことに、どれほど時間と心を奪われていることか。ですが、この美しさは動物だけの特権でしょうか? いえ、違います。人が人を美しいと感じるのもまた、自分を知り、自分に沿って正直に生きている人。必要なことに力を注ぎ、心を自分の軸に沿って動かしている人です。そういう人の表情や体の線は、自然と引き締まり、動作も自然。同じように生命としての輝きをまとっている。自然体の美しさの本当の意味をようやく分かったように思います。

セレンゲティの日暮れ。 Ayumi Kusumi

自然であるとは、ただ力を抜くことではなく、迷いのない命のあり方のこと。誰かの期待や比較の中で、最適に調整された自然体を探るのではなく、自分の本質を知り、役割を見出し、これでいいと思える日々を生きること。それこそが、いまを生きているという躍動感であり、個々の純粋な美しさを生む瞬間。

旅の帰り道にいつも日記を書きます。自分へのお土産です。今回は自分が本当に必要とするもの、そして迷いなく生きるために夢中になれることを、静かに書き留めました。もしこのサバンナを再び訪れることがあったなら、あの動物たちのように、私も迷いのない美しさを纏っていたい。そう思いながら、この旅を終えました。

初出:リシェスNo.54 2025年11月28日発売
EDITING:YUKO KAMIYAMA

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