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『ウ・ヨンウ』から『プロボノ』『アイドルアイ』へ。韓国リーガルドラマ2026年の新潮流とは

  • 2026.1.25

2025年から2026年にかけて、韓国ドラマ界では弁護士や法廷を軸にしたリーガル作品が、当たり年と呼ぶにふさわしい充実ぶりを見せている。なぜ今、私たちはこれほどまでにリーガルドラマに魅せられるのか。近年のトレンドを整理しながら、その理由を探ってみた。

最旬リーガルドラマのトレンド

近年、特に顕著なのが専門性の細分化だ。「公益弁護」(『プロボノ』)、「芸能界」(『アイドルアイ』)、「離婚」(『グッド・パートナー』/2024年)など、リーガルドラマは、より具体的な専門領域へと踏み込んでいる。(※公益弁護:社会的に弱い立場にある人々を、法の力で支える弁護活動)

次に挙げられるのが、現役弁護士や元判事による脚本参加の増加だ。単なる作品監修にとどまらず、「本物のプロ」が脚本を担当することで、セリフの重みや法廷の空気感に圧倒的なリアリティが生まれている。

元判事のムン・ユソクが脚本を手がけた『プロボノ: アナタの正義救います!』、離婚弁護士としての経験を持つチェ・ユナが執筆した『グッド・パートナー~離婚のお悩み解決します~』などは、「なんとなくわかった気になる」法廷シーンではなく、裁判の仕組みや流れ、地道な実務の積み重ねを丁寧に描く作り方へとシフトしてきている。また、現役弁護士のイ・スンヒョンは『瑞草洞<ソチョドン>』で、自身の体験をそのまま脚本に反映させたという。

さらに近年は、政治汚職、企業不正という大きな社会の歪みが、家族問題、相続問題などの個人的な悩みと結びつく「ハイブリッド型」が主流となっている。『ヴィンチェンツォ』(2021年)や『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(2022年)を経て、作品全体を貫く大きな不正構造と、1話ごとに描かれる小さな個人案件がリンクする構成が、今やリーガルドラマの一つの型として定着しつつある。

俳優の個性と演技力で観る、注目のリーガルドラマ3選

『瑞草洞<ソチョドン>』(全12話)

食堂の数より弁護士事務所の数が多いと言われる、ソウル有数の法曹タウン・瑞草洞を舞台に、大手ローファームで働く若手弁護士たちの日常を描いた群像ドラマ。現役弁護士が脚本を手がけたことで、弁護士の過酷な労働環境が浮かび上がる。

(写真=tvN)

本作に登場する弁護士たちは、「正義の担い手」という理想像とは裏腹に、書類に追われ、締切に神経をすり減らし、生活のために働く一労働者として日々をこなしている。派手な法廷闘争はほとんどなく、むしろ主人公たちがランチや夕食を共にする場面が、法廷シーンと同じ、あるいはそれ以上の比重で描かれているのが印象的だ。

9年目のアソシエイトで事務所のエース的存在であるジュヒョン(演者イ・ジョンソク)は、優秀ながら独立や出世に執着せず、淡々と仕事をこなす。王子様イメージの強いイ・ジョンソクが演じる、ちょっとくたびれたサラリーマン弁護士像は実に斬新だ。中堅ならではの疲弊を抱えつつも、その中にあるプロの矜持を大げさな演技ではなく、姿勢や視線、間の取り方といった細やかな所作で体現している。

『プロボノ: アナタの正義救います!』(全12話)

社会的弱者の無償弁護を担う「プロボノ」活動を描いた本作は、事務所の売上にはつながらず、勝算も見えない案件であっても、「声を上げられない誰か」のために法廷に立つ弁護士たちの姿を描いている。その姿は理想的に見える一方で、現実の厳しさや消耗も隠さず映し出されている。

(写真=tvN)

捨て犬の問題のような身近な出来事から、社会を揺るがす案件へと自然につながっていく構成は、まさに近年のリーガルドラマに顕著なハイブリッド型だ。

ある出来事をきっかけに判事の職を失い、大手ローファームの中でも「売上ゼロ」の公益弁護チームで働くことになったダウィッ(演者チョン・ギョンホ)は、小さな事件に振り回されながら、プロボノ弁護士として少しずつ変化していく。

「傲慢なのに憎めない」キャラクターが真骨頂とも言えるチョン・ギョンホが、本作でも、皮肉屋でプライドが高く、どこか小市民的な弱さを合わせ持つ主人公を、絶妙なバランス感覚で演じている。膨大な法律用語を、相手との距離や呼吸に合わせて紡いでいく言葉のリズム感も秀逸で、理屈より先に感情が伝わってくるのはさすがだ。

『アイドルアイ』(全12話)

芸能界と法廷を結びつけながら、人気やイメージ、世論やSNS、スポンサーの意向が司法判断に影響を及ぼす構造を描いた本作は、決してフィクションの中だけの話ではないと考えさせられる。誰が被害者で、誰が加害者なのかがわからないミステリー性も本作の大きな軸だ。

(写真=ENA)

「悪党たちの弁護士」と恐れられる敏腕女性弁護士セナ(演者チェ・スヨン)は、冷静沈着なプロフェッショナルである一方、10年来のアイドルグループの“ガチオタ”というもう一つの顔を持つ。ある日、最愛の推しであるライク(演者キム・ジェヨン)が殺人容疑で逮捕され、セナはオタクであることを隠したまま弁護を引き受けることに。

推し活をしたことがある人なら、この状況を自分に重ねながら観ることで、より強い緊張感を味わえるはずだ。炎上、過剰なファンダム、契約問題――推しを愛する側だからこそ見えてしまう現実が、サスペンスとして丁寧に積み重ねられていく。

特筆すべきは、少女時代という一時代を築いたトップアイドルであるスヨンが、その華やかさをすべて削ぎ落とし、圧倒的な「静」の存在感を放っていることだ。最初はラブコメかと思って見始めたら、実は推し活×司法の異色サスペンスだった、という意外性も含め、派手さはないが、推しを守るために法を武器に闘う姿からは、自分の人生を自分で引き受ける女性の強さが伝わる。

セナの“弁護士モード”と“オタクモード”の落差を軽やかに行き来しながら、推しを信じたい気持ちと、法に向き合う理性の間で揺れる感情を表現するスヨンの演技は、物語に静かなスリルを与えている。

公認カップルとして知られるチョン・ギョンホとスヨンが、同時期にそれぞれ別の作品で弁護士役を演じているという偶然も、筆者としては思わずニヤリとしてしまうポイントだ。

韓国ドラマの法廷ものがこれほどまでに面白いのは、正義を無条件に信じられなくなった大人たちの感情を、真正面から受け止めているからではないだろうか。テーマの軸は「裁判の勝ち負け」から、「誰のための正義なのか」へと移りつつある。単なる事件解決に終わらず、「もし自分だったら、どう生きるか」という内省を視聴者に突きつける作品が、いま主流になりつつある。

(文=田名部 知子/Xで気ままなソウルの日常を発信中:@t7joshi)

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