1. トップ
  2. ダイエット
  3. 世界最古の銛は「人類が5000年前から捕鯨してきた」ことを明らかにする

世界最古の銛は「人類が5000年前から捕鯨してきた」ことを明らかにする

  • 2026.1.14
世界最古の銛、「5000年前の捕鯨」の証拠を発見。イメージ / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

巨大な海の生物「クジラ」を狩るという行為はいったいいつから行われてきたのでしょうか。

スペインのバルセロナ自治大学(Universitat Autònoma de Barcelona:UAB)の研究チームは、南米ブラジル沿岸で人類がすでに5000年前から捕鯨を行っていたことを示す決定的な証拠を発見しました。

この研究は、捕鯨の起源を寒冷な北半球に限定してきた従来の見方を根本から問い直すものです。

本研究は2026年1月9日付の科学誌『Nature Communications』に掲載されました。

目次

  • 捕鯨はいつ始まったのか?ブラジル南部を調査
  • 世界最古の銛が「5000年前の捕鯨」を明らかにする

捕鯨はいつ始まったのか?ブラジル南部を調査

これまで考古学では、大型のクジラを計画的に狩猟する捕鯨は、およそ3500〜2500年前、北極圏や北太平洋といった寒冷地域で始まったと考えられてきました。

南半球でもクジラの骨は見つかっていましたが、海岸に打ち上げられた個体を、たまたま利用しただけと解釈されることが多かったのです。

今回の研究が注目したのは、ブラジル南部サンタカタリーナ州のバビトンガ湾周辺に広がる「サンバキ」と呼ばれる巨大な貝塚遺跡群です。

これらは、貝殻や魚・動物の骨、人の骨などが何世代にもわたって積み重なってできた、沿岸社会の生活の記録です。

しかし、その後の開発や都市化によって多くの遺跡が失われてしまい、現地で当時の様子を直接調べることは難しくなっています。

そこで研究チームは、ブラジルのサンバキ考古学博物館に保存されていたクジラの骨や骨製の道具に着目しました。(※画像はこちら。プレスリリース

まず、骨の形や削られ方から、どの動物のどの部位か、人の手で加工されているかを調べる動物考古学の方法が使われました。

さらに、骨にわずかに残ったコラーゲンの分子パターンを質量分析で読み取り、動物の種類を特定する分子レベルの手法も用いられました。

一部の銛状の骨製品については、放射性炭素年代測定によって、作られた年代が直接調べられています。

その結果、数百点におよぶ資料の中から、クジラの骨を素材とした大型の銛の部品や、明確な解体痕をもつクジラの骨が見つかりました。

これらが何を意味するのか、より詳しい結果を見ていきましょう。

世界最古の銛が「5000年前の捕鯨」を明らかにする

分析の結果、サンバキ遺跡から見つかった骨には、ミナミセミクジラやザトウクジラをはじめ、シロナガスクジラ、ナガスクジラ、マッコウクジラ、イルカ類など、さまざまなクジラ・イルカのものが含まれていることが分かりました。

研究チームは、こうした中に沿岸の浅い海に近づく「沿岸性の種」が多く含まれていることに注目しています。

これは、沿岸に暮らす人々が、海岸近くでクジラを積極的に狩猟していた強い証拠になると考えられます。

さらに決定的だったのは、クジラの骨を加工して作られた大型の銛の部品が複数確認され、そのうち少なくとも一部が約5000年前にさかのぼると年代測定されたことです。

これらは単なる道具ではなく、南米で見つかった中でも最大級のクジラ骨製の銛であり、研究チームは大型クジラの捕獲に特化した装備だったと考えています。

クジラの骨の中には、刃物で切りつけたような痕が残るものが多く含まれていました。

これは、肉や脂肪を計画的に解体していたことを示します。

また、銛やクジラ骨が人の墓の副葬品として出土した例もあり、クジラとその捕獲が食料の確保だけでなく、社会的・儀礼的にも重要な意味を持っていた可能性が高いと考えられます。

こうした証拠を総合すると、サンバキの人々は貝を集める沿岸民というだけでなく、クジラの生態をよく理解し、協力して狩りを行う高度な海洋文化を持つ捕鯨社会だったと見なす必要が出てきます。

一方で、すべてのクジラが能動的に狩られたとまでは断定できず、外洋性の種などについては、漂着した個体を利用した可能性も残されており、この点は今後の研究課題とされています。

この研究はまた、クジラの昔のすみかを知る手がかりにもなりました。

特にザトウクジラの骨が多く見つかっていることから、過去には現在の主な繁殖海域よりもさらに南の海域にまで分布が広がっていた可能性が示されています。

近年、ブラジル南部でザトウクジラの目撃が増えていることについて、研究チームは、新しく広がっているのではなく、かつての生息域への歴史的な再占拠である可能性を指摘しています。

これは、産業捕鯨が始まる前の分布を知ることが、現代のクジラの回復状況を正しく理解するうえで重要だというメッセージでもあります。

今後は、ブラジル以外の地域の遺跡や博物館コレクションを同様の手法で再分析することで、こうした捕鯨文化がどのように成立し、地域ごとにどのような特徴を持っていたのかが、さらに詳しく明らかになっていくと考えられます。

人類とクジラの関係は、私たちが想像していた以上に古く、そして深い歴史を秘めていたのです。

参考文献

World’s Oldest Harpoon Shows Humans Have Hunted Whales For 5,000 Years, Way Longer Than Thought
https://www.iflscience.com/worlds-oldest-harpoon-shows-humans-have-hunted-whales-for-5000-years-way-longer-than-thought-82185

Whale hunting in South America began 5,000 years ago, a millennium earlier than previously thought
https://www.uab.cat/web/sala-de-premsa-icta-uab/detall-noticia/whale-hunting-began-5-000-years-ago-in-south-america-a-millennium-earlier-than-previously-thought-1345819915004.html?detid=1345974492252

元論文

Molecular and zooarchaeological identification of 5000 year old whale-bone harpoons in coastal Brazil
https://doi.org/10.1038/s41467-025-67530-w

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる