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薬剤師がよく出会う「偽名で呼んでほしい」患者。気遣っていたのに『その理由』を聞いて「まさか」

  • 2025.12.31

町のクリニックで、医療事務の仕事をしているTさん。「患者さんに寄り添った対応をしたい」といつも気を配っているそうですが、気遣いが思わぬ方向に転んでしまったことがあるようです。その時のエピソードを教えてくれました。

本名では呼ばないで

山下さん(仮名)は、当クリニックを初めて利用する患者さんです。記入を終えた新患アンケートを確認していると、自由記入欄にこんなことが書かれていました。「診察の順番などで名前を呼ぶときは、本名ではなく『遠藤(仮名)』と呼んでほしい」

きっと事情があるに違いない

私は、山下さんが何か特別な事情を抱えているのだと察しました。偽名を用いる理由としては、「家庭内トラブル」や「受診歴を家族や知人に知られたくない」などが考えられます。保険証や記入してあるフルネームは本物と確認した上で、苗字は指定の「遠藤」さんを使うことに。

すぐさまクリニックのスタッフ全員に情報共有。口頭では決して本名を出さぬよう、受診のたびに細心の注意を払って対応し続けました。

ついに明かされる偽名の真実

月日は流れ、山下さんは引っ越しの関係で転院することに。今日は、最後の受診日です。「今までお世話になりました。名前にもずっとご配慮いただき、嬉しかったです」丁寧にお礼を伝えてくれる山下さん。私は胸を熱くしながら、彼女の言葉を噛みしめます。

ところが次の瞬間、思いもよらない言葉が続いたのです。「実は私ね、遠藤〇〇(仮名)っていう有名人の大ファンで! 推しと同じ名前で呼んでもらえて幸せだったわ。長い間ありがとうね!」

山下さんが偽名を使う理由は、まさかの個人的な「推し活」でした。想像もしなかった理由に、内心パニック状態になりました。

気遣いが空回り

彼女がクリニックを去った後、「いままでの配慮は一体なんだったのか……」と虚しい気持ちになりました。もし、最初に理由まで伺っていれば、山下さんのケースでは偽名使用はお断りになっていたでしょう。私はあれこれ気を回しすぎて、空回りしていたようです。なんともトホホな出来事でした。

【体験者:20代・パート、回答時期:2025年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:S.Takechi
調剤薬局に10年以上勤務。また小売業での接客職も経験。それらを通じて、多くの人の喜怒哀楽に触れ、そのコラム執筆からライター活動をスタート。現在は、様々な市井の人にインタビューし、情報を収集。リアルな実体験をもとにしたコラムを執筆中。

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