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「いい顔してるな」認知症の父が笑った。この間まで他人行儀だったのに。私のスッピンに父が微笑んだワケ

  • 2025.12.31

親子だからこそ、些細なことで衝突してしまう時期ってありますよね。特に思春期の頃、ファッションやメイクを巡って親と喧嘩をした経験がある方もいるのではないでしょうか。今回は、筆者の友人が父親とのエピソードを聞かせてくれました。

画像: 「いい顔してるな」認知症の父が笑った。この間まで他人行儀だったのに。私のスッピンに父が微笑んだワケ

派手なメイクを巡る父との衝突

高校時代の私は、覚えたばかりのメイクに夢中でした。
でも、父はそれが大嫌い。

「顔に泥を塗ってるみたいだ」「学生らしくない」
と、毎日のように小言を言われたものです。

昔気質で厳しい父に、玄関でメイク落としシートを渡され、その場でメイクを落とさざるを得なかったことも一度や二度ではありません。

当時の私は、「なんで分かってくれないの!」と反発するばかり。
父の言葉は、ただの押し付けにしか聞こえませんでした。

認知症になった父との面会

それから20年。

今、父は認知症を患い、介護施設で暮らしています。
面会に行っても、私を娘だと分かる日もあれば、そうでない日もあります。

それでも私は、無意識に「ちゃんとした姿を見せなきゃ」と思い、しっかりメイクをして行っていました。

でも、父の反応はいつも薄く、どこか他人行儀。
記憶の中の娘と、目の前の私が、うまく結びついていないようでした。

スッピンの私に向けられた視線

ある週末、仕事が忙しく疲労が溜まっていた私は、ほぼスッピンに眼鏡、適当な服で父に会いに行きました。

すると、ぼんやりしていた父の目が、そんな私を見た瞬間にくしゃっと細まったのです。

「……お、いい顔してるな」
名前こそ出てこなかったものの、私を見つめるその表情は明らかに安心していました。

父にとっての娘は、濃いメイクで武装した私ではなく、そばかすが見える“そのままの私”だったのです。

父が愛した「そのままの私」

「お父さん、私だよ」と手を握ると、握り返してくれた手は温かいものでした。

父にとっての「可愛い娘」は、素顔の私。
もう昔のように「メイクを落とせ」と怒られることはありませんが、次からはスッピンで会いに行こうと思います。

それが、父にとって一番分かりやすい「私」ですし、飾らない自分でいることが、今の父にできる一番の親孝行だからです。

【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2025年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。

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