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【ルームツアー】ローマの夕焼けをイメージした配色で甦った、歴史的アパートメント

  • 2025.12.24
HELENIO BARBETTA / LIVING INSIDE

政治の分野を専門とするジャーナリスト、ジュリア・チェラソリは語る。「家は、服のようであるべき。私はずっとそう思ってきました。自分自身で自然体でいられる状況を生活環境でつくるのです。イタリア語では住居を『アビタツィオーネ』、服のことを『アビト』と言います。その由来は共通していますが、それはけっして偶然ではありません」

ファッションとインテリアデザインをこよなく愛する彼女は、ヴェントゥローニ・スタジオの建築家、フランチェスカ・ヴェントゥローニと手を組み、ローマのパラッツォ・マツィオ・ボンコンパーニ内に入る自身の住まいをリノベーション。ヴィア・デッラ・スクロファという通りに立つこのパラッツォは、観光名所アウグストゥス廟からも近い。プロジェクトに取りかかった2人は、艶やかなエナメルとテラコッタ、それからしっくいを用いた壁材のコントラストを心から楽しみながら作業を進めた。UK版「エル・デコ」より

Helenio Barbetta/Living Inside

ジュリアとフランチェスカは、ほぼすべての部屋を鮮やかな色で満たした。オリジナルのコーニス(洋風建築の軒と壁の頂部を帯状に取り巻く装飾)を含む建築的要素は残しながら、現代的に変貌させていった。

フランチェスカは振り返る。「これまでローマでは多くのプロジェクトを手掛けてきましたが、どうしてもクラシックなデザインに傾いてしまいがちでした。特にこのような歴史的な建物ではその傾向が顕著でした」

Helenio Barbetta/ Living Inside

フランチェスカは続ける。「大事なのは、恐れることなく、過去と対話を始めること。アーティストのマウリッツィオ・ナンヌッチも著している通り、『すべての芸術は、その時代の現代アートだった』のですから」

バターを思わせるイエローを塗った光沢仕上げの天井とピンク系のテクスチャー豊かな壁に覆われたリビングは、この街を少しずつ染め上げる夕暮れ時の景色のようだ。

Helenio Barbetta/ Living Inside

キッチンの内装はグロッシーなブルーグレーを選択。この空間はマットな真ちゅうでフレーミングされたガラス製のドアが自然光を反射し、美しいきらめきを与えている。

Helenio Barbetta/ Living Inside

マスターベッドルームの扉を開けると、また雰囲気が一変する。ここでは、ソフトなブルーに塗られた壁面と、ヴェントゥローニ・スタジオがデザインし、プラム色のラッカーで仕上げたカスタムメイドのワードローブが共鳴する。

フランチェスカの大胆なアプローチが生かされているのは、色づかいだけではない。注目すべき点は、レイアウトにもある。もともと、この家は小さく細分化された部屋で構成されていた。しかも、2つあった階段のうちの1つはなぜか書斎の中に隠されていたのだ。

Helenio Barbetta/ Living Inside

広く明るい空間を好むジュリアの了解を得て、フランチェスカは、その小さな書斎を取り壊し、階段をリノベーションによって左右対称の存在とし、広大なリビングと向きあうようにした。

「リビングの仕上がりはとても気に入っているのですが、キッチンの親密さや、ここを照らす光も好き」とジュリア。「午後になると、大理石と金属に日が当たり、輝き出します。そして、ガラス扉がこの空間を隠すことなく、他の部屋から隔ててくれる。友人が来たときはここでコーヒーを振舞ったり、ときには1人で書き物をしたりすることも。すごくエレガントな環境が整っていると思います」

エレガントでありながら、冒険的。なんとも素晴らしいコンビネーションがこの家には結実している。

original text : HELENIO BARBETTA/LIVING INSIDE
translation : CHISATO YAMASHITA

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