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2025年の「日本アニメ映画ベスト10」を作ってみた。大好評を受けてクリスマス上映も決まった1位を見て!

  • 2025.12.23
2025年の「日本のアニメ映画ベスト10」を一挙に紹介しましょう! 特に1位と2位と3位はまだまだ上映中ですので、ぜひ映画館に駆けつけてください!(画像出典:(C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会)
2025年の「日本のアニメ映画ベスト10」を一挙に紹介しましょう! 特に1位と2位と3位はまだまだ上映中ですので、ぜひ映画館に駆けつけてください!(画像出典:(C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会)

2025年は『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』と『チェンソーマン レゼ篇』が歴史的な大ヒットを記録しました。

ここでは、「その2本と同じくらい素晴らしいから!もっともっと多くの人に見てほしい……!」と声に出して叫びたい、筆者が独断と偏見で選んだ、2025年公開の日本のアニメ映画10作品を紹介しましょう。順位をつけてはいますが、「実質全部1位」としてお読みください!

この記事の執筆者: ヒナタカ
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。

10位 『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』

「観客のスマホからの投票によりラップバトルの勝敗がリアルタイムで変わる」という「インタラクティブ映画」のシステムを導入した画期的な作品です。見るたびに内容が違う上に、「推し」のチームが勝ち上がることを応援したくなるためリピーターが続出し、公開初日から100館以下の上映館数では日本初の興行収入25億円を突破する(興行通信社調べ)という、大記録を打ち立てました。

大半がライブまたはミュージックビデオで構成されており、KICK THE CAN CREWやCreepy Nutsなどの人気アーティストが参加した楽曲、『シドニアの騎士』や『大雪海のカイナ』で知られるポリゴン・ピクチュアズ制作の映像も素晴らしいクオリティーでした。関連作品を全く知らなくても楽しめる間口の広さがありますし、配信でも投票システムが楽しめる取り組みがされることを願っています。

9位 『ホウセンカ』

2021年に放送されたテレビアニメ『オッドタクシー』の木下麦(監督・キャラクターデザイン)と此元和津也(原作・脚本)が再タッグを組んだオリジナル作品です。物語は、独房で孤独な死を迎えようとしていた無期懲役囚の老人に、なぜか人の言葉を話す花のホウセンカが声をかけ、その会話から人生を振り返るというもの。ボイスキャストの小林薫やピエール瀧の「いぶし銀」な演技も光っていました。

絵柄はかわいい一方、人間の愛情や葛藤をたっぷりと感じさせる語り口、ヤクザものとしてのロマンチシズムは、まるで北野武監督作『ソナチネ』のような趣でした。主人公がたびたび口にする「大逆転」とはいったい何なのか? というミステリー的な要素にも惹き込まれますし、結末には心に染み渡るような感動がありました。『映画大好きポンポさん』や『夏のトンネル さよならの出口』の制作会社CLAPならではの、細やかで丁寧なアニメの表現にも注目です。

8位 『ヴァージン・パンク Clockwork Girl』

国内外から絶賛された1998年のアダルトアニメ『A KITE』の梅津泰臣監督による新作で、上映時間は35分と短く、物語も途中で終わるため、映画というよりはアニメシリーズの第1作という印象が強い作品です。主人公はもともとは成人した賞金稼ぎだったのですが、かつて自身の運命を狂わせた少女趣味の男の手にかかり、強制的に「14歳の機械の身体」に変えられてしまいます。

観客は『A KITE』と同様に「かれんな少女が殺戮するアニメ」を期待して本作を見るわけですが、それが劇中の悪役の少女趣味および、ヒロインを意のままにしようとするおぞましい欲望と部分的に一致するという、ある種の「共犯関係」へと巻き込む作りになっているのが、いい意味で意地悪です。それでいて作画は超ハイクオリティーで、R15+指定大納得の血で血を洗う刺激的なアクションをたっぷり堪能できる作品に仕上がっていました。続編を心待ちにしています。

7位 『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』

「まさかの映画化!」という触れ込みに納得した人は多いでしょう。「原作」となる「たべっ子どうぶつ」はイベントやコラボ企画の取り組みがされてきた大人気のお菓子ですが、何しろ「物語がない」わけで、「ほぼイチから作り上げた」挑戦的な試みなのですから。そして、出来上がったのは、子どもは「ダメダメなチームが仲間を救うために大冒険!」にワクワクでき、大人も「ダークな人間の闇にも触れた物語」に唸(うな)るという、多層的なエンタメに仕上がっていました。

さらには、「つい触りたくなるようなモフモフ感の毛並み」の3DCGの表現も素晴らしく、時には「えっ!?」と驚くアイデアのアクションも展開して、さらには「元がお菓子」という設定を活かした潜入作戦も面白く仕上がっているため、「日本で『トイ・ストーリー』に対抗する3DCGアニメ映画の名作が生まれた」という実感がありました。「ぺがさすちゃん」を演じた、連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合)でも話題の高石あかりの歌声にも聴き入ってほしいです。

※高石あかりの「高」は「はしごだか」が正式表記

6位 『ひゃくえむ。』

同名漫画を原作とした、陸上競技の100m走に賭けた男たちの「情熱と狂気」を描いた作品です。切磋琢磨していた友人の2人がライバルとなる過程は『国宝』に似ており、原作者が同じ魚豊による漫画およびアニメ『チ。 地球の運動について』に通ずる、「なぜここまでするのか?」という、1つの事象に打ち込む人々の哲学的な思考も興味深い内容になっていました。

漫画をアニメ映画にする意義も確かに感じる作品で、白眉となるのは3分40秒にも及ぶ「走るまでの準備や手順を描いた長回し」。100m走はたった約10秒で決着が着くからこそ、それ以上の時間をかけた準備や手順がいかに大切なのかということも思い知らされますし、ここだけで制作に1年がかけられた(!)作り手の苦労も報われるものでした。「高校生篇の大胆なアレンジ」「ネット越しでの会話の演出」などの映画化にあたってのチューニングも見事です。12月31日よりNetflixで独占配信です。

5位 『無名の人生』

『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』などの密度の高い作画に力を入れた作品とは対照的な、簡素とも言える画かつ、朴訥(ぼくとつ)とした語り口の作品でありながら、それこそが唯一の魅力になっている作品です。内容は『フォレスト・ガンプ/一期一会』に近い、ある男の一生を追う作品でありつつも、その先に「とんでもないところに連れて行かれる」壮大な物語になっていました。

「あり得ないほどに波乱万丈な人生」を描きつつも、主人公がアイドルを目指す過程で、旧ジャニーズ事務所におけるジャニー喜多川の性加害事件をほうふつとさせる問題が描かれるなど、「現実を参照している」作品でもありました。その先に待ち受ける出来事もまた今の混乱の世の中では「あり得る」ものとして恐ろしく映るでしょう。

4位 『映画 キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!』

言わずと知れた女児向けアニメ『プリキュア』シリーズの劇場版であり、今回はアイドルがテーマである作品だからこその、はっきりと「推し」への愛情の尊さ、あるいは「本当の気持ち」に向き合うことを称えた物語になっていました。過去にさかのぼってからの「アイドル嫌いの女の子」にまつわる謎の数々は興味を引きますし、ファンを幸せにしたいアイドルの気持ちに感情移入できる物語になっていました。

脚本家は『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の吉野弘幸で、そちらと同様に「時間の残酷さ」を描いていることにも注目です。そして、アイドルに限らず、「この時だけ」のコンテンツに触れていたり、推しがいる人にとっては、積み上げた気持ちが報われる「光景」に感涙するのではないでしょうか。アイドルの元の意味が「偶像」であること、ゲストキャラの名前が「天照(アマテラス)」からきていることを踏まえると、さらに味わい深いものがありますよ。

3位 『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』

2018年と2021年に放送されたテレビアニメの劇場版で、そちらから「ゾンビの女の子たちがアイドルになる」とぶっ飛んだ設定だったことに加え、さらに映画では宇宙人と戦う『インデペンデンス・デイ』的な本格SFアクションになりました。それでいてキャラの愛らしさ、舞台の佐賀への愛情は受け継がれるばかりかマシマシで、ラストでは予想だにしない感動が待ち受けているという、ファンムービーの枠にまったくとどまっていない傑作だったのです。

序盤に簡単なあらすじがあり、テレビシリーズを全く見ていなくても楽しめる(見ているとさらに小ネタが分かって楽しい)上に、(宇宙人の造形がちょっと怖いものの)未就学児ごろのお子さんにも推薦できる万人向けの内容でもあるため、もっともっと多くの人に見てほしいです。なお、テレビシリーズの1話の冒頭はなかなか刺激が強い上にホラーテイストだったりするので、お子さんと一緒に見るのであれば1話のBパート(8分50秒ごろから)からの視聴がおすすめですよ。

2位 『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』

同名漫画の映画化作品で、何より重要なのは、かわいい絵柄ながら、戦争の残酷さをPG12指定納得の描写で示していること。主人公の青年2人が対照的な性格ながら価値観や気持ちを同じくするシーンが尊く、ほかのキャラもわずかなセリフから伝わる心理からとことん愛おしくなり、さらにはアニメだからこその演出に感涙できる内容になっていました。

無惨に人が死んでいく戦場の過酷さはもちろん、太平洋戦争における「お国のために命を捧げる」といった全体主義の価値観が、当時の人々の運命をいかに歪ませてしまったのか、ということも思い知らされるでしょう。映画の「その先」も描かれている原作漫画を「外伝」も含めてぜひ読んでみてほしいです。そして、上白石萌音による主題歌『奇跡のようなこと』の歌詞のひとつひとつを、噛み締めるように聞き入ってください。

1位 『トリツカレ男』

同名小説のアニメ映画化作品で、事前に「敬遠されそう」という声も上がっていた個性的な絵柄は「この絵だからこそいいんだ!」となり、一途なラブストーリーが意外なところに行き着く物語も、Aぇ! group・佐野晶哉と上白石萌歌の歌声も、全てが絶賛に次ぐ絶賛に染められた作品です。原作からのアレンジやリスペクトも完璧というほかなく、見るたびに発見がある作り込みもあって、これからも名作として語り継がれることは間違いないでしょう。

12月下旬現在は多くの劇場で上映が終了しているものの、圧倒的な口コミ効果で満席が続出したことによる上映の延長や、これから新たに上映が始まる劇場もあるため、ぜひ公式Xなどを参照しつつ、年末に最優先で見てほしいです。さらに、大好評を博した「号泣(ハンカチ付き)上映」が、TOHOシネマズ新宿&梅田にて12月24日にも開催が決定しています。クリスマスに見るのにもピッタリなので、ぜひこの機会も見逃さないでください。


このアニメ映画も、中国製アニメも、テレビアニメも推したい!

ギリギリ選外としましたが、『ベルサイユのばら』『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』『不思議の国でアリスと -Dive in Wonderland-』『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』『ChaO』『JUNK WORLD』なども激推しできる作品でした。さらに、中国製のアニメ映画では『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』と『くまじろう!ちきゅうをすくえ! ~ 熊出没 ~』はもっともっと多くの人に見てほしいですし、アニメ映画世界歴代興行収入1位となった『ナタ 魔童の大暴れ』は12月26日より日本語吹き替え版の上映が始まります。さらに、2025年のテレビアニメでは『アポカリプスホテル』『前橋ウィッチーズ』『瑠璃の宝石』が本当に素晴らしかったです。それぞれで「4話」「10話」「7話」が「神回」だったので、ぜひ序盤で「切る」ことなく、そこまで見届けてほしいです。

2026年に絶対に見てほしいのはこちら!

2026年に早速見てほしいのは、1月1日に劇場公開される、完全オリジナル作品『迷宮のしおり』です。女子高生がゲーム『サイレントヒル』の裏世界のような場所に迷い込み脱出を目指す物語で、SNS時代ならではの若者の悩みへの向き合い方が真摯(しんし)で、新しい学校のリーダーズのSUZUKAを筆頭に豪華なボイスキャストがみんな超ハマっている、見せ場満載かつ幅広い世代が楽しめるエンタメだったのです。『マクロス』シリーズや『創聖のアクエリオン』の河森正治監督ならではのサービスも盛り込まれていて、もはやカオスなところも含めて断固支持します。

とにかく、こんなにも面白いアニメ映画ばかりで、映画ファンとしてもアニメファンとしてもうれしい限り。とにかく、1位の『トリツカレ男』と2位『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』と3位『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』は今も一部劇場で上映されているので、優先的に駆けつけてください!

文:ヒナタカ

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