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たった数週間の研修しか受けていない…危険な"直美"医師を避けるためホームページで必ず確認すべき項目

  • 2025.12.20

近年、耳にすることが増えた「直美<ちょくび>」という言葉。全国的にも貴重な「大学病院の美容皮膚科チーム」を立ち上げた皮膚科医の大塚篤司さんは「美容医療の現状を踏まえて十分な情報を得て、良い医者を『見極める力』を身につけてほしい」という――。

※本稿は、大塚篤司『大学病院の美容皮膚科医が教える 最新医学でわかったシミ・シワの「消し方」』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

患者の顎に注射をする美容師
※写真はイメージです
エビデンスを蓄積する時間がない美容医療

美容医療は急速に身近なものになりました。かつては一部の人だけのものだった美容施術が、今では誰もが手軽にアプローチできる手段となっています。SNSを開けば、美容クリニックの広告や施術体験談が溢あふれ、「美しくなりたい」という願いを叶える選択肢は無限に広がっているように見えます。しかし、この状況には大きな落とし穴があります。それは「エビデンス(科学的根拠)」の問題です。

病気の治療では、新しい薬や治療法が世に出るまでに、厳格な臨床試験を経て、その効果と安全性が検証されます。学会でガイドラインが作られ、医師はそれに基づいて治療を行います。一方、美容医療の世界では、このような仕組みが十分に機能していないのが現状です。

なぜでしょうか。それは、美容に関する技術や機器の発展のスピードがあまりにも速く、一つ一つの施術について十分なエビデンスを蓄積する時間がないからです。新しいレーザー機器が登場したかと思えば、すぐに次世代機が開発される。話題の美容成分が注目を集めたと思ったら、また新しい成分がもてはやされる。このスピード感の中で、何が本当に効果的で安全なのかを見極めることは、専門家でも容易ではありません。

初期臨床研修を終えたばかりの「直美」

その結果、美容医療は「職人技」の世界になりがちです。十分な検証を経ていない施術が「最新」「話題」という言葉だけで広まり、思わぬトラブルを引き起こすケースも後を絶ちません。

私は、美容医療においてエビデンスが不十分な方法を完全に否定するつもりはありません。医学の進歩は常に試行錯誤の連続によるものであり、新しい可能性を探ることも重要です。しかし、どんな施術にもリスクは存在します。大きな副作用や有害事象の可能性については、事前に十分な情報を得て、納得した上で選択すべきです。

また近年、美容医療の分野で「直美ちょくび」という言葉を耳にする機会が増えています。これは、大学での医学部教育と2年間の初期臨床研修を終えたばかりの医師が、皮膚科や形成外科といった一般の保険診療科でさらなる研鑽けんさんを積むことなく、直接、自由診療が中心の美容外科や美容皮膚科クリニックに就職するケースを指す俗称です。

手軽に見えるレーザーや注入治療にもリスクが

かつて美容医療の道に進む医師は、形成外科や一般外科、あるいは皮膚科などで数年間しっかりとしたトレーニングを受け、手術手技や皮膚疾患に関する深い知識と経験を身につけた後、美容分野に転身するのが一般的でした。これらの診療科で培われる診断能力や合併症への対応力は、安全な美容医療を提供する上で極めて重要な基盤となります。

しかし、美容医療市場の拡大とともに、初期臨床研修を終えたばかりの若い医師が、十分な専門的トレーニングを経ずに美容医療の現場に立つケースが増加しているという現状があります。もちろん、すべての「直美」医師の技量が低いわけではありませんが、経験豊富な医師に比べて、診断の精度や手技の熟練度、予期せぬトラブルへの対応能力に差がある可能性は否定できません。

並んだ手術器具を触る医師
※写真はイメージです

特に、レーザー治療や注入療法などは、手軽に見えても一歩間違えれば火傷やけどや神経損傷、血管塞栓そくせんといった深刻な合併症を引き起こすリスクがあります。また、シミだと思っていたものが実は皮膚がんだった、というケースも見逃してはなりません。こうしたリスクを回避し、安全で質の高い美容医療を受けるためには、患者さん自身が医師の経歴や資格をしっかりと確認することが重要になります。

信頼できる医師を見分けるために

では、経験のある信頼できる医師を見分けるには、最低限どのような点に注意すれば良いでしょうか?

1.専門医資格の有無を確認する

美容皮膚科領域であれば「日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医」、美容外科領域であれば「日本形成外科学会認定 形成外科専門医」の資格を持っているかを確認しましょう。これらの専門医資格は、定められた研修プログラムを修了し、厳しい試験に合格した医師にのみ与えられるものであり、その分野における高い知識と技術を持っていることの証となります(もちろん、これ以外の診療科出身で美容医療に長けた医師もいますが、一つの客観的な指標となります)。

曖昧な経歴には要注意
2.経歴と研修期間を具体的に確認する

クリニックのウェブサイトや医師紹介ページで、経歴を確認しましょう。その際、「○○美容クリニック 研修修了」といった曖昧あいまいな記載だけでなく、「○○病院 形成外科にて△年間勤務」のように、どの診療科でどれくらいの期間、臨床経験を積んできたかが具体的に記載されているかを確認することが重要です。

残念ながら、中には数週間から1、2カ月の短期間の研修を受けただけで、あたかも十分な経験があるかのように経歴に記載しているケースも見受けられます。研修期間が具体的に、かつ正直に記載されているかどうかも、信頼性を見極めるポイントの一つです。

自らで納得できる医師選びを
3.リスクや副作用の説明を正直に行うかを確認する
大塚篤司『大学病院の美容皮膚科医が教える 最新医学でわかったシミ・シワの「消し方」』(朝日新聞出版)
大塚篤司『大学病院の美容皮膚科医が教える 最新医学でわかったシミ・シワの「消し方」』(朝日新聞出版)

カウンセリングでは、治療の良い点だけでなく、起こりうるリスク、副作用、合併症、ダウンタイムについて、隠さずに具体的に説明してくれるかを必ず確認してください。質問に対して真摯しんしに答え、たとえ不利な情報であっても正直に伝える姿勢があるかどうかは、医師の誠実さを見極める上で非常に重要です。メリットばかりを強調し、リスク説明を軽視したり、曖昧にしたりする医師や、不安を煽あおって高額な治療を強く勧めてくるような場合は、一度立ち止まって考えるべきです。信頼できる医師は、患者さんがすべての情報を理解し、納得した上で治療を選択できるよう努めるはずです。

美容医療は、医師の知識、技術、そして経験によって結果が大きく左右されます。広告や価格だけで安易にクリニックを選ぶのではなく、担当する医師がどのようなバックグラウンドを持ち、どのような姿勢で診療に当たっているのかをしっかりと確認し、納得した上で治療を受けるようにしましょう。

大塚 篤司(おおつか・あつし)
近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授
1976年生まれ、千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より現職。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーに、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行う。

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