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  2. 7年前に放送された“大人の目線”で見返したい作品「見え方が違う」「続編希望」痛快な発言で人気を呼んだ“異色のドラマ”

7年前に放送された“大人の目線”で見返したい作品「見え方が違う」「続編希望」痛快な発言で人気を呼んだ“異色のドラマ”

  • 2026.1.9
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杉咲花 (C)SANKEI

2019年にテレビ朝日系「木曜ドラマ」で放送された『ハケン占い師アタル』は、“働き方改革”という言葉が独り歩きしがちな時代に、働く人の“心の問題”に真正面から切り込んだ異色のお仕事ドラマだ。派遣社員でありながら、人の悩みや原風景が見えてしまう特殊能力を持つ主人公が、職場で行き詰まった人々の人生を静かに揺さぶっていく。本作はスカッとする痛快さと、胸に刺さるリアルさを併せ持った一作として、多くの視聴者の共感を集めた。

「占い師」という設定で描かれる、働く人のリアル

主人公・的場中(杉咲花)は、ある日イベント会社の派遣社員としてやってくる。少し変わっていながらも、笑顔で仕事を淡々とこなす彼女だが、実は他人の悩みや原風景が“見えてしまう”という特殊な力を持っていた。アタルは悩める社員に占い師のように助言を与えるが、未来を断定したり、都合のいい答えを提示したりはしない。彼女がするのは、あくまで相手が見ないふりをしてきた本音を言葉にすることだ。

描かれる人物は、評価されない若手、家庭と仕事の板挟みにあう管理職、無自覚にハラスメントをしてしまう上司など、どれも現実的な人ばかり。特別な事件が起きるわけではないからこそ、視聴者は「これは自分の話かもしれない」と感じてしまう。アタルの言葉は時に厳しく、逃げ道を塞ぐようでもある。しかし、その率直さがあるからこそ、登場人物たちは少しずつ自分の立ち位置を見直していく。

杉咲花×遊川和彦が生み出す説得力

主演の杉咲花が演じるアタルは、いわゆる“王道のヒーロー像”とは距離のある存在だ。派遣社員という立場でありながらも、必要なときには一線を越えて踏み込む。強烈なキャラクター設定でありながら、“ただの変わった人”という一括りで終わらせなかったのは、彼女の表現力あってこそだろう。
彼女を取り巻く社員たちもまた、単なる悩める登場人物では終わらない。志田未来、間宮祥太朗、志尊淳らが演じる同僚たちは、それぞれが異なる価値観や行き詰まりを抱え、アタルの言葉をきっかけに揺さぶられていく。誰か一人が特別視されるのではなく、職場全体が少しずつ変化していく過程が丁寧に描かれている点も、本作の大きな特徴だ。

脚本は『女王の教室』『家政婦のミタ』などで知られる遊川和彦が担当。彼の作品に共通するのは、きれいごとで終わらせない姿勢だ。本作でも、「こうすればうまくいく」という単純な答えは提示されない。変わるかどうかを決めるのは、あくまで本人。その突き放し方が、かえって視聴者の背中を押した。

スカッとするのに、軽くはない

本作は、見終わったあとに不思議な爽快感が残る。誰かが大袈裟に成敗されるわけでも、劇的な成功が描かれるわけでもない。それでも、心の奥に溜まっていたものが整理されるような感覚がある。派遣社員という立場と占い師という設定を通して描かれたのは、結局のところ“どう働き、どう生きるか”という問いのようにも思える。

SNSでも「毎回泣いてた」「大人になると見え方が違う」「続編希望」「頑張ろうと思えるドラマ」といった声が見られ、派手な展開ではないからこそ、視聴者それぞれの人生経験と重なり合い、長く心に残っている様子がうかがえる。

多くの人の記憶に残り続けているのは、この問いが今なお私たちの抱える悩みに共通するからだろう。日々の仕事に悩む人も、誰にも言えない思いを抱える人も、彼女の姿や言葉は画面を通して静かに届き、見ている者の視点を少し変えてくれる。時代が変わっても、ふとした瞬間に思い出す人がいる。それが、この作品の力なのだ。


ライター:柚原みり。シナリオライター、小説家、編集者として多岐にわたり活動中。ゲームと漫画は日々のライフワーク。ドラマ・アニメなどに関する執筆や、編集業務など、ジャンルを横断した形で“物語”に携わっている。(X:@Yuzuhara_Miri