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朝ドラで爆発した“SOSの一言”「寂しかったんだよね」「本当に家族になれる?」婚約間近に露呈した“登場人物の孤独”

  • 2026.1.9
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『ばけばけ』第14週(C)NHK

朝ドラ『ばけばけ』第14週は、言葉にできない思いのすれ違いと、異文化の狭間で揺れるヘブン(トミー・バストウ)の孤独に焦点が当てられた。“カゾク”という言葉が遠ざかっていくなかで、彼が本当に求めていたものとは何だったのだろう。SNS上でも「寂しかったんだよね」「本当に家族になれる?」と配慮の声が多かった14週を振り返る。

※以下本文には放送内容が含まれます。

すれ違う愛情と嘘

雨清水家の三男・三之丞(板垣李光人)が、毎月のように10円をもらいにやってきたのを見て、ヘブンはまたもや怒りとともに不安に駆られる。まさかトキ(髙石あかり)が松野家の借金に含め、雨清水家の家計さえ支えていたなんて知らないヘブンは、三之丞をトキの昔の恋人と勘違いし不機嫌になってしまった。

一方のトキも、この状況をなんとかしたいと思っていたはずだ。しかし、三之丞に毎月10円を渡していたこと、つまり松野家と雨清水家の両方を支えるために自分が奮闘していた事実を、なかなか言い出せない。なぜなら、お金のために結婚したなどと誤解されたくなかったからだ。

トキの口をつぐませたのは、恥でも嘘でもない。ただ、やっと心の通った相手を、傷つけたくなかったから。その優しさが沈黙となり、日本的な建前となって、やがてヘブンの不信に繋がってしまった。

さらに重なるのが、三之丞が母のタエ(北川景子)についていた嘘である。社長になったと偽りながら実のところ働きもせず、トキの10円で暮らしている事実を隠していた。その嘘もまた家族のための沈黙であり、“言わないことで暮らしを守る”という文化が、ヘブンには見えない壁となって立ちふさがる。

錦織がつないだ“異文化通訳”としての橋

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『ばけばけ』第14週(C)NHK

そんなすれ違いのなかで、唯一その橋渡しをしようとしたのが、通訳担当の錦織(吉沢亮)である。

錦織は、トキがなぜ隠し事をするのか、ヘブンにこう説明する。それは日本人にとって、相手を思うがゆえに、あえて言わないという、独特の文化があるのだと。トキは意地悪で隠しているわけでも、ヘブンを信頼していないわけでもない。ただ、一緒に上手くやっていきたいという願いだけが、先立ってしまったのだと。

このとき錦織は、単なる通訳ではなく、文化と感情の“媒介者”となっている。言葉にならない想いをすくい上げ、互いにわかり合えるように伝える。彼の静かな佇まいと、感情を押し付けない語り口が、トキとヘブンの関係にひとすじの光をもたらす。

いつか話してくれるはずだから、今は信じて待ってあげてほしい……錦織がヘブンに伝えたその言葉は、文化を超えて必要とされる“信頼”のかたちであり、家族となるための第一歩でもあった。

相手をわかろうとする勇気

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『ばけばけ』第14週(C)NHK

結婚披露パーティーで爆発したヘブンの「カゾク、ナル、デキナイ!」という言葉は、怒りの宣告ではなかった。それはむしろ、彼なりのSOSだったように思える。

嘘をつかれていることではなく、“自分だけ知らされていない”という構造そのものが、彼を孤独にさせていた。誰も自分を家族の輪に入れてくれていない。そんな寂しさと絶望が、ヘブンの言葉を荒々しくしてしまったのかもしれない。

しかし、その叫びによって、松野家と雨清水家の人々もまた、沈黙のなかに押し込めてきたそれぞれの“嘘”を明かしていくことになる。社長のふり、給金の分配、借金返済……。それぞれが、誰かのためを思って黙ってきたことを、ついに言葉にする。

すると、不思議なことに、それは嘘の露呈ではなく、“絆の可視化”として機能していく。

今週のラストで、トキとヘブン、そして両家は“家族”になった。それは本当の意味でお互いを理解しきったからではなく、分かろうとする姿勢を示したから。お互いに沈黙を抱えたままでも、それでも隣に立ちたい。言葉にならない想いのなかで、彼らは新しい“家族”の形を模索しはじめたのだ。


連続テレビ小説『ばけばけ』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_