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SNSで話題になった中学受験塾の「1月“平日”の講座」…子どもたちが教室にいない日々を経験した元教員が思ったこと

  • 2025.12.19

こんにちは。小学生を12年間教えていた元教員で、3歳の娘を知育でIQ130まで伸ばしたまーやです。数日前、ある大手中学受験塾の新設講座が物議を醸しました。平日全日程を受講すれば26万円という「入試直前必勝特訓」。しかし、私が衝撃を受けたのはその金額ではありません。この講座が1月の小学校の授業を欠席することを前提に組まれているという事実でした。この件に関してSNSでも「やりすぎでは?」などの議論が起こり、批判が多かったこともあってか、結局この講座は開催されない方向で話がまとまったようですが、これから先も似たような講座が開かれる可能性は否めません。「合格のためなら手段を選ばない」「学校に行っている場合じゃない」そんな空気が、受験生を持つ親御さんの間だけでなく、教育産業全体に広がっていることに、危機感を覚えるのは私だけでしょうか。今日は、私が教員時代に経験したある春の出来事を通して小学6年生の最後の日々の大切さについてお話しさせてください。

突然断ち切られた6年生の学校生活

私には、教員時代の、忘れられない経験があります。それは2020年の春でした。新型コロナウイルスの感染拡大により、全国の小学校で突然の「一斉休校」が告げられた時のことです。当時、私は6年生の担任をしていました。卒業式まであとわずか。「あと少しで卒業だね」「最後まで楽しもうね」と子どもたちと笑い合っていた日常が、ある日突然、コロナによってプツンと断ち切られたのです。翌日から学校は、静まり返りました。子どもたちの笑い声が聞こえない、ガランとした6年生の教室。後ろの棚には作りかけの図工の作品。黒板には、もう実行されることのないお別れ会の計画が書かれたままでした。本来なら、子どもたちの熱気で溢れているはずの教室で、どうしようもなく佇んでいたことを昨日のことのように覚えています。給食のおかわりでジャンケンをして騒いだり、卒業に向けてたくさんの思い出を作るはずでした。卒業に向けていろんな取り組みをする予定でした。子どもたちも、そんな3学期を思い描いていたんです。小学校6年生の卒業までの数ヶ月は、単に授業を受ける日数ではないのです。6年間の小学校生活を締めくくり、中学校という新しい世界へ飛び立つための、心の準備をするための儀式のような時間なんですよね。それを強制的に奪われた子どもたちの寂しさ、そして私たち教員の無念さは、言葉では言い表せませんでした。

「学校は休憩所」という悲しい言葉

学校に行きたくても行けなかった子どもたちを見てきたからこそ、今回のニュースを見て胸が痛みました。子どもたちの成長を見守るべき教育者側が、高額な費用を設定してまで、「あえて学校へ行かない」という選択肢を提示することに。「学校に行っても受験の役には立たない」「学校は塾の疲れを癒やすための休憩所。直前期くらいは休んで塾で追い込むべき」そんな声が聞こえてくることもあります。親御さんの、わらにもすがるような不安な気持ち、偏差値を少しでも上げたいという必死な親心も、痛いほどわかります。他にも最近のSNSでは、受験するお子さんのこんな声も見かけました。授業中に塾の宿題をやっている子どもの姿を先生が注意したところ「受験で受からなかったら、200万円払ってくれるの?」と返したそうなんですね。200万というのはおそらく塾の費用です。こんな言葉を言わなければならないほど、追い詰められているお子さんの胸中を想像すると、胸が苦しくなる思いでした。勉強面だけでなく、感染症が流行る時期だからこそ健康面に気をつけるという意味で、欠席を選択するご家庭も多いかと思います。学校をどこまで休むのかという線引きは、最終的にご家庭の判断になります。ですが、あえて元教員としての立場からお伝えすると、子どもたちが最後に教室で過ごす日々は、偏差値には変えることのできない、これからの人生を支える非認知能力(やり抜く力、他者と協調する力、感情をコントロールする力)を育む、大切な時間だと感じています。

子どもにとって大切なものは

コロナ休校の時、子どもたちが一番欲していたのは勉強ではなく、友達とのつながりでした。卒業までに残されたわずかな時間の中で、友達との思い出作りや最高学年としてできることは何かを、一生懸命考えて行動したいという気持ちに溢れていました。中学校に合格することはもちろん大切です。ですが、合格という目標のために友達や学校とのつながりを絶つことは、本当の賢さにつながるのでしょうか。今回の講座開設は、一歩間違えれば「結果さえ出せば、プロセスや他者との関わりはどうでもいい」という価値観を子どもに植え付けることになりかねません。どうか、受験勉強という戦いの中でも学校という日常を大切にすることを忘れないでほしいなと思います。

それでも不安な時は

とはいえ、周りが「感染症対策で学校を休む」「学校を休んで勉強している」となれば、不安になるのが親心です。「うちだけ学校に行かせて、風邪をひいて受験できなかったらどうしよう」「受験がうまくいかなかったらどうしよう」と怖くなる夜もあるでしょう。頑張ってきた日々を考えれば、学校を休ませるという選択も、当然ありえると思います。ただ、もし学校に行くという選択をした日があれば、その時はどうかお子さんの顔を見て、こう聞いてみてください。「今日、学校でどんなことが楽しかった?」たったこれだけでいいのです。この問いかけは、子どもにとって学校に行くことの価値を再確認するきっかけになりますし、親にとっては偏差値以外の我が子の成長に目を向けるきっかけになります。受験はゴールではありません。その先も続く長い人生を、豊かに生き抜くための通過点です。小学校生活の中でも「6年生」という学年は、子どもたちにとって特別なものです。最高学年のお兄さん・お姉さんとして頑張ってきた姿や、友人と最後の思い出を作りにランドセルを背負って通う最後の後ろ姿を、誇らしく見送ってあげてくださいね。

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【Profile】まーや(@ma_ya.chiiku)

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教員時代の習性と研究気質から、妊娠中に育児書を1000冊以上読破。14年間の教員経験の中で、生きる上では学力だけではなく、人間性も重要だと感じ、特に幼児教育の重要性について考えるように。乳幼児期の脳の発達やIQおよびEQに着目し、2年間の育休中に自宅保育と知育を行い、3歳の娘のIQを130までに伸ばした。北海道の一軒家で夫、4歳の保育園児(娘)との3人暮らし。

Instagram:まーや(@ma_ya.chiiku)

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