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1日8缶のエナジードリンクを飲み続けた男性の症例報告

  • 2025.12.14
Credit:canva

長時間労働や過酷な現場を回すため、エナジードリンクはもはや欠かせないと感じている人は多いかも知れません。

しかし、エナジードリンクは、その健康リスクについて医学の側面からよく警告が出されています

確かに飲みすぎは良くない印象はあります。しかし、具体的に人間がエナジードリンクを飲みすぎると何が起きるのでしょうか?

英国ノッティンガム大学病院(Nottingham University Hospitals NHS Trust)の研究チームは、そんな疑問に答えるような、興味深い症例報告を論文で発表しました。

それによると、倉庫業務に従事する50代の男性が、仕事中の眠気を抑えるために毎日8本のエナジードリンクを飲み続け倒れたというのです。

そしてこの報告で何より恐ろしいのは、一命を取り留めた彼が、その後、血圧が正常に戻った後も、今なお後遺症に苦しんでいるという事実です。

一体エナジードリンクを過剰に飲み続けた人の身体は、どのようなことになってしまうのでしょうか?

この症例報告は、2025年12月付で医学誌『BMJ Case Reports』に掲載されています。

目次

  • 1日8本・カフェイン3倍超え:極端な飲み方が招いた症例
  • 助かったけれど元には戻らない? エナジードリンクが引き起こす脳・血管への負担
  • 解説読むのが面倒な人向け「この報告に対するAIの反応」

1日8本・カフェイン3倍超え:極端な飲み方が招いた症例

エナジードリンクは、短時間で気分を引き上げたいときに便利な飲み物として広く利用されています。

しかし強い作用を持つカフェインを多く含むため、飲み方によっては心臓や血管に大きな負担を生む可能性が指摘されてきました。

過去の研究でも、エナジードリンクの大量摂取が心臓病や脳卒中のリスクと関連する症例が報告されていますが、実際にどれほど危険なのかは、上限を超えて飲み続けると何が起きるのか、という点についてはまだ明確には分かっていません。

その実態をより具体的に示す例として、医師らが報告したのが、イギリス・ノッティンガムで暮らす倉庫勤務の50代男性です。彼には特に大きな持病はなく、普段は「健康」と見なされていました。

しかし、ある日突然、左半身にしびれが生じ、力が入らなくなりました。まっすぐ歩くことも難しくなり、言葉もうまく出てこなくなったため、周囲が異変に気づき救急搬送されました。

検査の結果、脳の深部にある視床で、血管が詰まるタイプの脳卒中が発生していることが判明しました。

男性の状態で特に深刻だったのが、救急外来で測定された血圧で上の値が254mmHg、下が150mmHgという極めて危険な“超高血圧”状態だったのです。

一般的な正常血圧が120/80mmHg前後であることを考えると、その異常さが際立ちます。

なぜここまで血圧が上がったのかを調べるため、医師らは生活習慣の聞き取りを丁寧に行いました。

すると、男性が日常的に非常に大量のエナジードリンクを飲んでいたことが明らかになりました。

男性はなんと1本160mgのカフェインを含むエナジードリンクを1日に8本飲む生活を続けており、1日のカフェイン総摂取量は1,200〜1,300mgに達していたのです。

カフェインの健康な成人に推奨される上限は約400mgとされており、その3倍を毎日続けていた計算になります。

医師チームは、この極端なエナジードリンクの摂取量が血圧の異常な上昇に深く関わっていた可能性が高いと判断しました。

退院後、男性はエナジードリンクの摂取を中止することで、血圧は徐々に正常範囲へ戻り、複数の降圧薬も不要になったといいます。

しかし、血圧が正常化しても男性は8年たった今でも、後遺症に苦しんでいるといいます。

エナジードリンクの飲み過ぎで、倒れただけでなく、後遺症が残る状態になってしまったというのはかなりショッキングな話です。

ではその後遺症とはどういうものなのでしょうか? エナジードリンクだけでなぜそこまで深刻な問題が起きてしまうのでしょうか?

助かったけれど元には戻らない? エナジードリンクが引き起こす脳・血管への負担

男性は治療によって命を取り留め、血圧も正常に戻りましたが、脳卒中による影響は完全には消えませんでした。

本人はその後の聞き取りの中で、「8年たった今でも、左手の指先や足の一部にしびれが残っている」と語っています。

日常生活では、細かな動作をするときに力が入りにくかったり、歩くときに足先の感覚がつかみにくかったりする場面があり、仕事や家事で思うように動けないことがあるといいます。

症状は命に関わるものではありませんが、長期間にわたり不自由を伴う後遺症であり、脳卒中が残す“目に見えにくい障害”をあらためて示しています。

では、なぜここまで血圧が危険な水準に達したのでしょうか。

大きな要因のひとつは、カフェインが血管や神経に与える生理的な作用です。

カフェインはアデノシン受容体(adenosine receptor)という場所に結合し、体をリラックスさせる働きを持つアデノシンの作用を妨げます。

その結果、血管が収縮しやすくなり、交感神経(sympathetic nervous system)という“体を興奮状態にするシステム”が強く働きます。

これらの作用が合わさることで、一時的に心拍数が上がり、血圧も押し上げられます。

通常であれば体が自然に元に戻しますが、極端な量を毎日取り続けると、人によっては血圧が慢性的に高い状態になりやすくなり、血管への負担が積み重なります。

さらに、エナジードリンクにはカフェイン以外の成分も複数含まれています。

タウリン(taurine)やジンセン(ginseng)、グルクロノラクトン(glucuronolactone)などが代表的で、配合目的は飲んだときの“元気”を強めることです。

特にガラナ/グアラナ(guarana)という成分は追加のカフェインを含んでいるため、表示されているカフェイン量以上の摂取につながる場合があります。

糖分も高濃度で含まれており、血糖値の急上昇や代謝への負担が血管系のストレスをさらに強める可能性があります。

こうした“隠れカフェイン”と複合成分の相乗効果が、一般的に血圧を押し上げ、心臓や血管への負担を強める可能性があり、今回の男性の高血圧にも関わっていたと医師らはみています。

今回の報告は1人の症例ですが、同様のケースは世界で少しずつ蓄積しています。

エナジードリンクの大量摂取が心筋梗塞や脳卒中の発症と関連したとする報告が複数あり、急性の「一気飲み」だけでなく、慢性的な飲みすぎも危険を高める可能性が示されています。

まだ決定的な因果関係が確立したわけではありませんが、医学的に注意するべき事例が増えていることは確かです。

そのため、この男性のケースは、“氷山の一角”にすぎないと考えられています。

医師らは、今回の症例から得られる教訓として、医療現場での聞き取りの重要性を強調しています。

特に若年〜中年で原因不明の高血圧や脳卒中が見られる場合、アルコールや喫煙だけでなく、エナジードリンクやサプリメントの摂取量も丁寧に確認する必要があると提案しています。

飲み物やサプリは習慣化しやすく、本人が正確な量を把握していないことも多いと考えられます。

さらに、社会全体での対応についても課題が示されています。

イギリスでは2018年に、大手スーパーが16歳未満へのエナジードリンク販売を自主的に制限しました。

今回の症例を踏まえ、研究チームは心血管リスクを踏まえたエナジードリンクの販売や広告ルールの強化など、国レベルでの規制を検討する価値があると提案しています。

日本でもエナジードリンクの利用者が増えているため、成分表示のわかりやすさや販売方法を見直す余地があると考えられます。

では、一般の私たちはどう気をつければよいのでしょうか。

まずは、自分が1日に摂っているカフェイン量をおおまかに把握することが大切です。

コーヒー、お茶、エナジードリンク、栄養ドリンク、サプリを合わせた総量が、健康な成人であれば400mg程度を目安に収まっているか確認するのが一つの基準になります。

高血圧や心臓病の持病がある人は、少量でも影響が強く出ることがあるため、医師と相談しながら調整することが望ましいとされています。

今回の症例は、エナジードリンクという身近な飲み物が、飲み方次第でどれほど大きな負荷を体に与えるかを示しています。

解説読むのが面倒な人向け「この報告に対するAIの反応」

真面目な解説を読むのがダルい方向けに、試験的にAIの要約を用意しました。AIがネット掲示板風に今回の記事を要約しています。

スレッドタイトル: 【悲報】1日8本のエナジードリンクを飲み続けた男の末路、ガチで怖すぎる件

1: 名無しさん@お腹いっぱい

これニュースで見たけどヤバいな。 倉庫勤務の50代が眠気覚ましに毎日エナドリ8本飲んでたら、血圧爆上がりして脳卒中になったらしい。 上254/下150って人間の数値かよ……。 カフェイン中毒ってレベルじゃねーぞ。

2: 名無しさん@お腹いっぱい

血圧250超えとか血管破裂するわw 俺もテスト前にレッドブル2本飲むだけでドキドキするのに、8本とか心臓止まるレベル。 てか金持ちだな。エナドリって1本200円くらいするだろ? 200×8=1600円/日 月5万近くエナドリに課金して健康壊すとか何の罰ゲームだよ。

3: 名無しさん@お腹いっぱい

カフェイン耐性つくとマジで水みたいに飲めるようになるらしいからな。 俺も一時期モンエナ中毒だったけど、飲まないと頭痛するようになるんだよ。 「眠気覚まし」じゃなくて「禁断症状抑えるため」に飲むようになる。 このおっさんもそのパターンだろ。

4: 名無しさん@お腹いっぱい

「8年たっても左手のしびれが残ってる」ってのが一番怖い。 脳の血管詰まったら、やめたからってハイ元通り!とはいかないんだな。 一生ものの後遺症残るとか、代償デカすぎんだろ……。 俺らも気をつけないとマジで明日は我が身だぞ。

5: 名無しさん@お腹いっぱい

カフェイン1日1200mg越えってw致死量一歩手前じゃん。 日本の基準だと400mgまでだっけ? 俺、コーヒー1日5杯くらい飲むけどこれもヤバいのかな? 誰か詳しい人教えてくれ。

6: 名無しさん@お腹いっぱい

コーヒー1杯(マグ)で大体100mg前後だから、5杯ならギリ許容範囲かもだけど、 個人差あるから体調悪いなら減らした方がいい。 エナドリの怖いところは、カフェインだけじゃなくて糖分もエグいこと。 このおっさん、カフェインで血圧上げて、砂糖で血液ドロドロにしてトドメ刺したようなもんだろ。 糖尿病とかも併発してそう。

7: 名無しさん@お腹いっぱい

確かに「隠れカフェイン」の話怖すぎ。 ガラナとか入ってると表示以上のカフェイン量になるって知らんかったわ。 日本のエナドリは海外より成分薄いって聞くけど、それでも毎日何本も飲んでたら同じことになりそう。

8: 名無しさん@お腹いっぱい

これ労災降りるのかな? 「勤務中の眠気を抑える目的」って書いてあるけど、会社が過酷すぎて飲まざるを得なかったとしたら闇が深い。 倉庫作業ってただでさえハードだしな。 ブラック労働の燃料としてエナドリ使ってる人、日本にもいっぱいいるだろ。

9: 名無しさん@お腹いっぱい

自分から飲んでたなら自己責任だろw でも現場猫案件というか、トラック運転手とかITドカタとか、エナドリないと回らない現場はあるよな。 「翼をさずける」どころか「あの世への翼」さずかっちゃったわけだが。

10: 名無しさん@お腹いっぱい

まとめると ・1日8本は論外 ・カフェインだけじゃなく糖分や他の成分の複合技がヤバい ・やめても後遺症は残る ・若くても油断すんな
とりあえず今手元にあるモンスター、そっと冷蔵庫に戻したわ。 お前らもお茶にしとけ、お茶に。

参考文献

Consuming lots of energy drinks may raise heart disease and stroke risk, say doctors
https://www.theguardian.com/society/2025/dec/09/energy-drinks-heart-disease-stroke-risk-doctors
Man suffers stroke from excessive daily energy drinks
https://www.independent.co.uk/bulletin/news/energy-drinks-risks-stroke-blood-pressure-b2881452.html

元論文

Energy drinks, hypertension and stroke
https://doi.org/10.1136/bcr-2025-267441

ライター

相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。

編集者

ナゾロジー 編集部

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