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台風通過後に「ある病気」のリスクが日本全国で上昇していた

  • 2025.12.12
Credit: canva

毎年、日本列島を襲う台風。

この自然災害は直撃の最中だけでなく、台風が去った後にも注意が必要なようです。

このほど、東京科学大学の研究で、台風通過後の期間において「脳卒中」のリスクが上昇していることが確認されました。

研究の詳細は2025年11月9日付で科学雑誌『Environment International』に掲載されています。

目次

  • 台風去った後の「脳卒中」リスクとは?
  • なぜ台風は「脳」を襲うのか?鍵を握る「気圧の急変」

台風去った後の「脳卒中」リスクとは?

これまで、自然災害と健康影響を結びつける研究は多くありませんでした。

特に、脳卒中のように発症に複数の要因が絡む病気について、台風の影響を類型別に詳細に調べた研究は世界的に見ても例がありません。

研究チームは、2011年から2021年にかけて、日本全国で5月~10月に発生した脳卒中の緊急入院症例を分析。

そして、台風への「曝露期間」(台風通過当日〜6日後までの計7日間)と「非曝露期間」を比較した結果、衝撃的な事実が判明したのです。

まず、脳卒中全体の緊急入院リスクは、台風がない期間と比べて、台風曝露後の7日間で1.049倍に上昇していました。

約5%の上昇は、全国規模でみれば決して無視できない数字です。

さらにチームは、脳卒中を「虚血性(脳梗塞など)」と「出血性(脳内出血、くも膜下出血)」に分けて詳細に解析。

その結果、リスク上昇の傾向が顕著だったのは「出血性脳卒中」でした。

出血性脳卒中全体で見ると、リスクはなんと1.129倍(約13%増)に跳ね上がっていました。

内訳を見ると、脳の内部で血管が破れる「脳内出血」で1.131倍、そして「人生最悪の頭痛」とも呼ばれる「くも膜下出血」でも1.094倍と、いずれも高い上昇傾向が示されています。

この結果は、「台風通過後」という特定の期間が、特に血管が破れやすいタイプの脳卒中の発症を誘発している可能性を強く示しているのです。

なぜ台風は「脳」を襲うのか?鍵を握る「気圧の急変」

では、台風が過ぎ去った後に、なぜ私たちの脳血管が破れやすくなるのでしょうか?

この謎を解く鍵は、台風が持つ最も特徴的な物理現象、すなわち「気圧の急激な低下」にあると考えられています。

台風が接近・通過する際、周囲の気圧は大きく、そして短時間で変動します。

既存の研究では、この気圧の急激な低下が人体に影響を与え、血圧を上昇させる可能性があることが指摘されています。

高血圧は、脳内出血やくも膜下出血といった出血性脳卒病の最大の危険因子です。

台風が通過する際、急激な気圧の低下が血圧コントロールを乱し、もともと高血圧傾向にある人や、血管が弱っている人の脳の血管に過度な負担をかけることで、破綻(はたん)を引き起こしている可能性があるのです。

気候変動が進むにつれて、台風はさらに勢力を増し、これまで台風の影響が少なかった地域にも上陸する可能性が高まっています。

これは、日本全国で脳卒中リスクの上昇期間が拡大し、より深刻な健康被害が顕在化する可能性を示唆しています。

参考文献

台風通過後に脳卒中リスクが上昇することを全国解析で確認
https://www.isct.ac.jp/ja/news/8wgzygzwa34e

元論文

Association between tropical cyclone exposure and stroke hospitalization: A nationwide time-series analysis in Japan
https://doi.org/10.1016/j.envint.2025.109906

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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