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ブラジルの森で「新種のカボチャヒキガエル」を発見

  • 2025.12.11
新種のカボチャヒキガエル/ Credit: Luiz Fernando Ribeiro/CC-BY 4.0

ブラジルの大西洋岸森林の奥深くから、驚くべき新種の発見が報告されました。

その名の通り、体長わずか1センチメートルほどの極小サイズでありながら、鮮やかなオレンジ色。

カボチャヒキガエルの新種であり、新たに「ブラキケファルス・ルライ(Brachycephalus lulai)」と命名されました。

研究の詳細は英エッジ・ヒル大学(EHU)により、2025年12月10日付で科学雑誌『PLOS ONE』に掲載されています。

目次

  • 超小型カエルの新種
  • 名前と保全に込められた熱いメッセージ

超小型カエルの新種

今回新種と認定されたB・ルライは、ブラジル南部のサンタ・カタリーナ州にあるセーラ・ド・キリリ山脈の、海抜750メートル以上の高地にある雲霧林の落ち葉の中に生息しています。

このカボチャヒキガエルが属するブラキケファルス属は、現在42種が知られており、そのうちの35種は2000年以降に確認された比較的新しい発見が多いグループです。

彼らの特徴は、その驚異的な小ささ、そしてしばしば鮮やかな体色です。

しかし、B・ルライの発見において、研究者たちを導いたのは、その目立つオレンジ色ではありませんでした。

新種のカボチャヒキガエル/ Credit: Luiz Fernando Ribeiro/CC-BY 4.0
決め手となった「鳴き声のサイン」

研究チームは、この地域のブラキケファルス属の個体群を7年間かけてカタログ化する中で、新種の存在に気づきました。

その決め手となったのは、このカボチャヒキガエルの鳴き声です。

非常に小さく、落ち葉の中に隠れて見つけにくい彼らですが、オスがメスを呼ぶための「求愛のクローク(鳴き声)」は、他の近縁種とは異なる音を持っていました。

科学者たちは、この鳴き声を頼りにオスの居場所を突き止め、鳴かないメスは「無作為に」収集されました。

採取された標本は研究室で詳細に分析。

遺伝子解析に加え、その丸い吻(ふん、口先)の形ヒキガエルのような体形、そして他のカエルにはある第5指(第五趾)がないことなど、数多くの形態的な違いが確認され、晴れて新種と認定されました。

また、興味深いことに、この種には性的二形があり、メスがオスよりもわずかに大きいことが判明しています。

名前と保全に込められた熱いメッセージ

この小さな新種は、ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領に敬意を表して、「ブラキケファルス・ルライ(Brachycephalus lulai)」と名付けられました。

チームは、この献名について、単なる敬意だけでなく、「大西洋岸森林全体、そして特にブラジルの固有性の高い小型両生類の保全イニシアチブの拡大を奨励したい」という強いメッセージを込めていると説明しています。

小さな生息域と差し迫った脅威

この新種の推定生息域は、わずか約8平方キロメートルという極めて狭い範囲に限られています。

しかし幸いなことに、現在のB・ルライの生息環境は比較的自然のままの状態が保たれているため、IUCNレッドリストのカテゴリーでは「軽度懸念(Least Concern)」に分類されると提案されています。

一方で、サンタ・カタリーナ州に生息する他の多くの近縁種は、すでに絶滅危惧種に指定されています。

これは、草地の焼却、放牧、観光開発、採掘、そして森林破壊といった人間活動による生息地の喪失が、両生類にとっての差し迫った、そして深刻な脅威となっているためです。

両生類は、地球上で最も脅威にさらされている脊椎動物のクラスなのです。

現在、この森林の保護を確保するため、私有地の買い上げを必要としない連邦保全ユニットを設立するための正式な議論が進められています。

参考文献

New Species of Tiny Pumpkin Toadlet Discovered in Brazil’s Cloud Forests
https://www.sciencealert.com/new-species-of-tiny-pumpkin-toadlet-discovered-in-brazils-cloud-forests

New Species Of Tiny Pumpkin Toadlet Is The Size Of A Pencil Tip, And We Cannot Cope
https://www.iflscience.com/new-species-of-tiny-pumpkin-toadlet-is-the-size-of-a-pencil-tip-and-we-cannot-cope-81853

元論文

A new species of Brachycephalus (Anura: Brachycephalidae) from Serra do Quiriri, northeastern Santa Catarina state, southern Brazil, with a review of the diagnosis among species of the B. pernix group and proposed conservation measures
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0334746

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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