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脳が集中モードに入ると「体のある動作」が少なくなると判明

  • 2025.12.11
Credit: canva

私たちは日常的に、呼吸と同じように意識せず行う動作があります。

その一つが「瞬き(まばたき)」です。

これまでは主に目の乾燥を防ぐための反射と考えられてきましたが、実はこの無意識の動作が、私たちの「集中力」と深く連動していることが、最新の科学研究によって明らかになりました。

カナダ・コンコルディア大学(Concordia University)の研究チームは、騒がしい環境で会話を聞き取ろうとする際など、脳が極度の負荷にさらされると、人間は「瞬きを意図的に抑制する」ことを発見しました。

この反応にはどんな意味があるのでしょうか?

研究の詳細は2025年9月5日付で科学雑誌『Trends in Hearing』に掲載されています。

目次

  • ノイズが強まると「集中モード」に突入する脳
  • 生存競争から生まれた「注意力の最適化」

ノイズが強まると「集中モード」に突入する脳

従来の瞬きに関する研究は、ほとんどが視覚的な文脈、例えば、読書や運転中の目の動きに焦点を当てていました。

しかし今回の研究は、「聴覚」という異なる感覚を通じて、瞬きと認知機能の関係を調べた点に新しさがあります。

チームは約50人の成人参加者を対象に、ヘッドホンを通して短い文章を聞かせる実験を実施。

実験の鍵は、背景のノイズレベルを静かな状態から、言葉の聞き取りが非常に困難な「認知負荷が高い」状態まで変化させたことです。

アイトラッキンググラスで参加者の瞬きのタイミングと頻度を精密に記録・分析した結果、驚くべきパターンが明らかになりました。

・瞬きの抑制: 参加者は、文章を聞いている「最中」に、その直前や直後の期間と比べて、瞬きをする回数が一貫して低下しました。

・負荷の増大と抑制: この瞬きの抑制は、環境ノイズが大きくなり、言葉の理解が難しくなる、つまり「リスニング努力」(聴覚認知負荷)が増大するにつれて、より顕著になることが確認されました。

これは、脳が聴覚情報を解読するために、より多くの資源を必要とするとき、意識的な集中力とは別に、無意識に瞬きを「フリーズ」させていることを示しています。

瞬きという行為が、聴覚課題における精神的な努力を反映する、新たな生理学的指標として機能し得ることが示唆されたのです。

生存競争から生まれた「注意力の最適化」

瞬きを抑制する現象は、以前から視覚課題でも報告されていました。

「重要なものを見逃さないように目を閉じない」というメカニックな仮説です。

しかし、この研究は、瞬きの抑制が単に光の量や目の乾燥といった環境要因によるものではないことを示しました。

チームは、照明の明るさ(暗い、中程度、明るい)を変えた環境で同じ実験を繰り返しました。

その結果、瞬き率の抑制パターンは、照明のレベルに関係なく変わらないことが確認されました。

これは、瞬きの制御が目に入る光の物理的な変化ではなく、脳が情報を処理するために行う認知的な要求によって駆動されていることを意味します。

研究者たちは、この瞬き抑制のメカニズムを、脳が「注意力の途切れを最小限に抑える」ために進化した戦略だと解釈しています。

瞬きは一瞬ですが、その短い時間でも外部からの情報(視覚・聴覚)が途絶えてしまいます。

生存にとって重要な情報(例:敵の音、仲間の警告)を聞き逃さないために、脳は進化の過程で、「ここぞ」という瞬間に瞬きを止めるシステムを構築したと考えられます。

実際に、瞬きが多いリスナーほど、騒がしい状況下での音声認識のパフォーマンスが低下する傾向も見られました。

瞬きを抑制することは、単なる反射ではなく、最適なパフォーマンスを維持するための認知的な努力そのものだったのです。

参考文献

Blinking less may mean brain is working harder, study shows
https://medicalxpress.com/news/2025-12-brain-harder.html

元論文

Reduced Eye Blinking During Sentence Listening Reflects Increased Cognitive Load in Challenging Auditory Conditions
https://doi.org/10.1177/23312165251371118

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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