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仇討ちの完璧なシナリオ…治済替え玉作戦の首尾は⁉ しりあがり寿の「べらぼう」第47回ひとコマ劇場

  • 2025.12.10
@しりあがり寿

「べらぼう」第47回「饅頭(まんじゅう)こわい」の名場面は……

江戸時代中期の出版文化を描く令和7年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~(つたじゅうえいがのゆめばなし)」をしりあがり寿さんが絵と文でレビューする本連載。「あの顔は…⁉」と視聴者を震撼させた前回のラストシーン、その謎が明かされ、まさかまさかの大どんでん返しに全国のお茶の間は大騒ぎ! 「饅頭」の次にコワいのはあれか!と見事なオチまでついた「べらぼう」セミファイナル、しりあがり寿さんが描いたのは⁉ さぁさこちらへ、お目にかけやしょう。 ※以下ネタバレあり&記事の最後に話題の場面写真を掲載

蔦重のべらぼうな"案じ"で見事な組み絵が完成!

@しりあがり寿

絵と文=しりあがり寿

47回! お見事

としか言いようのない収め方ですねー! 感服つかまつりました(武士かよ)!

歴史の表面に残された「史実」はしっかり守る。それでいて残されていない歴史の裏側は思い切り想像を広げる。

「史実」として残されたたくさんのピース(斎藤を抱えていた蜂須賀家が流刑地の淡路を治めてた、とかいろいろ)とドラマ「べらぼう」のために考えられたピースが矛盾なくピシリピシリとはまって最後のピースは「能」でつながる能役者と一橋が同一人物だったというアクロバティックなアイデアでピシリ‼︎

いやー、考えついた時は思わず「やったね!」と乾杯でもしたんじゃなかろうか。

ホント、「写楽」という中身の曖昧な大きな袋の中で、描く人書く人武士に町人に死んだ人も生きてる人も最後に将軍様まで巻き込んで上手に組み立てたもんだなー、と恐れ入谷の鬼子母神(町人かよ)!

印象に残った場面もいっぱいあって、写楽が出来上がった時の記念写真みたいなプロジェクトメンバーの勢揃い、愚鈍なイメージだった清水様の最後の表情、そして何より蔦屋を訪れた定信の戯作好きの素顔。

なんだかんだ言ってもみんな楽しくて面白いことが好きなんだよね。現実、ツライことや厳しいことが多い世の中で、楽しいこと面白いことは生きていく救い。14年前、震災の避難場所を訪問した時、ふざけてはいけないと神妙にしてたら実は皆さん笑いを求めてたのには少し驚いた。もちろん人によって場合によって程度によって違うだろうけど、人から「楽しみ」は取り上げられないね。

そんな感じで次回、いよいよ最終回だよ。

蔦重死んじゃうの? ホントに?

ここは一つ、史実を曲げて実は海外に渡って次代のエンタメの代表、活動写真を発明したなんてオチはないのかな? リュミエール兄弟が映画上映したのが1895年、蔦重が亡くなったのが1797年。100年かー、蔦重が生まれるのが半世紀くらい遅かったら、映画のプロデューサーになってたんじゃないかな。

さあて、次回、最後までしっかりと見届けてやろうじゃねえか!
<続く>

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」

【第47回「饅頭(まんじゅう)こわい」あらすじ】
定信(井上祐貴)や平蔵(中村隼人)たちの仇討ち計画は、治済(生田斗真)に気づかれる。治済は毒まんじゅうで大崎(映美くらら)を死に追いやり、定信や蔦重(横浜流星)たちも追いつめられる。一時的に店を閉めた蔦重だったが、定信のもとを訪ね、将軍・家斉(城 桧吏)を巻き込んだ驚きの策を提言する。仇討ち計画は再び動き出し、定信は、体調を崩していた、清水重好(落合モトキ)の元を訪ねる…。

「阿波蜂須賀家お抱えの能役者、斎藤十郎兵衛(生田斗真:二役)と申しますが」。平蔵(中村隼人)が芝居町で声を掛けた男は一橋さまに瓜二つだった…! 写真提供=NHK
「釣りはいいので」。大崎(映美くらら)は蔦重(横浜流星)にすべて書き付けた文を託していた。 写真提供=NHK
将軍家斉(城桧吏)のもとに柴野栗山(嶋田久作)が届けたのは大崎が蔦重に託した文。記憶が蘇った家斉は栗山に問う。「余はいかにすべきであろうか」 写真提供=NHK
事は奇跡的に首尾よく運んだ。替え玉は城へ。本物は阿波へ出立。報告を聞いた三浦(原田泰造)と蔦重は田沼意次と意知の仏壇に手を合わせた 写真提供=NHK
無事営業再開した耕書堂にこの人がやってきた。黄表紙好きの定信(井上祐貴)。春町は我が神、蔦屋耕書堂は神々の集う社と蔦重に素のおのれを明かした定信。ふたりは春町を思う心を通じ合わせた… 写真提供=NHK

ときは江戸時代中期、泰平の世が長く続いた時代。江戸独自の文化が花開き、いまで言えば“メディア・プロデューサー”として多くの戯作者、絵師を世に出した蔦屋重三郎(横浜流星)を主人公にした物語が今年の大河ドラマ。脚本は「JIN-仁-」「大奥」「おんな城主 直虎」などを手掛けた森下佳子さんです。

【放送予定】[総合]日曜 午後8時00分 / 再放送 翌週土曜 午後1時05分[BS・BSP4K]日曜 午後6時00分 [BSP4K]日曜 午後0時15分

しりあがりことぶき◯1958年静岡市生まれ。多摩美術大学デザイン科卒業。幼少期から浮世絵が好き。小学校の学区内に『東海道中膝栗毛』の原作者・十返舎一九の生家があった。2014年紫綬褒章受章。北斎のパロディ作品の個展は2018年、2021年とすみだ北斎美術館にて開催、大きな反響を呼ぶ。パロディ作品集『しりあがり×北斎 ちょっと可笑しなほぼ三十六景』(小学館)を2022年に出版。

画・文=しりあがり寿 編集=内田理惠(婦人画報編集部)

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