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「ゲーム」ではなく「ソーシャルメディア」が若者の”注意力の低下”と関連していた

  • 2025.12.9
若者の注意力を低下させているのは、ゲームではなく、ソーシャルメディア / Credit:Canva

近年、若者の注意力が低下しているという声があがると、その原因として「スクリーンタイム」が挙げられることがあります。

しかし、この表現は非常に大ざっぱで、ゲーム・動画・ソーシャルメディアといった異なる活動をひとまとめにしてしまうため、どの要素が本当に影響しているのかが見えないという問題があります。

今回、スウェーデンのカロリンスカ研究所(Karolinska Institutet)の研究チームは、この課題を解くために、子どもたちのデジタル習慣を4年間追跡し、「ゲーム」「動画」「ソーシャルメディア」という3つのカテゴリーを分けて分析しました。

その結果、注意力の低下と関連していたのは「ゲーム」ではなくソーシャルメディアだけだったと判明しました。

本研究は2025年12月8日付の『Pediatrics Open Science』で発表されています。

目次

  • 10代の若者の注意力を低下させるのは、「ゲーム」ではなく「ソーシャルメディア」だった
  • なぜソーシャルメディアだけ注意力を乱すのか?

10代の若者の注意力を低下させるのは、「ゲーム」ではなく「ソーシャルメディア」だった

スマートフォンが子どもに普及したこの10年で、デジタルメディアが注意力に影響しているのではないかという議論が強まりました。

ただし、従来の研究は“デジタルメディア全体”をまとめて扱うことが多く、活動の内容による違いを丁寧に検証できていませんでした。

そこで今回の研究チームは、デジタル活動の種類ごとの影響を明確に切り分けることを最大の目的として調査を行いました。

対象となったのは、米国の大規模追跡研究「ABCD Study」に参加した子どもたちです。

研究者は子どもたちを4年間追跡し、計5回の調査を行いました。

デジタル利用時間は「Youth Screen Time Survey」を用い、子ども自身の自己申告で測定されています。

この調査で扱われた活動は、動画視聴(テレビやYouTubeなど)、ゲーム、そしてテキストのやり取り、ソーシャル・ネットワーキング・サイトの利用、ビデオチャットといった内容で、後者3つをまとめてソーシャルメディア利用と分類しています。

ADHDの中核症状である不注意と多動・衝動性は、親が回答する評価尺度を用いて毎年評価されました。

さらに、唾液DNAからADHDの遺伝的リスク(ポリジェニックリスクスコア)も算出し、遺伝要因が影響を増強しているかも検証しました。

その結果は非常に明確でした。

不注意の増加と継続的に関連していたのはソーシャルメディアだけでした。

年ごとの効果は小さいものの、4年間で累積するとある程度の増加に達するという説明も示されています。

一方で、この相互作用は動画視聴やゲームでは観察されませんでした。

さらに「不注意が高い子ほどソーシャルメディアを増やすのでは?」という逆因果関係も検証されましたが、分析ではソーシャルメディア利用が後の不注意増加を予測し、不注意はソーシャルメディア利用の増加を予測しないという一方向の関連が確認されています。

また、遺伝リスクの高い子も低い子も「ソーシャルメディアが不注意を悪化させる」傾向は変わらず、遺伝によって影響が強まることはありませんでした。

では、なぜソーシャルメディアだけが若者の注意力を乱すのでしょうか。

なぜソーシャルメディアだけ注意力を乱すのか?

研究者は、ソーシャルメディアが注意力に与える影響の理由として、絶え間ないメッセージや通知による中断を挙げています。

こうした割り込みは、その瞬間の集中を乱すだけでなく、長期的には不注意の増加に結びつく可能性があると考えられています。

一方でゲームは、一定の時間に区切られたセッションで行われ、1つの課題に集中し続ける構造を持ちます。

研究者は、この違いがソーシャルメディアとゲームの影響差の背景にある可能性を示唆しています。

今回の研究は、効果量そのものは大きくないと述べています。

しかし、平均的な不注意が社会全体で少しずつ押し上げられると、ADHD診断の境界を超える子どもが増えるという「人口レベル」の問題が生じ得ます。

論文中でも、小さな平均の変化が集団全体では意味のある増加につながり得るという点が具体的に説明されています。

また研究チームは、9歳頃は1日約0.5時間だったソーシャルメディア利用が、13歳頃には約2.5時間へ増えたという傾向にも触れ、早期利用の広がりを踏まえて年齢確認の厳格化やガイドライン整備の必要性を示しています。

ソーシャルメディアは現代の生活に欠かせないツールですが、その影響は静かに、そして確実に積み重なっていきます。

子どもたちの注意力を守るために、社会全体で使い方を見直す時期に来ているのかもしれません。

参考文献

Social media, not gaming, tied to rising attention problems in teens, new study finds
https://theconversation.com/social-media-not-gaming-tied-to-rising-attention-problems-in-teens-new-study-finds-271144

元論文

Digital Media, Genetics and Risk for ADHD Symptoms in Children – A Longitudinal Study
https://doi.org/10.1542/pedsos.2025-000922

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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