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世界的に見て珍しい現象が起きている…日本の「若い女性の幸福度」が急上昇している納得の理由

  • 2025.12.3

日本の若い女性の幸福度が顕著に上昇している。拓殖大学教授の佐藤一磨さんは「世界的に若者のメンタル状況の悪化と幸福度の低下が指摘される中、これは珍しい現象といえる。その背景には結婚、出産への社会的圧力の変化があるのではないか」という――。

日本の女性は本当に生きづらいのか

「日本の女性は生きづらい」

このような言説を目にすることがたまにあります。しかし、1966年から2019年までの長期データを丹念に追うと、まったく別の姿が浮かび上がります。

実は、日本の女性の「生活満足度」は、半世紀の間に着実に上昇していたのです。

なぜ、そんな変化が起きたのでしょうか。昭和・平成にかけて女性の生き方はどう変わり、それが満足度にどんな影響を与えたのでしょうか。本記事では、その実態に迫ります。

昭和は「1本のレール」しかなかった

戦後から昭和にかけて、日本の社会における「女性の生き方」はほぼ1本のレールに決まっていました。女性は結婚すれば家庭に入り、専業主婦として家事と育児を担う。夫は会社で働き、一家の家計を支える。

線路
※写真はイメージです

こうした「男女の役割分業」は、当時の常識であり、社会全体が疑うことさえしなかった価値観でした。

若い女性のキャリアはどうだったのでしょうか。学校を卒業して企業に就職しても、20代半ばで「寿退社」するのが一般的でした。これは単なる慣習ではなく、制度としてもそのように設計されていた面があります。

労働省が1966年に実施した『既婚女子労働者に関する調査』によると、当時の企業には女性の定年を25歳や30歳に設定していた例が実際に存在しました。

つまり、女性は“長く働くことを想定されていなかった”のです。退職後、子育てが落ち着いた頃にパートで職場に戻る女性もいましたが、それはあくまで少数派でした。

当時、社会全体として「家庭に入ること=幸せ」と考えられていた時代だったと言えるでしょう。

一気に広がった“女性の人生の選択肢”

しかし、時代は大きく動きます。

1985年、男女雇用機会均等法が成立し、企業の採用・昇進の場での男女格差を是正する流れが生まれました。これをきっかけに、女性の就業率はさらに上昇。1992年にはついに共働き世帯が専業主婦世帯を上回ります。同じ年に育児休業法も施行され、出産後も働き続けられる制度的な基盤が整い始めました。

「CHOICE」と書かれたブロックを持つ人の手
※写真はイメージです

さらに2016年には「女性活躍推進法」が施行され、企業に女性管理職の登用や職場環境の改善を求める動きが広がりました。この結果、大企業を中心に、女性の管理職比率はゆっくりながらも上昇しています。

このように、日本の女性は昭和の「専業主婦モデル」から平成の「共働きモデル」へ、そして平成後期から続く「女性活躍推進モデル」へと移行してきたのです。社会の期待も、働き方の形も、もはや昭和とはまったく異なるものとなりました。

では、この変化は女性の幸福を高めたのでしょうか。それとも、別のプレッシャーを生み出しているのでしょうか。

この点をデータで実際に検証してみたいと思います。

幸福度を測る「もうひとつの物差し」

今回注目するのは、1966年から2019年までの女性の「生活満足度」です。これは「あなたは、全体として、現在の生活にどの程度満足していますか?」というシンプルな質問に対して「満足」と答えた人の割合を示したものです。このデータは、内閣府の「国民生活に関する世論調査」によって、半世紀以上にわたり同じ手法で集められています。

実は、この「生活満足度」は、社会科学の研究では幸福度(ウェルビーイング)を示す代理指標として広く用いられてきました。日本では、長期間にわたり幸福度を直接測定したデータが存在しないため、今回はこの生活満足度をもとに、女性のウェルビーイングの変化をたどっていきます。

生活満足度は「景気と連動しながら上昇」

それでは実際に女性の満足度(生活に満足している割合)の推移を示した図表1を見ていきましょう。この図から2つの結果が読み取れます。

【図表1】女性の生活満足度の推移
出典=「国民生活に関する世論調査」を加工して作成

まず1つ目は、生活満足度が景気の動きと密接に連動しているという点です。

昭和の時代には、第1次オイルショックで満足度が急落し、その後のバブル期にかけて上昇していきました。平成に入ると、バブル崩壊の影響で再び満足度が低下。しかし、2008年のリーマンショックを経て以降、むしろ上昇傾向に転じているのが特徴的です。

つまり、女性たちの「生活への満足感」は、景気の波に敏感に反応してきたと言えるでしょう。好景気のときには上向き、不況期には下がる。生活の実感が経済動向と直結しているのです。

景気にかかわらず長期的な上昇トレンドにある

もう1つのポイントは、長期的に見ると満足度そのものが上昇トレンドにあるという点です。

1960年代から2010年代までの生活に満足している割合を平均値で比較すると、65.3%(1960年代)、65.2%(1970年代)、69.4%(1980年代)、71.2%(1990年代)、64.1%(2000年代)、71.7%(2010年代)となっています。

2000年代は景気低迷の影響を受けて一時的に落ち込みましたが、2010年代に入ってからは回復基調にあり、平成後期の女性は昭和期の女性よりも、平均的に生活満足度が高いことがわかります。

海辺でリラックスする女性
※写真はイメージです
「充実感」も長期的に上昇傾向にある

今回使用した調査には「日頃の生活の中で,どの程度充実感を感じているのか」という質問もあるのですが、それを見ても女性の値は長期的に上昇傾向にあります(図表2)。

【図表2】女性の生活の充実感の推移
出典=「国民生活に関する世論調査」を加工して作成

日本の女性の生活満足度は、長期的に見ると上昇トレンドにあるわけですが、年齢によってこの傾向に違いはあるのでしょうか。この点を確認するためにも、続く図表3では10年ごとの年齢階級別にみた女性の満足度の推移を見ています。

【図表3】年齢階級別の女性の生活満足度
出典=「国民生活に関する世論調査」を加工して作成
20代~40代女性の満足度が上昇

この図から2つのポイントが読み取れます。

まず注目すべきは、20代と60歳以上の女性の満足度が比較的高く、40代~50代で低下する傾向がある点です。

このパターンは、世界中の幸福度研究でもよく知られた「U字型カーブ」と呼ばれる現象と一致します(*1)。

多くの研究によると、20代の若年期には将来への希望や自由度が高く幸福感が強い一方、40代~50代では家庭・仕事・介護などの負担が重なり、満足度が低下しやすいことが分かっています。そして、子育てや仕事が一段落する60代以降に再び満足度が回復するという動きを見せます。

今回の日本のデータでも、年齢階層がやや粗いため典型的なU字型とは言い切れませんが、近い傾向が見られました。

次に注目すべきは、2019年の満足度が上昇している点です。特に、20代・30代・40代の上昇幅が顕著でした。

若い女性の満足度上昇は「世界では珍しい現象」

実は、この結果は世界的に見ると珍しい現象です。

なぜならば、海外の研究で若年層のメンタルヘルスが近年急速に悪化し、その結果、若年層の幸福度が下がっていることが指摘されているからです(*2)。

この点はダートマス大学のデビッド・ブランチフラワー教授によって指摘されており、アメリカやイギリスだけでなく、発展途上国も含めた34カ国において、若年層のメンタルヘルスが悪化していることが明らかにされています。

確かに日本においても若年層のメンタルヘルスの悪化を示すデータがあるのですが、生活満足度自体はむしろ改善しており、プラスとマイナスの両方の結果が同時に存在する状態です。

この背景についてはまだ詳細な分析がないため明確な理由はわかりません。ただ日本では2010年以降、急速に失業率が低下し、人手不足が叫ばれるようになっています。大学生や高校生が就職活動で大変だという話も聞かなくました。このような労働市場の需給状況の改善が影響を及ぼしている可能性があるかもしれません。

女性の満足度を向上させたもの

長期的に見た場合、日本の女性、特に若年層を中心に生活満足度が向上しているわけですが、この背景にはさまざまな要因が考えられます。

中でも重要な要因として、「人生を自分で選べるようになったこと」があげられるでしょう。

幸福度に関する研究では、人生の選択の自由が大きいほど幸福度が高く、不安感が低下することがわかっています(*3)。「これしか選べない」という状況よりも「ほかにも道がある」という状況の方が人は心理的に強くなれるというわけです。

昭和から平成にかけての日本の女性を取り巻く環境を見ると、昭和では結婚後に専業主婦になるという選択肢が主流であり、その他は選びにくい時代でした。しかし平成に入り、共働きが一般化するとともに、女性には「働く/働かない」「続ける/戻る」という選択肢が生まれました。

同時に、「結婚すべき」「子どもを持つべき」という強い社会的圧力も弱まり、結婚・出産は“義務”ではなく“選択”として受け止められるようになりました。

平成後期には、「仕事は自立のために続ける。でも結婚や出産は自分で決めていい」という価値観が社会に浸透し、女性が自分の人生を主体的に設計できる土台が整ってきました。

こうした変化が、女性の満足度を底上げしたと考えられます。

「自分らしい幸せ」をつかみ始めている

昭和から平成へと時代が移るなかで、日本の女性の生き方は大きく変わりました。

かつて「一つの人生」しか許されなかった時代から、「自分で選べる人生」へ。

その変化は、女性たちの満足度を着実に押し上げています。もちろん、両立の悩みや将来不安など新たな課題もありますが、選択肢が広がったことで、多くの女性が「自分らしい幸せ」をつかみ始めているのも事実です。

日本の女性の幸福は、いま確実に新しい段階へ向かっていると言えます。

〈参考文献〉
(*1) Blanchflower, D.G. (2021) Is happiness U-shaped everywhere? Age and subjective well-being in 145 countries. Journal of Population Economics, 34, 575–624.
(*2) Blanchflower, D. G., Oswald, A. J., & Xu, X. (2024) The declining mental health of the young and the global disappearance of the unhappiness hump shape in age. NBER Working Paper No. 32337.
(*3) 西村和雄・八木匡(2020)「幸福感と自己決定―日本における実証研究」RIETI Discussion Paper Series 18-J-026

佐藤 一磨(さとう・かずま)
拓殖大学政経学部教授
1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。

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