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素材の力を借りて品格を磨く。繊細で力強いジャパン・コスメの魅力

  • 2025.11.27

自然との共生により培われた知恵で美を磨く

今、欧米やアジアのフード業界でトレンドとなっている抹茶。ドリンクは言うまでもなく、スイーツ、料理とさまざまに活用され、〝MATCHA〞はもはや世界の言葉。健康志向を背景に、カテキンなどを含むスーパーフードとして話題になったこと、SNS映えするキレイな色がインフルエンサーの心をつかんだことなどの要因に後押しされて、おなじみの存在となっている。

フード分野ではそのほかにも、柚子、わさびといった日本産の食材が海外で市民権を得ていることを知っている人も多いだろう。そんな傾向を受けてというわけではないが、目下、美容の世界でも和の素材に注目が集まっている。

まずは発酵成分。「発酵」は日本だけのものではないので、ここでは米を発酵させた成分に絞って見ていきたいのだが、今年に限っても、その米由来の発酵成分を使った新製品を、FASクレ・ド・ポー ボーテコスメデコルテなどのブランドが次々と発表しているのは美容フリークでなくても見逃せない!

発酵コスメの元祖といえば、1980年にデビューした、ご存じ、SK - II。日本酒をつくる杜氏の手が美しいことから、発酵成分の「ピテラ」が見出されたというエピソードはあまりにも有名だ。その後、2001年に勇心酒造が開発した「ライスパワーNo.11」が「肌の水分保持能を改善する」有効成分として公に認められたりと、発酵コスメは世の中に広く受け入れられていく。

そして、今の発酵コスメブームを牽引しているブランドがFAS。京都府京丹後市の黒米を用いた「黒米発酵液」を配合したスキンケアは、高い効果感と、産地や素材を前面に打ち出した戦略で大成功を収めることに。続く今季の新製品でいうと、クレ・ド・ポー ボーテは、肌の天然保湿因子を構成するアミノ酸が豊富に含まれる成分をつくろうと、麹菌と米の組み合わせを模索。乾燥ダメージへの抵抗力を高めるローションの開発につなげている。

またコスメデコルテは、白色玄米と黒麹菌の掛け合わせで発酵液を完成。真皮の細胞が老化細胞に変化するのを防いで、エイジングケアするという。どちらも狙うのは、これまでの発酵ケアの枠を超えたハイレベルな手応え!

FAS 日本らしい発酵成分で目まわりのトラブルを網羅的にケア

目まわりのたるみの原因となる眼輪筋の衰えに着目し、京都産くぬぎ酵母エキスを開発。多くの有用成分を含む黒米発酵液とともに目もとの悩みを全方位的にケア。ザ ブラックリフト アイクリーム 15g ¥16,500/FAS(シロク)
目まわりのたるみの原因となる眼輪筋の衰えに着目し、京都産くぬぎ酵母エキスを開発。多くの有用成分を含む黒米発酵液とともに目もとの悩みを全方位的にケア。ザ ブラックリフト アイクリーム 15g ¥16,500/FAS(シロク)

クレ・ド・ポー ボーテ 厳選した麹による発酵エキスで深い潤いを

約4万通りの中から、アミノ酸を多く含む麹菌と米の組み合わせを選定。浸透技術で肌にしっかり届ける。ローションエサンシエルC 170ml ¥14,300/CLÉ DE PEAU BEAUTÉ(クレ・ド・ポー ボーテ)
約4万通りの中から、アミノ酸を多く含む麹菌と米の組み合わせを選定。浸透技術で肌にしっかり届ける。ローションエサンシエルC 170ml ¥14,300/CLÉ DE PEAU BEAUTÉ(クレ・ド・ポー ボーテ)

コスメデコルテ 黒麹発酵液配合のローションで老化の根本に迫る

秋田産白色玄米と選び抜いた黒麹菌を原料に、独自の発酵プロセスでつくられた黒麹発酵液がカギ。老化の根本に作用し、あらゆる悩みに対応。ユース パワー エッセンス ローション 150ml ¥16,500/DECORTÉ(コスメデコルテ)
秋田産白色玄米と選び抜いた黒麹菌を原料に、独自の発酵プロセスでつくられた黒麹発酵液がカギ。老化の根本に作用し、あらゆる悩みに対応。ユース パワー エッセンス ローション 150ml ¥16,500/DECORTÉ(コスメデコルテ)

日本を代表する美肌素材、シルク

さて、日本の素材で忘れてはならないのがシルク。カネボウ化粧品では、SENSAIなどのブランドではシルクの成分を化粧品に取り入れている。

こちらも発酵成分と同様に、紡績工場で絹糸を紡ぐ女性の手が美しいことから、生糸に含まれる保湿成分が発見され、シルク成分を使った化粧品の開発に至ったのだとか。また実際、シルクの主成分のタンパク質は肌の組成に近く、保湿効果があることはよく知られている。現在では、ほかの成分を組み合わせたりして、シルクはより高度な役割を果たすように。

SENSAI の「小石丸シルクEX」という成分は、肌のヒアルロン酸合成、コラーゲン合成、抗酸化、抗炎症などをサポートするハイスペックぶり。そしてポーラ B.Aでは、希少な黄金の繭から抽出した成分「ゴールデンLP」をたるみケアへのアプローチに応用し、配合している。

SENSAI リッチなクリームでフォルムを美しく再構築

小石丸シルクEXを配合。シワをケアし、肌を引き締め、すっきりとした顔に。優雅な感触の愛好者も多い。トータルフォルムエキスパート リンクルアンドリフトクリーム(医薬部外品) 50ml ¥33,000/SENSAI(カネボウ化粧品)
小石丸シルクEXを配合。シワをケアし、肌を引き締め、すっきりとした顔に。優雅な感触の愛好者も多い。トータルフォルムエキスパート リンクルアンドリフトクリーム(医薬部外品) 50ml ¥33,000/SENSAI(カネボウ化粧品)

真珠、椿、お茶……。昔からの素材を新たな形で活用

日本の素材の活用例はまだまだたくさん。たとえばミキモト コスメティックスが研究を続けている真珠。真珠の効用は和漢の世界では古くから知られていたというが、今では真珠由来のコラーゲンや保湿成分がスキンケアで活躍中。さらに同じく古来、活用されているのが椿。ヘアケア成分として名高い椿オイルの歴史は平安時代に遡るそうだけど、最近では、資生堂がアルティミューンで椿油の搾りかすを麹菌で発酵させたエキスを用いたりと、新しい動きも。

またお茶に関しては、実は茶の葉よりも茶の実を搾って作るオイルが注目の的だ。ナチュラル成分に強いTHREEでは、茶葉を摘み取った後、廃棄される茶の実を搾って、オイルを採取。リノール酸やオレイン酸をたっぷり含むこのオイルが、いろいろな製品に用いられている。

それにしても今なぜ、古くからの素材が見直されているのか? ひとつには技術が進化したから。昔、経験的に「肌にいい」とされていた成分が、成分分析などの技術のおかげで「なぜ肌にいいのか」が明らかに。

加えてピテラなど、以前からある成分の働きが新たに発見され、活用に拍車がかかっているのも興味深い。そして、これは日本の素材に限らないが、多くの種類の微量な成分を含む自然の素材には、さまざまな働きが期待できるから。つまりこうした素材は宝の山! 素材のパワーとサイエンスが掛け合わされて、その波は世界中に広がりつつある。

テクスチャーの配合の妙もジャパン・ビューティーの粋

日本発で注目されているのは素材だけではない。そのひとつが繊細な感触だ。肌どけのいいクリーム、あっという間に浸透する美容液……。背景にあるのが、処方技術の進化、とりわけ水と油を混ぜる乳化技術の進化だ。

乳化の基本は、水が油を囲むO/W(オイルインウォーター)と油が水を囲むW/O(ウォーターインオイル)。前者はさっぱり、後者はこっくりした仕上がりになるのだが、O/W/O、W/O/Wといったタイプも現れ、バリエーションは続々と。さらに今では、高い圧力をかけて乳化粒子を小さくし、化粧水の中に入れたり、ポリマーを加えて感触を調整したりと製法は無限。

そこには「美は細部に宿る」と信じ、感触にこだわる開発者たちの想いが生きている。素材も、感触も! 進化を遂げて世界に羽ばたくジャパン・ビューティー。その未来を見守りたい。

問い合わせ先/

シロク 050-5433-5371

クレ・ド・ポー ボーテ 0120-86-1982

コスメデコルテ 0120-763-325

カネボウ化粧品 0120-518-520

Text: Nobuko Irie Editor: Misaki Kawatsu

※『VOGUE JAPAN』2025年12月号「世界が注目するニッポン・ビューティーの可能性」転載記事。

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