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【珍奇の現場】鉱物結晶形態学の殿堂 〜高田クリスタルミュージアム探訪記〜

  • 2025.11.26
「珍奇の現場」 ツーソン・ショー レポート2023「鉱物の道は、水晶に始まり、水晶に終わる」<前編>

自然がつくり出す鉱物の結晶。その美しさを前に、「どうしてこんな形になるのだろう?」と不思議に思ったことはないだろうか。本誌でも基本構造についてのコラムを設けたものの、取材の際には「x面の位置が……」「ミラー指数が……」といった未知の専門用語が次々と飛び出し、正直、なんとなく理解した気になってやり過ごしてきた場面も多かった。鉱物の美しさを語る特集をつくっておきながら、これはいかん!もう一度基礎から学び直したい!そう思い立って訪れたのが、このミュージアムである。

結晶形の模型

ここ「高田クリスタルミュージアム」は、おそらく日本で唯一、結晶形態学の解説展示に特化した博物館。館長の高田雅介さんは、結晶形態学に関する著書も多く、結晶の形の秘密を広く伝える活動を続けるスペシャリストだ。館内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは「7つの結晶系」の模型。鉱物の本では必ず登場するこの「7つの結晶系」だが、実はこれ、鉱物の“外形”そのものを分類したものではない。恥ずかしながら、自分はこれをかつて「すべての鉱物の形がこの7つに当てはまるの?それにしては当てはまらない形の鉱物もたくさんあるけど……」などと誤解していた。しかし、これは鉱物を形作る「原子が並ぶ最小単位=単位格子」の形を示すものなのだ。

7つの単位格子の形の模型
7つの単位格子の形を解説する模型たち。
正六面体の結晶の模型
正六面体の結晶が、単位格子が積み重なって構成されている様子が、模型だとよくわかる。
正六面体の結晶の模型
単位格子が階段状に積み上がって結晶が出来上がる様子が、直感的にわかる模型たち。
鏡像体の模型
水晶の鏡像体についての解説。ちなみに「x面」などと呼ばれる面記号は、ほぼ水晶を解説するときにしか使われないので、そんなに気にしなくていいそう。

そして、この単位格子の形は7系統しか存在しない。鉱物は、この小さな原子ブロックが規則正しく積み重なってできるため、原子配列の幾何学的な制約により正五角形や正七角形の結晶面は存在しないというわけである。鉱物の“外形”、つまり実際に目にする結晶の形は、この7つの“系統”に限定されるわけではなく、実に多様なのだ。

高田クリスタルミュージアム・高田館長が説明している様子
単位格子の原子模型を見せながら解説してくれた高田館長。
展示室の様子②
コンパクトながら有益な情報がぎっしりと詰まった展示室。
日本産鉱物の正確な結晶形態を描いた「日本産鉱物の結晶形態」
単位格子を地道に一つずつ積み上げ、あまたの日本産鉱物の正確な結晶形態を描いた館長渾身の一冊『日本産鉱物の結晶形態』。自費出版本のためこのミュージアムでしか買えない必携の書。
高田クリスタルミュージアム高田館長
展示場の横にはカフェも併設されている。ここで高田館長にはさまざまなディープな結晶形態に関するお話を聞けたので、また「珍奇鉱物」特集を作る際にはぜひご紹介したい。

……と、こうして文章でがんばって説明しようとはするものの、どうにもわかりにくい。比較的わかりやすかった展示の解説でも文字にするとこうなるのか……。

館内で展示されている立体模型などを実際に目にすると、その仕組みが驚くほどスッと理解できるのだけれど。これは、もう一度実際行ってみて、その展示や高田館長の解説を体験してみてほしい。鉱物の美しさを“眺める”だけでなく、その美しさを形づくる“構造”にまで踏み込みたくなった人にこそ、このミュージアムはホントにおすすめなのだ。迷わず行けよ、行けばわかるさ。

Information

高田クリスタルミュージアム

住所:京都市西京区大原野灰方町172-6
営:木曜・金曜・土曜・日曜
開館時間:10:00-16:00
HP:https://www7b.biglobe.ne.jp/~takada-crystal

profile

川端正吾

かわばた・しょうご/珍奇植物、珍奇昆虫、珍奇鉱物などを特集する「珍奇シリーズ」の企画編集を担当。ADの小宮山秀明とともに、自然科学をテーマにした出版レーベル「STRAIGHT」も運営している。

11月6日〜30日まで、〈六本木 蔦屋書店〉にて、川端さんの運営する出版レーベル「STRAIGHT」のPOPUP SHOP「Biophilic Showcase -JEWELS-」が開催中。植物・鉱物・昆虫・数学・宇宙など、自然科学の美しさをテーマにしたSTRAIGHTの書籍と、それらの世界観を映す標本やオブジェを展示・販売されています。今回はクリスマスシーズンに合わせて、「宝石(JEWELS)」をテーマに開催。PEANUTS MINERALSによる宝石質のファインミネラル、そして、昆虫標本商・花滝からはホウセキゾウムシやカタゾウシムなど、実際に装飾品としても使われている輝く虫の標本も販売されます。

HP:https://store.tsite.jp/roppongi/event/shop/50925-1605281031.html

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