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カップルや夫婦の倦怠期はどう乗り越えるべき? セックスレスや離婚を回避し、円満な関係を長持ちさせる方法

  • 2025.11.20

倦怠期の実情とその危うさ

the fun mini figure marry on church

パートナーシップの問題についてのカウンセリングの現実はというと、倦怠期の初期段階で相談に訪れるケースは稀で、その多くは、長期のセックスレスや浮気、離婚危機など、問題が深刻化してから初めて扉を叩く。一般に、恋愛感情は3年ほどで落ち着き、“情”へと移行すると言われているが、この移行がうまくいかず、初期の倦怠期を放置すると、やがて大きな亀裂へと発展する。

「この“情”の段階を上手に迎えるためには、ラブラブ期にこそ価値観や許容範囲について、じっくり話し合い、理解を深めておくことが大切。また倦怠期のサインを見逃さず、初期に向き合えば、最悪の事態は回避できる」と美紀子氏は言う。

倦怠期とは? その原因と主なサイン

Frustrated Afro Couple Avoiding Eye Contact Sitting At Therapist's Office

倦怠期とは、ふたりの心の距離が少しずつ広がっていく時期のこと。その主な原因は、コミュニケーション不足、感謝の欠如、そして距離感の拡大です」と美紀子氏。ちょっとした違和感や不満を持つことは、どんなカップルにもありますが、その時の距離の取り方が極めて重要で、近すぎても遠すぎても問題が生じます」と秀海氏は続ける。

特に、争いを避けるタイプや、内向的で「嫌」と言えないタイプは、倦怠期が深刻化しやすい。「傷つけたくない」と距離を取った結果、相手にはただ不機嫌に映り、理由が分からないまま溝が広がっていく。やがて、感謝の言葉が消え、挨拶もなくなり、すれ違いが始まると、倦怠期の入り口だ。

Close Up of Married Senior Couple Holding Hands in Church Wedding

「少しセンシティブな話になりますが、意外とよくあるのが妊娠・出産を経て女性が身なりに気を使わなくなったことや、太って体型が変わってしまったことなどをきっかけに、男性の気持ちが離れるケースです」と美紀子氏は実例を交える。

ただ、これらの問題の本質は外見ではなく、「自分に気を使っていない」「私に対する関心がなさそう」「もう愛されていないのでは」という感覚。異性として意識されなくなったという寂しさを感じていることがほとんどだとも。

倦怠期を乗り越えるための5+1の方法

二人に、倦怠期を迎えないために、あるいは乗り越えるために、意識すべきことを5つ挙げてもらった。そして、最後にもうひとつ付け加えたいことも。

1. 感謝の気持ちを言葉にする

conceptual image,romantic look hand holding heart made from wood with word THANK YOU over blurred and selective focus background

日常の「ありがとう」は、思っている以上に大きな力を持つ。秀海氏は「家事ひとつとっても、女性側は、相手が手伝ってくれない、これだけやってるのにケアがない、体のしんどさもわかっていない······と不満が募り、一方、男性側も、外で1日10時間以上働いて、家計の大半は自分が稼いで、子どもの送り迎えもしているのに……となりがちです」と指摘する。そんな時、家事や育児、仕事を頑張っていることに対して、互いに感謝の言葉をかけるだけで、承認欲求が満たされ、心の距離がぐっと縮まるのだ。

2. 相手の言葉に耳を傾ける

Couple with cups of aromatic coffee at wooden table, closeup

不満やネガティブな話も含め、相手の声に真摯に耳を傾ける時間を持つ。次から次へと、よくまあ不満が出てくるなと感じたとしても、何を伝えたいのか、その真意に触れることで、理解も深まり、お互いに「自分が大切にされている」という実感が生まれる。

3. 相手が何に愛情を感じるかを理解する

The sun will never set on our love

スキンシップ、言葉、プレゼント、時間の共有など、愛情の受け取り方は人それぞれ。スキンシップに重きを置く人もいれば、優しい言葉をかけてほしい人もいる。こんなに高価なブランド品をプレゼントしているのにと思っていても、相手は洗い物だけでも手伝ってほしいとストレスをためているなど。何に愛を感じるのかを互いに理解することが、すれ違いを防ぐ鍵となる。

4. 相手のために時間を使う

Senior man with his son drinking tea in kitchen, closeup

一緒に生活しているから、相手のために時間をかけなくていいは、危険な思い込み。例えば、週末のランチひとつでも、パートナーから全然アイデアが出てこないと不満が募り、パートナーはパートナーで、例えば自分がラーメンを提案したとしても、必ず嫌と言われるし……というパターンも。ところが、相手はこれが好きだろうなとか、体調を考えたらこれかなとか、時間をかけてリサーチした末のラーメンというプレゼンなら、きっとOK。たとえラーメンは却下されても、相手のために時間を使ったという事実が関係を好転させるのだ。

5. バイオリズムを意識し、良い波に乗る

The girl paints her heart in a red, small brush, dark background. Preparing for the day of all lovers, Valentine's Day.

同じことでも日によって、なんとなく嫌だったり、いいなと感じたり、人間にはバイオリズムの波がある。嫌なことがあって、その気持ちが残っていると、シャクだから急には優しくできなかったりする。ちょっといい波が来ても、まだ優しくはしたくない、というふうに意地を張ってしまう。「実はそのいい波がすごく重要で、乗っかって仲良くしたほうが断然いい」と美紀子氏は言う。タイミングを逃さず、素直に接することで、倦怠期のトンネルから抜け出すきっかけになることもあるのだ。

+1. 自分自身をケアし、認める

Notebook and nib pens, closeup view

最後にひとつ加えたいのが、上記5つのうちどれか1つでもできたら自分を褒めてあげること。自分の心のケアも重要だ。実際、倦怠期の時に、5つすべてをやれと言われてもなかなかハードル高い。だからこそ、どれか1つでもできたら、自分で自分を褒めることがとても大事」と秀海氏。自己肯定感が心の余裕を生み、二人の関係にも好影響をもたらすという。

セックスレスからの脱却術は?

Depression, anxiety and woman in bed thinking, sad and having mental health issue at home. Broken heart, stress and lady person in crisis, abuse or ptsd, insomnia or fear while mourning in bedroom

セックスレスには、「仲が悪くてレス」と「仲が良くてもレス」がある。どちらのケースも、無理なスキンシップは逆効果。心の距離があるときに触れられると、嫌という感情が強化されてしまう。

「スキンシップがわだかまりを溶かすことは、実はほとんどありません。倦怠感を感じているならまずは、スキンシップよりも、言葉による対話が大切です。互いの声に耳を傾けることで、心のつながりが生まれ、結果的にセックスレスの解消につながることもあります。何よりセックスレスに陥らないためには、セックスをセックス単体の問題として捉えないことが一番大きいですね」と美紀子氏。

実際に危機を乗り越えた2組のカップルの物語

Newlyweds joined hands in the shape of a heart. Sign of love and loyalty.

ケース1:結婚7年目、30代の夫婦

妻は一緒の時に本ばかり読む夫にイライラ。夫は常に責められていると感じていた。週末には妻をどこに連れて行こうか、休日の旅行はどこがいいかなど、いつも考えているのに「何も考えていない」と言われてカチンとくる。そのすれ違いの中、リビングで好きな本を読んでいたら、妻がやってきて、不穏な雰囲気を感じて、そそくさと寝室に逃げ込む日々。

夫は妻から強くセックスを求められている感じがしていた。ところが妻の想いは別のところにあった。セックスの翌朝に夫がいつもより優しく感じる、心の距離が近くなると感じて、その「近さ」が欲しかったのだ。気持ちを言葉にしたことで、夫は初めてその意図を理解した。もともと仲が良かったこともあり、妻の率直な言葉によって認識のズレが解消され、関係は穏やかに回復した。

Husband and wife join hands to cheer ,Relationship care concept ,comforting family members ,mutual encouragement ,tenderness ,comfort and sympathy ,helping ,giving hope and believing

ケース2:海外赴任から戻った定年間近の夫婦

トラブルの発端は夫の浮気だったが、夫は「その行為以前にすでに夫婦関係は破綻していた」と主張。自ら離婚を切り出したものの、妻はそれを拒み、かなりこじれていた。見かねた長女が、「結論がどうであれ、一度カウンセリングを受けてみては」と提案。夫に話を聞いてみると、優しくされていなかったし、自分には興味もなかったんじゃないかという。大切にしていた書籍のコレクションを単身赴任中に勝手に捨てられたこともあった。

一方で妻は、海外転勤を含む度重なる引っ越しを、子どもを抱えながら一人でこなしてきた。本当に大変で、書籍たちはやむなく処分したという。こうしたエピソードを一つ一つ紐解いていくと、自分のことが大嫌いで、幸せにしたくないから離婚しないのだと思い込んでいた夫が、妻の怒りの奥には実は「もっと愛されたい」「別れたくない」という気持ちが残っていることを理解した。その翌週、長女から「魔法のようです。いい方向に180度変わりました」というメールが届いたという。

それでも乗り越えられないときは「離婚」を選択肢に

Woman holding wedding ring at table indoors, closeup. Divorce concept

いくら努力を重ねても、ふたりにとって「一緒にいること」が正解ではない場合もある。そんなとき、離婚という選択肢が現実味を帯びてくる。美紀子氏は「できるだけ“幸せな離婚”へと導けるようアドバイスしています。正しい選択ができるように、女性にも経済力を持ってほしい」と語る。

また、結婚前に抱いた違和感は、結婚後に自然と消えることはないとも。むしろ、時を重ねるほどに輪郭を強めていく。「結婚すればどうにかなると思い込みがちですが、結婚しても本質は変わりません」と秀海氏。価値観も、セックスも、曖昧なままではだめ。ほんの少しでも違和感を覚えたなら、見て見ぬふりは禁物。結婚前こそ、未来の自分を守るために、自分の感覚に正直であるべきタイミングなのだ。

cube text law and judge

「カウンセリングは“魔法”ではありません」と二人は声を揃える。ただ本人でさえ気づいていない深層にある本心を丁寧に導き出し、それを言葉にして伝え合うことで、倦怠期を乗り越え、離婚の危機から再び手を取り合ったカップルも少なくないという。何より大切なのは、言葉で向き合うこと。人はそれぞれ異なる物差しを持っているからこそ、言葉にして伝えること、そして相手の言葉に耳を傾けることがすべて。ラブラブな時期こそ、相手の声に耳を澄ませ、深く理解する絶好のチャンス。

倦怠期のサインを見逃さず、初期のうちに向き合えれば── ふたりの未来の幸せは、きっと約束されるはずだ。

Profile

安東 秀海(Hidemi Ando)

心理カウンセラー養成スクールの講師を経て2015年に独立、夫婦関係を専門とするカウンセリングオフィス「LifeDesignLabo」を開設。機能不全に陥った夫婦の関係性を読み解き、健全なパートナーシップ構築へと導くことを得意とする。心理カウンセラーとして10年以上臨床に携わった経験から多彩なアプローチ手法を持ち、心理療法(セラピー)や心理ワークにも精通する。

安東美紀子(Mikiko Ando)

大手カウンセリング事務所にて所属カウンセラーとして活動後、夫と共に独立。浮気・不倫などの問題を越えての夫婦関係の構築や、セックスレス、モラルハラスメントなど、夫婦間のセンシティブなテーマに精通し、行動レベルでのアドバイスを得意とする。カウンセラーとして10年以上臨床に携わる。米国GALLUP社認定ストレングスコーチとしても活動。

https://life-design-labo.com/

Photos: 123RF Interview&Text: Yuka Kumano Editor: Mayumi Numao

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