長崎・諏訪町『ひとやすみ書店』 が届けるベターライフブックス。店主が20代のときに生き方を変えてくれたという本は、瀬尾まいこさんの小説『卵の緒』。

This Week Theme  20代のときに、私の生き方を変えた本。

Book of the Week  『卵の緒』瀬尾まいこ 著（新潮文庫）

大学を中退した僕は、これからどう生きるかという問いと真っ向から対峙していた。特に、何を仕事にして生きていくのかというのが問題の中核。答えを求めたのは本だった。実家に引きこもり、Yahoo!オークションで私物を売っては、そのわずかな売上で本を買い、読み漁る日々。とはいえ欲しい本を次々買うようなお金はなかった。時間だけはふんだんにあったから、大型書店で何時間も立ち読みをした。

その後、霧が晴れたように「本屋になる」という目標をつかんだ僕は、まずは修行だと勢い勇んで長崎を飛び出し、東京は神保町の書店でアルバイトをはじめた。

自己啓発書やビジネス書ばかりを読んでいた当時の僕に、小説『卵の緒』をすすめてくれたのは、書店まわり中の出版社の営業の女性だった。読んでみようと思ったのは、彼女が綺麗な人だったから。そんなものだ。本書との出会いは、僕の読書に潤いをもたらした。ほとんど縁のなかった小説の世界に僕を招きいれた一冊である。

BOOKSHOP ひとやすみ書店

店主の城下康明さんが幼い頃によく遊んでいた長崎県長崎市諏訪町でスタートした本屋。観光地として有名な眼鏡橋のすぐそばにあり、レトロな雰囲気が漂う川沿いの道に建つ。店の看板の黒板には毎日心に留まった本の一節を抜粋して板書し、メッセージを投げかけている。 住所：長崎県長崎市諏訪町5-3-301 営業時間：13:00〜18:00(土曜のみ16:00まで) 定休の詳細はInstagram（@hitoyasumi_bookstore）より確認を。