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今、カレがいるのは恥ずかしいことなのか? ソーシャルメディアで彼氏の存在が隠される理由

  • 2025.11.7
Hearts are trumps

ソーシャルメディア上で誰かが「私のカレが〜」と投稿した瞬間、即ミュートしてしまう。楽しくてフォローしていたのに、急にそのほとんどが“彼氏コンテンツ”に変わるのが本当に苦手だ。それは過去ずっと女性たちが、彼氏を中心とした世界でアイデンティティを築かされてきたからだと思う。逆に男性が女性中心の生活を送ることはほとんどない。女性は“いい男性を見つけてキープする”能力によって社会的地位や称賛を得てきた。それがソーシャルメディアという場では、エンゲージメントや、ときにお金稼ぎにも使われるようになったことでさらに息苦しくなっているのだと考えられる。しかし最近になって、オンライン上での恋愛関係の見せ方が顕著に変わってきていると感じる。異性愛の女性たちは堂々と彼氏を見せびらかすのではなく、ハンドルを握る手やディナーでグラスを合わせる瞬間、後ろ姿……といった、ささやかなサインを選んでいるようだ。さらに、結婚式の写真でもパートナーの顔がぼかされていたり、新郎がすべてのショットから都合よくカットされた動画が投稿されていたりするのも興味深い。女性たちはあたかも彼氏が存在しないかのように見せつつ、実際にはその存在を消さない絶妙なバランスで投稿しているのだ。

なぜ彼氏の存在を隠そうとするのだろうか。恥ずかしいだけ、もしくはもっと複雑な理由があるのかもしれない。私には、女性が2つの世界を手に入れようとしている結果に見える。つまり彼氏がいるという社会的メリットは得たいが、彼氏に夢中な痛い女には見られたくないということ。作家でアクティビストのゾーエ・サムジは「彼氏がいることへの賞賛と祝福は欲しいけれど、同時にその“普通っぽさ”も理解しているからだろう」と述べる。女性は“男性中心”の生活をしていると思われたくない一方で、恋人がいることで得られる影響力も欲しいのだ。もちろん全部がイメージ戦略というわけではないだろう。私のインスタグラムで6.5万人のフォロワーに意見を募ったところ、幸せそうな恋が他人の嫉妬を呼び関係が壊れるのではないか、別れた後に投稿が残るのが嫌だ、などの意見が見受けられた。「12年付き合ったけれど、カレを一度もソーシャルメディアに投稿しなかったし、今後もパートナーを投稿する気はない」「ロマンチストではあるけれど、この人が私のカレです! なんて宣言するのは考えただけでもダサい」と38歳のニッキ。

さらに、独身女性そして男性パートナーがいる女性の両方に共通していたのは、男性と付き合うこと自体がどこか後ろめたいという空気感だった。ニューヨークを拠点に活動するインフルエンサー2人組のポッドキャスト『Delusional Diaries』では、今彼氏がいるのはダサいことなのかを論じている。そこには「彼氏がいると共和党支持者っぽく見えるのはなぜ?」「ボーイフレンドは時代遅れだ。彼らがまともに行動できるようになるまでトレンドが戻ってくることはないだろう」といったコメントがあり、1万を超える「いいね!」がついていた。彼氏がいる女性でさえ、男性や異性愛を嘆いている。女性同士の連帯が強固な現代において、もはや「彼氏」は文化的にイケてないのだろうか。

私自身もそうだが、多くの人は“彼氏コンテンツ”にうんざりしている。作家で英国版『VOGUE』にも寄稿するステファニー・イエボアがソーシャルメディアで男性パートナーを紹介した際、彼女は何百人ものフォロワーを失った。「もし、今もその関係性が続いていたとしても、今後彼について投稿することはないでしょう。パートナーに関する投稿って今はなんだか痛々しいですし、どこかで罪悪感を感じている自分もいる。自慢にはしたくないんです」とイエボア。クリエイターのソフィー・ミルナーも、恋愛関係を投稿することでのフォロワー離れを経験した。「今年の夏、ある男性が私をシチリアに連れて行ってくれました。でもそのことを投稿すると『お願いだからカレをつくらないで!』というDMが来たんです」という。「シングルだと言いたいこともやりたいことも自由。もちろん全員ではないけど、恋人がいることでオンラインでは無難な存在になってしまいます」

確かに価値観は変化してきている。男性パートナーがいることで女性らしさを肯定されることは減ってきているように感じられるどころか、むしろ「シングルです」と堂々宣言するほうが魅力的に映ることさえある。異性愛以外のセクシュアリティが経験してきたように、“アイデンティティの政治化”が起こっているのだとも考えられる。伝統的な性役割が崩れつつある今、私たちは盲目的な異性愛信仰を問い直す段階に来ているのかもしれない。異性愛規範が見つめ直される限り、彼氏がいるという事実は議論を呼び続けるだろう。もちろんすべての恋に恥はない。ただ恋を探して失敗すること、そして探さないことにも恥はないはずだ。シングルライフを取り戻し、ロマンチックに再解釈する動きも広がっている。かつて「独身だと猫と暮らすことになるよ」と戒めのように言われてきたが、今ではその暮らしに憧れる人も多いだろう。女性を苦しめてきた異性愛規範に変化のときが訪れているようだ。

Text: Chanté Joseph Adaptation: Nanami Kobayashi

From: VOGUE.COM

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