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「服の色ばかり見てた」「気づいて叫んだ」“意味ある演出”が話題のヒット作、朝ドラ脚本で“再注目”のバカリズムドラマ

  • 2025.12.4

11月21日、2027年度前期のNHK連続テレビ小説の脚本をバカリズムが務めることが発表された。バカリズム脚本といえば、2025年1月期の日本テレビ系ドラマ『ホットスポット』が記憶に新しい。『ホットスポット』は、山梨県・富士山の麓の町にあるホテルで働くシングルマザーの遠藤清美(市川実日子)が、同僚の高橋(角田晃広)が実は宇宙人であると知ったことから物語が繰り広げられる地元系エイリアン・ヒューマンコメディだ。

バカリズム脚本の魅力!非日常の設定×日常的な会話がクセになる

バカリズムにとってNHKドラマは初めてのことだ。ネット上では、発表直後に「楽しみ」「嬉しい」など、早くも期待の声が集まっている。脚本家バカリズムは、『架空OL日記』で向田邦子賞、『ブラッシュアップライフ』で東京ドラマアウォード脚本賞や橋田賞、そして『ホットスポット』で放送文化基金賞脚本賞など、これまでに数々の賞を受賞している。

『架空OL日記』では男性(バカリズム自身)が女性を演じ、『ブラッシュアップライフ』では主人公が人生を何度も繰り返し、『ホットスポット』では宇宙人をはじめ、超能力者、未来人などが登場する。これらのバカリズム脚本は、非日常の設定×日常的な会話劇という絶妙なバランスが魅力だ。設定はSFでありながら、日常のゆるい感じが見やすくて心地良い。

2025年1月期の話題作『ホットスポット』は、その“バカリズムらしさ”が随所に発揮されたドラマだった。

同僚は宇宙人だった!宇宙人の細かすぎる設定がツボにハマる

山梨県の湖畔沿いにある『レイクホテル浅ノ湖』で働く遠藤清美(市川実日子)は、仕事からの帰宅中に交通事故に遭いかけたところを同僚の高橋孝介(角田晃広)に助けられる。空中で自転車ごと抱きかかえた高橋を不思議に思っていた清美は、後日、高橋から「実は俺、宇宙人なのね」と告白される。誰にも言わないと約束していたが、清美は我慢できず、幼馴染のはっち(鈴木杏)とみなぷー(平岩紙)につい話してしまう。

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角田晃広(C)SANKEI

まず、高橋のような、どこにでもいそうなごく普通のおじさんが“宇宙人”という設定が、逆にリアリティがあっておもしろい。背中が丸くて胸郭が微妙に下がっているのが宇宙人の特徴だという。高橋が持つ宇宙人の能力は、あくまで人間が元々持っている能力を引き上げるだけ。能力を使うと、鼻炎、発熱、関節痛などの副作用が現れる。回復方法は、『レイクホテル』の温泉に浸かることだ。さらに頭脳系の能力を使うと“ハゲる”というのだ。これまでになかった斬新な “宇宙人像”が、物語をより一層面白く引き立てた。

俳優でお笑い芸人でもある角田晃広(東京03)は、宇宙人・高橋がまさにハマり役だった。SNSでは「角田さんがいい味出してる」「角田さんの演技が最高」といったコメントが寄せられた。角田は『ホットスポット』で、第51回放送文化基金賞で演技賞を受賞。授賞式で「壮大なコントのノリでやらせていただきまして」とコメディアンならではのコメントを述べた。さらに東京ドラマアウォードで助演男優賞を受賞した。

バカリズム脚本ならではの会話劇が最高!服の色で見せた高橋と3人の距離感

『ホットスポット』のもうひとつの魅力は、清美、はっち、みなぷーの3人が織りなす軽快で極めて自然な会話劇だ。そこに中年男性で宇宙人の高橋が加わるとさらに面白みが増す。

さらに注目されたのが、服の色によって4人の距離感を表した演出だ。当初は、3人が同じ色味の服を着ているのに対して、高橋は全く違う色の服を着ている。しかし物語が進むにつれ、少しずつ色味が寄り、自然と“仲間”になっていく様子が描かれていた。このような細かな演出が、より一層視聴者を惹きつけている。SNSでも、「途中からずっと服の色ばかり見てた」「生い立ち話した回からみんなと同じ色調の服になった」「本当の友達になった演出気づいて時叫んだ」と、話題になっていた。

物語後半、高橋はすっかり3人の中に溶け込んでいる。第8話では、“これまで宇宙人という秘密を誰にも言わず孤独に生きてきた”と話す高橋に、清美は「今も孤独ですか?」と尋ねる。高橋は、彼女たちにカミングアウトし、一緒に行動するうちに“いつの間にか孤独を感じなくなっていた”ことに気が付く。これには視聴者から「温かい気持ちになった」「良かった」と感想が寄せられた。

最終回の放送後は「寂しい」「ついに終わってしまった」「すでにロス」などの声が相次いだ。放送が終わった今も、ロケ地となった『レイクホテル浅ノ湖』や喫茶店『もんぶらん』を聖地巡礼するファンが後を絶たない。